第21話 【銅級冒険者の二人・2】

 お礼を言われたアンジュさんは何処となく嬉しそうに笑みを浮かべ、俺とクロエを交互に見た。


「まあ、でもそうね……ジン君とクロエちゃんは、互いに持ってない武器を補い合ってるみたいだし、良いパーティーね」


「「ありがとうございます」」


 褒められた俺達はそうアンジュさんにお礼を言い、食事を終え店の前でアンジュさんと別れた。

 そして別れた後、俺達は再びギルドへと戻って来て更新されたギルドカードを受け取った。


「遂にっていう程、時間は経ってないけど銅級冒険者か……」


 受け取ったギルドカードを見て、俺はそう言うと目の前に座るフィーネさんが笑みを浮かべた。


「ジンさんはこれで、歴代の更新速度を大幅に塗り替えた記録保持者ですね」


「そうなりますね。狙ってやったつもりは全く無いんですけどね」


「ええ、一応ジンさんの事は極秘扱いにしておりますが。ギルドで情報共有はされていますので」


 他の冒険者ギルドにまで一人の冒険者の情報は伏せるのは無理だし、そこに関しては前から聞いていた。

 だからフィーネさんの言葉に、俺は「理解しています」と返事をした。


「流石にギルドにも情報を伏せるのは無理ですからね。それは最初から理解しています。逆に俺の情報がギルドに回る事で、もし他のギルドで絡まれても多少は面倒見て貰えそうですし」


「そうですね。それに、うちのギルドマスターは他のギルドに貸しをいくつも作っているので、そのギルドマスターのお気に入りの冒険者とも情報が回ってるので大事にならない限りは他のギルドでもよくしてもらえると思います」


「……アスカさんに気に入られてる事は、別に伏せて貰ってた方が良かったですけどね」


「無理ですね。本人が触れ回ってましたから」


 フィーネさんからそう言われた俺は、溜息を吐きながらそう言った。


「あの人、もう一度きつく叱ってくれませんか? 偶に外で俺に声を掛けようとして来るんですよ? こっちはあまり注目されないように動いてるのに」


「裏で言ってはいるんですけどね……分かりました。そろそろジンさんの扱いについて、アスカには体に覚えてもらう必要がありそうです」


 フフッと怖い顔で笑うフィーネさんに俺は、頭を下げ「お願いします」と言った。

 その後、これからについてはまた後日クロエと共に話し合いすると決めているので、今日は宿に帰宅する事にした。


「んっ? 今日はやけに早くに出たと思ったら、もう帰って来たのか?」


 宿に帰宅すると、店の奥で作業していたリカルドさんが出て来てそう言って来た。


「ええ、ちょっとした用事で出掛けていただけですからね」


「そうか……なあ、もうこの後は用事は無いのか?」


「一応、無いですけど」


 リカルドさんの言葉にそう返すと、以前と同じ肉を取って来て欲しいというお願いをされた。


「あれ、最近は肉の仕入れも悪くないって言ってませんでしたか?」


「……これを言うと肉屋に怒られそうなんだがよ。ジンに仕入れて貰った肉の方が新鮮で美味く調理が出来るんだよな」


「あ~、まあ俺の場合は肉を傷つけないようにサッと殺して収納してますからね。鮮度に関しては、店よりもいい気はしますね」


「ああ、それで偶に俺の所に食べに来る奴から「この間のが美味しかったけど?」って言われてな……」


 リカルドさんにそう言われた俺は、明日は別に早くに行く訳でも無いし世話になってるからその依頼を受ける事にした。

 まあ、別に今更こんな依頼を受けなくても金銭的には余裕はある。

 だがリカルドさんには世話になってるし、なんなら最近は以前よりも絡む機会も多いからある程度の頼みは聞こうと俺自身思い動く事にした。


「ブッ——」


「まっ、こんなもんで良いかな?」


 依頼分より少し多めに魔物を狩った俺は【異空間ボックス】の中を確認して、王都に戻り宿に帰還した。


「一時間で戻って来るって、お前本当にどういう戦い方をしてるんだよ……」


「弱い魔物ですから、パパッと魔法で」


「弱いって言ってもお前な、オークは下位の冒険者なら数人でようやく倒せるような魔物なんだぞ……」


 リカルドさんに呆れられながら俺は倉庫に肉を入れ、報酬を受けとった。

 受け渡しが終わった後、夕食まで時間があるから何しようか考えていたのだが。

 朝早くに試験を受けたせいか、自然とベッドに横になった俺はそのまま眠ってしまい、気づけば夕方になっていた。

 食後、満腹になった俺は眠気に襲われつつもシャワーを済ませ、自室に入った瞬間、ベッドに横になり再び眠りについた。

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