229.圧倒的な力
「我が娘の仇、今こそ!!」
「黒い剣士、いや女王ヴィネ、覚悟!!」
「ははっ!!」
最初に飛び込んだのは俺と爺さん。
当然だろうここで俺達が行かないで誰が行くというのか?
最速の動きで左右に展開し、狙いを分ける。
「チェストぉ!!」
「くらえ!!」
爺さんは型を使った鋭い三連撃、俺は片手で首を狙いつつ無詠唱のアイシクルダガーでヴィネの足元を攻撃。
「ほう、速いな!」
「強がりを!」
足にアイシクルダガーが刺さり俺と爺さんの剣がヴィネを捉える。この段階まで動きは無しだが、不敵な笑みを浮かべている。
もらったと思った瞬間、俺は嫌な気配を感じてマチェットで防御。
「アル!?」
「ぐ……なん、だ? 爺ちゃん……!」
「チィ!」
気づけば俺は3メートルほど吹き飛ばされ床に転がり、爺さんの攻撃も打ち合いになり壁に吹き飛ばされていた。
だが、そこは爺さん、空中で態勢を変えて壁にを蹴って着地を決める。
「父さん!」
「貴様を倒せばアルはなににも縛られずに生きられる。あいつの恨みは俺達のものでもある!! ヴァイクラッシュ!』
「くははっ!! 面白いことを言う! 人間は誰しもなにかに縛られているものだろう!」
父さんの両手もちから繰り出される剣技は大岩すら砕く一撃。
しかし、それを片手で受け止めて笑うヴィネに俺は驚愕する。
「片手だけで……!? う、動かん!」
「まだまだ本気ではないだろう? 私の命に届かせるには足りんぞ」
「まずい……!?」
「父さんを持ち上げるのかよ!?」
大剣を掴んだまま父さんを持ち上げ、虹色の剣を突き刺す態勢を取り、慌てて魔法を撃ちだす。それと同時にギルディーラも側面に回り込んで頭を狙う。
『させると思うか?』
「ふっ!」
「なんだ、ファイヤーボールが消えた……!?」
「荷物は捨てなければな!」
「チィィ!?」
無造作に投げ捨てられた父さんが床を転がる中、ギルディーラの一撃をヴィネが受け止め、打ち合いが始まる。
お互い急所を素早く狙い、その一瞬の攻防により剣が火花を散らす。あの虹色の剣が欠けないのも凄いが、ギルディーラとの体格差があるにも関わらず当たり負けをしてないのが敵ながら凄い。
「ハァァァァ!」
『なんという気迫……! 俺が押し切れんとはな』
「背後からなら!!」
「『ブック・オブ・アカシック』の子よ、甘いぞ!」
「それはどうかな?」
「む!?」
ギルディーラすら押し返す相手だ、打ち合いをするのは不利。
ならばと、背後から迫った俺に蹴りを繰り出してきたヴィネに俺はライティングを顔前に叩きつけ、そのまま脳天へマチェットを振り下ろす。
「くらえ!」
「いい攻撃だ、だが私をこの程度で捕まえたと思わんことだ」
「マジか……!? 見えていないはずだろ! ギルディーラ!」
『分かっている!』
目を瞑ったまま俺のマチェットを虹色の剣で受け止め驚愕するが、すぐにギルディーラへ追撃をお願いし、こいつが振り向いて攻撃できないよう鍔迫り合いを継続する。
「フッ」
「え!?」
『なんと!?』
ヴィネは剣をあっさり手放して床を蹴り右へ移動。
俺は急に抵抗が無くなったため前のめりにたたらを踏み、ギルディーラの剣が目の前に飛んできた。
咄嗟にガードして吹き飛ばされる中、視界の端でギルディーラがヴィネに蹴りを入れられ後ずさる姿が見えた。
目は……まだ閉じている。そのことも凄いのだが、ギルディーラを蹴り一発で下がらせる威力に冷や汗が噴き出す。
四人がかりで攻撃したのに涼しい顔をしているヴィネは、目をまたたかせ、剣を拾いながら口を開いた。
「ふむ、さすがは『魔神』だな。ただの人間なら今ので再起不能だったのだが。将軍、騎士団長、魔神に本の継承者。中々の強さだが、この程度か?」
「まだこれからよ。あたし達もいるしね」
「そうだー!」
『よせ、この女……『英雄』クラスの強さだ。子供たちを連れてこの場を離れた方がいい』
ギルディーラが睨むようにヴィネを視界から外さずそう言い放つ。俺はともかく、確かに爺さんとギルディーラ、そして父さんを相手に軽くあしらえるのはそのレベルの相手しかいない。
だけど『英雄』ならギルディーラはそれに相当する力がある。タイマンなら負けはしないと思うのだが――
「そうだな、君たちの強さはせいぜい90後半といったところだろう。魔神は150といったところか?」
『……はかったことは無いがな』
「ワシはそのくらいだろうな。では貴様はどのくらいだというのだ?」
爺さんが剣を突きつけながら告げると、ヴィネは指を三本立てる。
「……?」
「私のランクは少なく見積もっても300。まあ、この装備品も強力だからこれだけで100はあるだろう。毒や麻痺などの状態変化に強く、魔法無効化が付与されている」
「300……!? そんなでたらめな数値があるか!? 英雄ラヴィーネ=アレルタですら97だったらしいじゃないか!」
「ふむ、時代は移り変わるものだ。そこの将軍はもう少しすればその領域には行くだろう。そして彼女が97というのは、姿を消す前の情報だ。アテにならんよ」
「なんだと……? なぜそんなことがお前にわかる?」
俺が訝し気に反応するとヴィネはくっくと肩を揺らしながら、続ける。
「何故、か。それはそうだろう。なにしろ私の本当の名前はラヴィーネ=アレルタ。本人がそういうのだから間違いあるまい?」
「「「な……!?」」」
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