第20話 【銅級冒険者の二人・1】
無事、ランクが〝銅級〟に上がった俺とクロエは、いつもの店で昇格祝いをする事にした。
昇格祝いだと店の人に伝えると、いつも使ってるからとメニューには無い豪勢な食事を用意てもらった。
「祝いの席に私も来て良かったのかしら?」
祝いの席には、今回の対戦相手であるアンジュさんを招いた。
更にフィーネさんとリコラさん、そしてアンジュさんのパートナーのレイナさんを呼んで合計6人で食事をしている。
「はい、アンジュさんには俺達の動きについて色々と聞きたいと思っていたので」
「成程ね。ほんと、つくづくあなたは普通の冒険者とは違う動きをするわね」
クスッと笑みを浮かべるアンジュさんに、俺は「まだ新米冒険者ですから先輩に色々聞きたいんですよ」と返した。
「新米冒険者?」
「はい、クロエは冒険者になってから半年経ってますけど、俺はまだ一ヵ月も経って居ませんから」
「えっ!? それ本当なの?」
アンジュさんは驚いた顔で、この場に居るギルド職員の三人の方へと顔を向けた。
そして俺の担当であるフィーネさんが、アンジュさんの疑問に言葉を返した。
「本当ですよ。アンジュさん、ジンさんはまだ登録して一月、詳しく言いますと20日程しか経っていません」
「……嘘でしょ? それが本当だったとしたら、歴代冒険者の中でも物凄く早い昇格速度じゃないの?」
「はい、ですのでギルドではジンさんの情報は極秘にしています。万が一これが知れ渡りでもしたら、ジンさんの冒険者生活は色々と面倒事が起きますから」
銀や金級になれたら、ある程度の面倒事は避けられるとは思うが今はまだ銅級。
今、俺の噂が外にでももれたら、まあ俺は大変な目に合うだろう。
「そう言う事だったのね……だから、レイネが私に話を持ってきたのね」
「はい、アンジュさんだったら口は堅いですからね。まあ、そもそも話す相手がいませんから」
「最後の言葉は要らないでしょ……」
レイネさんの言葉に、アンジュさんは恥ずかしそうに顔を赤く染めた。
「わ、私の事よりジン君の事よ。ねえ、何でそんな力持ってるのに今まで冒険者にならなかったの?」
「あ~、まあアンジュさんなら話ても良いですかね? 実は俺、元々は貴族なんですよ」
そう俺は話しだし、冒険者になる経緯を説明した。
「……色々とあったのね。ごめんなさい、嫌な事を思いださせちゃって」
「まあ、今は楽しく生活してるので昔の事は気にしてませんから」
昔の事を話すことになってしまった事について、アンジュさんが謝罪したので俺はそう言って食事をしようと促した。
その食事中に俺とクロエは、アンジュさんから試験での動きについて色々と聞いた。
「ジン君は剣術だけしか使えない訳じゃないけど、まだ戦闘中に魔法と両立は出来ていないわね。今から魔法使いますって戦ってる私は直ぐに分かったわ」
「……確かに今まで剣を使いながら魔法は使った事無くて、あの場で出来るだろうと思ってやりましたがやっぱり感づかれていたんですね」
「ええ、あの動作をもっとうまく出来るようになったら今後凄く伸びると思うわよ」
そう俺はアンジュさんから言われた。
そしてクロエは、自分の身体能力をもう少し知らないといけないと言われていた。
「獣人族の身体能力は、他の種族に比べて段違いでレベルが違うのは知ってるでしょうけど、クロエちゃんは種族固有の身体能力とは別の、特別な才能があると私は思ってる」
「特別な才能?」
「ええ、それは貴女の眼よ。クロエちゃんは斥候スキルを多く持ってると言っていたわよね? それも才能の一つだと思うけど、その才能が輝いてるのは貴女の持ってるその眼のおかげだと私は思ってるわ」
アンジュさんはクロエの〝眼〟は特別だと、クロエにそう言った。
その話を隣で聞いていた俺は、アンジュさんの観察眼も素晴らしいと思っていた。
実際にゲームでのクロエは、眼が特別に良いと言う設定があった。
夜間でもその眼は遠くのものを見つける事が出来、相手の動作も一瞬で見抜くなど書かれていた。
「これからの冒険者生活、その眼を鍛える事でより役立つと思うから頑張るのよ」
「は、はい! ありがとうございます!」
クロエはアンジュさんのアドバイスを聞くと、そう大きな声でお礼を言った。
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