第5話

 エファから見たジークはいつも大人で、でもちょっとやんちゃなところもある、でもとても頼りになり、何より自分を愛してくれる夫だ。


 でもジークにしてみたら、どうなのだろう。

王妃である姉に託されて、断れなかったのかもしれない。


 王都に行けばエファは罪人だ。

 大公という王族に次ぐほどの大貴族の彼が、そんな妻を伴い王都に行くことは、大公の威信にもかかわるのではないだろうか。


「そんなに日に当たってらっしゃると、日焼けしてしまいますよ」

 外はまだ寒いので、バルコニー前の扉の前でエファがもくもく考え込んでいたら、後ろからリーゼに声をかけられた。


 このお城に来てからずっと傍にいてくれるリーゼは、エファよりだいぶ年上の24歳、 癖のある茶色の髪を一つにくくり、ちょっとそばかすのあるかわいい女性だ。いつの間にか傍仕えというよりは、エファのお姉さんのような存在になっていた。


「奥さまのお肌は白くてきれいでいらっしゃるから、日焼けしたらもったいないですよ?」

 リーゼがにこにこ笑いながら、テーブルにお茶のセットを用意する。


 いつものように並べられた焼き菓子は料理長のヨルクのお手製だ。エファの食が細いのを気遣って、いつも工夫を凝らして美味しいお菓子を作ってくれる。


 リーゼが香りのよい紅茶を入れ、その後エファが勧めるまま向かいの席に座った。

 お茶のお相手はもっぱらリーゼのお仕事だ。彼女は特権だと喜んでいるが。


「うれしい。このアーモンドのお菓子とっても好きです」

「じゃあ奥さま、こちらの分もお召し上がりくださいませ。ヨルクが喜びますわ」


 リーゼの勧めにエファは慌てた。さすがに二人分は。

 気持ちだけありがたく受け取っておく。


「リーゼ、わたし、今度旦那さまと王都に行くかもしれないです」

 エファが不安な気持ちを吐露すると、リーゼは「伺っておりますよ」と言う。


 リーゼの兄も夫も竜騎士の一人で、兄は王都への旅に同行する予定だという。

 アスツヴァイクが誇る竜騎士と言っても、総数は50騎ほどしかいない。そのうちの10騎程が王宮へと向かうとのことだ。


「わたしも昔、王都に行ったことがあります。竜の背に揺られて何日も飛んで、とても疲れます。でもとっても景色がきれいなんですよ」

「……景色?」


「アスツヴァイクはこの通り、岩しかない土地ですけど。地平線いっぱいに広がる森や、小麦畑の中にある村はそれはそれはきれいで!」

思い出しながらうっとり話すリーゼを見ると、エファはぐんと興味がわいてきた。


「そんなにすてきなんだ……」


「そもそも空を飛べるもので騎乗出来るのは、この土地の飛竜だけですからね。どんなに高貴な方でもそう簡単に見れる景色じゃありません。そう思うと、なんだか誇らしくて。奥さまにもぜひ見ていただきたいです」


「見たいけど、やっぱり少し怖いかな」


「もし王都に行かれるなら、絶対大丈夫だと思いますよ。ジーク様の竜は賢い子ですし、何よりあの殿が空の上でエファ様を離すことなんてぜっっったいありませんから」

 妙に力を込めて言うので、ついつい笑ってしまう。


 エファにも本当は分かっていた。怖いのは空を飛ぶことじゃない。


「それともし奥さまが行かれるなら、私もついていきます。殿はみょーに気の利かないところがありますから。奥さまは私がお守りします」


 リーゼはこの城で育ったということで、とてもジークと気安い。本人の前でも揶揄うように殿と呼ぶので、最初エファは驚いたが、今はだいぶ慣れた。


「ほんとう? とっても心強いです」

 エファがあまりに目を輝かせて言うので、リーゼはそれがうれしくて、

「もちろん! 本当にもろもろお任せください!

