第29話 【初めてのダンジョン・1】

 一時間程、馬車に乗って移動した俺達は王都から一番近いダンジョンへと到着した。

 ダンジョンには【攻略済み】のダンジョンと【未攻略】のダンジョンの二種類あり、このダンジョンは前者の【攻略済み】のダンジョンだ。

 ゲーム時代からこの世界のダンジョンは固定マップではなく、ランダム生成型のマップだった。

 それはこの世界にも適用されていて、一定の周期でダンジョンの造りが変わる。

 だが作りが変わるが中に生息している魔物や採取物は変わらず、逆に冒険者達にとっては狩場として使用されている。


「ねえ、ジン君。今日はどこまで潜る予定なの?」


「フィーネさん達からは実力を計ってから下に潜ってくださいって言われてるし、最初は三層までで探索して、行けそうなら更に下に行こうと思ってる」


「りょ~かい。あんまり無理しないでって言われてるもんね」


「俺達の力ならこのダンジョンは攻略できるとは思うけどな、まあ忠告はちゃんと聞いておこうと思ってな」


 そう言って俺達は、初めてのダンジョンへと足を踏み入れた。

 ダンジョンの入口は兵士が配属されていて、冒険者カードを見せ中に入れて貰った。

 入口付近は洞窟っぽい感じだったが、少し奥へと行くと何故か〝太陽〟が現れた。


「えっ!? 洞窟の中に入ったのに、中に太陽があるよジン君!」


「これがダンジョンだ。ダンジョンは色んな作りがあるからな、これを楽しみに各地のダンジョンを巡る冒険者もいる位だから」


「そうなんだ。それなら私達も色んな所巡ってみようよ!」

 

「そうだな、もっと実力を付けたら色んな所を旅してもいいな」


 クロエの提案に対して、俺はそう言うと前方から数匹の魔物かが現れた。

 現れた魔物は三匹のゴブリン。

 二匹は普通に棍棒を持っていて、一匹だけ杖を持っていた。


「普通のゴブリンが二体とゴブリンメイジが一体か、ゴブリンメイジは魔法を使ってくるからな」


 そうクロエに言って、俺とクロエは戦闘態勢に入った。

 外の魔物とダンジョンの魔物の動き多少違うと、フィーネさんから聞いて来た俺達はまず相手の動きを観察する事にした。


「ギギッ!」


「「ギー!」」


 ゴブリンメイジが何か合図を出すと、残りの二匹が叫び声を上げて突撃して来た。

 そして後ろに居るゴブリンメイジは俺達に向かって、火の玉を放ってきた。

 ゴブリンメイジの魔法を俺は水属性の魔法で相殺して、更に突撃して来たゴブリン共を俺とクロエは一匹ずつ処理した。

 そして後方で驚いた顔をしていたゴブリンメイジへと、魔法を放ちダンジョンでの初の戦いは難無く終わった。


「まあ、弱かったな」


「そうだね。でもちょっと外の魔物より、頭を使ってる感じはしたかも?」


「それは俺も感じた。作戦っぽい感じの動きをしてたからな、ただ能力は外の魔物のが上に感じたな……一層だからなのかもしれないがな」


「下にいくにつれて強くなるって言ってたもんね」


「ああ、取り敢えず一層の魔物の強さを見極めて三層まで降りてみるか」


 その後、俺達は出会う魔物全て瞬殺して行き、たった数十分で目的の階層までたどり着いた。

 一層を大体五分程度で降りて来た俺達は、ダンジョンってこんなものなのか? と少し思い始めていた。

 フィーネさんからはある程度楽に行けるけど、二人だとキツイ場所もあると言われていた。

 だが実際に攻略して来た感想としては、少し聞いていた話とは違っていたなという感じだ。


「なんか少し気を張っちゃってたけど、そんな事無かったね……」


「まあ、ここからだとは思うぞ、フィーネさん達からも三層から出で来る数も多くなるって言ってたし」


 そう俺は言うが、既に三層で何回か戦って「う~ん……」と物足りなさを感じていた。


「クロエ、取り敢えず俺達の実力は三層以上ありそうだし下に降りて見るか?」


「うん! 私もそれが良いと思ってた所だよ」


 下に降りようと俺が言うと、待ってました! とクロエは耳をピンッと立ててそう言った。

 それから俺達は既に見つけていた下に降りる階段から、四層へと入った。

 四層からダンジョンの景色は変わり、森の様な雰囲気に変わった。

 数mある木が沢山生えていて、その木々の奥から魔物の気配を感じ取れた。

 俺とクロエは感知系スキルがある為、その魔物達の気配を感じ取りその場所へ魔法を放ち魔物を倒した。


「感知系スキルが無かったら、大変な事になってたね」


「まあ、そうだな。感知系は多少訓練しないと手に入れられないから、銅級冒険者でも四層からはきついって言ってた意味が分かったな」


 フィーネさん達から俺達は、森エリアは銅級冒険者でも苦戦する方が居ると聞いていた。

 しかし、俺達は二人共感知系のスキルを持っている。

 更に言えばクロエは、斥候系スキルは上位冒険者並みに持ってる為、俺達は苦戦をする事無く先に進んで行った。


「うん、でもこの程度なら私達ならどうって事無さそうだね」


 その後、俺達は森エリアが終わる七層まで難無く進んで行った。

 そして八層目は再び風景が変わり、今度は普通の洞窟っぽい感じになった。

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