リーゼは奥さまのお願いなら、出来ることなら何でもやっちゃいますから!」

と、つい胸を張ってしてしまった。


 一方のエファは、

「じゃあリーゼにお願いがあります!」と身を乗り出す。

「わたしのことを、名前で呼んでくださいませんか!」


 きょとんとした顔のリーゼが一瞬固まり、そのあと顔を真っ赤にして、テーブルに身を乗り出し、エファの手を握った。

「もちろんです! じゃエファ様ってお呼びしますね! 本当にいいのですね!?」

「はい、嬉しいです。宜しくお願いします!」

 とても誇らしげなリーゼを見ると、ますます距離が縮まったようで、エファもとてもうれしい。


「でも本当によかったです。殿にエファ様のような素敵な奥様がいらして」

 リーゼの入れてくれる紅茶の芳しい香りが部屋に満ちている。

 何か言いたげなリーゼの様子に、エファは首をかげて続きを待った。


「殿は、お父様もお母様も早くに亡くなられました。お姉さまも王家に嫁がれ、ずっと一人でしたから」


 一時期、王都の学院に通っていた時期もあるらしいのだが、聞けば12歳の時から領主として、家族が誰もいないこの城で暮らしていたという。


「召使や、わたしたちのような幼馴染は傍に居りましたけど、家族とはまた違いますから。

 その上縁談もなかなか纏まらなくて。まあこれは、私たちのせいもあるんですけど。

 ……エファ様のお話を聞いたときは、城のみんなが喜びました」


 確かに。

 王都の貴族は殆どが20代の半ばごろまでには結婚しているか、もしくは婚約者がいる。大貴族で、ここまで独身だったジークには何か事情があったのだろうか。


 もしかして……と一瞬嫌な想像をしてしまい、エファは固まる。

「えっと、縁談って……どなたかいい方がいらしたのですか?」

「いるわけないです。あの殿に」

 恐る恐る聞くと、リーゼは真顔で否定した。しかもなんかひどい。


「釣書の行ったり来たりはあったようですが、本当に浮いた話の一つもなく」

 それはよかった。良くなかったけど良かった。

 青ざめたりほっとするエファを見て、リーゼがくすりと笑う。


 ということは、ジークにとってエファはようやく手にした家族なのだ。

 エファもずっと家族を欲していた気がする。


 ジークが自分をとても大切にしているのも、エファが彼を頼りにして甘えてしまうのも、同じ理由からなのではないだろうか。


「わたしたち、きっと似た者同士なのかもしれません」

 零れた呟きに、それはようございましたねとリーゼが笑顔で答えた。




 結局さんざん悩んだ後、エファは王都行きの旅に同行することにした。

 不安なことはたくさんあるが、王都にいるクリスティーネたちにも会いたい。同行してくれるリーゼの存在も心強い。


 旅立ちの朝、城塞横の丘に11匹の飛竜が並ぶ姿は荘厳でエファは思わず息をのむ。

 ジークが相棒と宣言する、ひときわ大きな黒竜レヴィンの姿は素晴らしかった。黒光りする鱗が朝日を受けてきらきら光る。


「俺もレヴィンと飛ぶのは久々だがな。まあ落ちることはないと思うので、安心してくれ」


 この半年ほど、レヴィンは繁殖のため山に帰っていたという。竜の生態は謎が多く、分かっていることも少ないが、騎士たちの騎乗する竜たちも時々山に帰るらしい。


 自分の飛竜を持たず、空いている竜がいないときは騎士もその山に行き、気が合う竜を連れて帰るのだとか。ジークもそうしてこの黒竜と出会ったそうだ。

 それを最初に聞いたときは、気が合うって何だろうと疑問に思ったのだが、こうしてレヴィンに向かいあうとその意味がよくわかる。


 エファが近づくと大きな顔を寄せてくれたので、エファはそっとその顎に触れる。知性のある黒く美しい瞳がしっかりエファを見つめていた。


「二人乗りは大変だと思いますが、どうぞよろしくお願いします」

 エファの挨拶に、レヴィンはそっと目を細めて答えた。


 城塞に残る騎士団長に最後の引継ぎをして、竜が空に昇る。


 登ったばかりの朝日に目を細めながら、エファは鞍の取っ手をしっかり握る。背後にはジークもいるし、安全帯もついているがそれでも緊張した。

 後ろを見ると、竜騎士の10騎も隊列を組んで上昇している。


 エファのほかに文官らしい男性が2人相乗りしているが、更に後方にいるリーゼは騎士隊の制服に身を包み、一人青竜の背にまたがっていた。

 他の隊員たちに負けず劣らずのりりしい姿に、思わず見惚れる。


「では行くぞ」


「はいっ」


 ジークの号令が響く。初めての飛行に緊張と期待を織り交ぜて、エファはいつもの数倍元気な声で返事をした。




そこから先の竜の旅は、エファにとってとても楽しいものだった。

とにかく何もかもが新鮮で、目に映るすべてが輝いて見える。


アスツヴァイクの向こう側の山脈――名前は黒峰山脈というそれが、どんどん遠ざかり、地面がなだらかになっていく。

下には真っ黒な森がどこまでも広がり、木々の上に落ちた飛竜の影が流れるように移動するのがとても面白かった。


 森が終わるとしばらく草原が続いた後、今度は見渡す限りの緑の大地が広がる。

 緑の合間には規則的に道が配置されており、さらに小さな村のようなものも所々にある。時折姿を見せる川はまっすぐで、これも人工的なもののような気がした。


 エファは読んだ本で、黒峰山脈から流れる大河が東のほうに存在し、その流域では麦等の作物の栽培が盛んだと学んだのを思い出す。ここがそうなのだろうか。


「ここいらはこの国一番の穀倉地帯だ」

 エファの視線に気が付いたのか、ジークが真上から説明してくれる。


「ここより東にある大河の向こう側は王家直轄地、ここは北の侯爵領だな。これから収穫に向けて、いよいよ忙しくなるころだろう。 北の公爵地はわが国で一番人口が多い」


「……これだけの畑であれば、いっぱい人手が必要ですよね」

「そうだな。殆どが小作人らしいが、まあそれにしても相当なものだろう。

 それにしても、今年の王領と北の公爵…サンダー公の小麦は生育が良いそうだ。それに対してドレヴァンツ公爵地はいまいちだとか」


 突然知った名前が出て、エファは首を傾げた。


「まあ俺達には関係のない話だがな」


 一瞬頭をかすめた小さな考えがあったが、エファはそれについて深くは考えないことにした。


 そのかわり、はるか東のほうに目を凝らす。

 かすんで見えないが、大きな河が流れているはずだ。

 その大河に乗って荷物は下流の街に運ばれる。大河のそばにはそんな船が留まれる港のような街がいくつもあるらしい。

 小さな川しか知らないエファには、想像すらできないが。


 そしてその大河は海に行きつくという。


 もちろんエファは海も知らない。思い切って頭上のジークに問う。

「ジークさま、海はどこにありますか?」


「海ははるか南だ。河の先には隣国カムリーバ、あともう一つ国があって、そこから先が海だ」


 はるか南、海から見たら、ここははるか北なのだろうか……と思うと不思議な気持ちだ。

 海のある地方にも誰かが住んでいて、例えばエファが海を思うように、黒峰山脈の事を考えたりするのだろうか。


「海までは行けないかもしれないが、今度いつかエファと旅に行くのもいいな」

「旅、ですか?」

「南の地方もいい。あっちに飛竜はいないのでレヴィンと一緒に行ったら驚かれるかもしれないが。エファはどこに行きたい」


「いきたいところ……」


 今まで海のことや、穀倉地帯のことは知っていたけど、知っていただけ。自分で行きたいなどと思ったこともなかった。


 エファの人生で、自分の望んだ場所に行くことはもちろん、好きな場所にとどまり続けることも、一度だって望み通りにできたことはない。

 今回の旅もジークがいなければ、きっと無かっただろう。


 そう思うと、鞍を握る手に力がこもる。


「ない、です」

 思いがけず声がかすれたのは、一つの可能性に気が付いたから。


 もしかしたら、今度はジーク様の元も離れることになるかもしれない。それが今までのエファの人生の『普通』だったから。

 沈んでしまった声に、ジークはどう思っただろうか。

 何か言わなきゃ、と思うのに考えがまとまらない。そんなエファをジークは背後から抱きしめた。

「じゃあ考えていてくれ。出来るだけ望みをかなえるよう努力しよう」

 ジークの明るい声が、エファにはなんだかとても無理をしているように聞こえた。



 三日目の逗留地は大きな商業都市だった。

 一部の隊員たちが竜のまもりに残り、エファたちは都市内の宿に泊まる。さすが大公一行、宿も目が眩むほど豪華だ。

 

 あてがわれた部屋の大きな鏡台の前に座り、リーゼに髪を解いてもらいながら、エファは大きく息を吐いた。


「昨日は野宿でしたものね。今日はお風呂に入れますよ」

 慌てて首を振った。

「だいじょうぶ、初めての野宿ってびっくりしたけど、とても楽しかったです」

 ちょっと体のあちこちが痛いけど。


「竜の背に馴れているものでも疲れる旅です。明日は殿が用事があるようで、出立は午後からですし、明後日には王都につきます。もう少しの辛抱ですよ」

 エファは頷く。


「……リーゼ、飛竜に乗るのは難しいの?」


「そうですね。気性のおとなしい子なら、誰でも乗せてくれます。レヴィンのような荒っぽい竜だとなかなか難しいですけど」


 どうやらレヴィンはジーク以外を乗せないという。

 あの澄み切ったきれいな目からは、荒っぽいとは想像もつかないが。


「わたしの竜はイルムガントという子で、元々殿のお母様が乗っていらした竜です。誰でも乗せてくれるとてもいい子ですよ」


「ジークさまのお母様も竜騎士でいらしたの?」


 リーゼの姿を見て驚いたが、そもそもアスツヴァイクには女性の騎士がいるらしい。王都には騎士はもちろん、兵士ですら女性の姿はなかったが。


「ええ、今いる騎士で女はわたしを含めて3人です」


 それはすごい、とてもかっこいい。


「わたしも乗りたいな」

「エファ様にはぜひ乗っていただきたいですけど、まず体力をつけないと駄目です。竜にしがみつくだけでも、結構疲れますから」


 それは確かに。

 ここ数日ですっかり痛くなってしまった両手を残念な気持ちでエファは見た。


「うう、頑張ります……」



 疲れ切って気絶するように暖かいベッドの中に沈みこんだエファは、その夜夢を見た。



 夢の中には幼いジークがいた。深い森の中、薄暗い木々の影に立つその姿に、エファは息をのむ。

 大公の証の藍色のマントを纏っているので、就任した直後だろうか。


 なんて、愛らしい。

 今ほどの精悍さはないが宵闇色の髪、柔らかそうな頬、すらりと伸びた手足。

 そして全身に宿る生気のようなものがある。


 なのにその瞳は。

 澄んだ蒼い瞳は悲しそうに潤み、涙の筋がいくつも頬を伝っていた。


 それがどうしようもなくエファの心を締め付ける。


 どうしてたった一人、こんなところにいるのだろうか。

 傍に行って彼を抱きしめたい。

 その涙を拭いてあげたい。

 これほど愛されるべき子供が、今は絶望している。それが体を裂かれるほど哀しい。


 そう思うのに、エファはその場から動けない。ここを護るので精一杯だから。


 たった一人の少年の、涙を拭くこともできないなんて。

 絶望にも似た昏い気持ちがエファの中に浮かぶ。


 銀の。

 音のない声に呼ばれた。


 ふと隣を見ると、よく知った懐かしい気配がある。

 懐かしいというのも何か違う。エファたちには時や個の隔たりはない。ただそこに在り、そして在り続ける。なのでそれは霞の中に漂う自分そのもののよう。


 わたしが行こう。


 その気配は声もなくそう告げ、下草を踏む音もなくエファの横から動き出す。黒い光が瞬いて、その後に残った。


 その漆黒の背を見つめ、エファは彼へ感謝しながらも、この心の中にあるものをどう処理していいかわからずにいる。


 わたしはなんて無力なのだろう。

 わたしはどうして何もできないのだろう。

 課された使命はここの守護。それなのに、必死に両手で覆っても、指の間を零れていくものがある。そのこぼれた者たちが、どれだけ彼らを苦しめているかも分かっている。

 なのに何もできないまま。


 もっと力があれば。

 もっと何かできることがあれば。


 いや、何もできなくてもいい。ただひと時、あの少年の涙を止めることさえできたら。

 この激しい望みが、渇望が、どれだけ身勝手なのか、分かっている。でもこの北の地の祝福を受けた子が、笑顔で居られるように……。




 目を開けると、目の前に熟睡したジークの顔があった。


 ちょっとの身動きでも彼は起きてしまうので、エファはできるだけ慎重にベッドから降りる。ジークもここの数日の移動で疲れているはずだ。起こしたくはなかった。


「……変な夢、みたな」


 ぼんやりとつぶやきながら、窓の外を眺める。

 知らない街だが、エレオノーラの生まれた都市というだけで、なんだか居心地がいい気がする。


 夢を思い出そうと思うが、頭がぼんやり霧に包まれているようで纏まらない。


 東の空が赤く染まっている。

 この朝の時間がエファは一番好きだ。


 そしてガラス越しに眠るジークを見る。

 大切にしてくれる、愛してくれる人。


 でもジークのこれまでをエファは知らない。

「……でも、わたしことを好きでいてくれている」

 その気持ちにこたえたい。


 エファは上手に自分の考えを伝えることも、気持ちを吐露することも出来ないけれど。ジークは今や、ずっと一緒に居たい大切な人だ。


 この旅の間に、ジークにその気持ちを伝えたい。

 何か方法はないものか、と悩みガラスの窓に手を当てる。


 どこかで鳥のさえずりが聞こえる。街が目覚めだし、人々が動き出す頃だ。でもまだ、エファが起きるのには早い。

 エファは大人しくベッドに戻り、変わらず寝息をたてるジークの懐にもぐりこんだ。



「じゃあ贈り物! 何かプレゼントしましょう殿に!」

 エファの相談に乗ってくれたリーゼが楽しそうに提案する。


「おくりもの、いいかもしれません!」

 エファも以前、クリスティーネから貰った時とても嬉しかった。


「殿は武人ですからね、何がいいのかさっぱりわからないですが、幸いここは商業都市です。貴族向けのお店もありますし」

 なによりお買い物に行けます! とリーゼはやけに嬉しそうだ。


「でも勝手に出かけたら怒られないかしら」

 ジークは先ほど、所用のため出かけたところだ。


「騎士の三人でも連れていけば大丈夫です。多少の無法者なら吹っ飛ばしてやれます」

リーゼは相変わらず元気だ。


「もちろん公邸でお仕事中の殿にも知らせときますから、安心して下さい。きっと自分も行きたいって悔しがりますよー」


 にやにやと嬉しそうに立ち上がり、仲間の騎士たちに指示に行くリーゼの後姿を見ながら、エファはちょっとだけ不安になる。

「ジークさまに喜んで頂きたかったのに、よけいにがっかりされちゃうかも……」



 その日の午後、やはりちょっと不機嫌のジークに背を預けながら、エファは上手ににフォローできないまま空を飛ぶ。

 次は俺と買い物に行くんだぞ、という子供みたいな声が聞こえ、それがなんだか妙にくすぐったく嬉しかった。


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