220.顔合わせ
「ママ! アル兄ちゃん見つけたよ!!」
「あんた達はぐれたら大変なことに……って、アルフェンじゃないか!?」
「母さん! もうここまで来ていたんだ!」
慌てて追いかけてきたカーネリア母さんが俺を見て驚き、双子がペロによじ登ろうとするので俺が降りた。
「うー……」
「ルーナ、匂いを嗅ぐな。大きくなったなルーク」
「うん!」
双子の頭を撫でていると、今度はゼルガイド父さんに声をかけられた。
「魔物の攻撃もあまり無かったし、乗合馬車がスムーズに進んだんだ。お前はなんでここに? 手紙を見て迎えに来てくれたのか?」
「まあ――」
俺が肯定しようとしたところで横に爺さんが立ち、頭を下げた。
「お初にお目にかかる。私はアルフェンの祖父、アルベール=ゼグライト。事件後にアルフェンを育ててくれたと聞いております。その節は本当にありがとう」
「これはご丁寧に……。いえ、妻が保護して私の家族となった、それだけのことです。アルフェンには我々も世話になりました」
俺が居なければ妻と和解し、こうして双子ができることも無かったと握手を交わす二人を見てようやく『両親』に会ってもらうことができたと顔が綻ぶ。
「しかし、アルベール殿と一緒に居るということはやはり迎えに……?」
「いや、それが少々面倒なことがあってな――」
◆ ◇ ◆
「――というわけだ」
「全然『少々』じゃないですよそれ!?」
「まあ、なんとかなると思うからね」
事情を説明すると母さんが目を丸くして声を上げ、父さんも腕組みをして難しい顔をしていた。
念のためギルドの個室を借りて現在の状況を説明。
黒い剣士のことは両親も知っていることなので、仇敵を討つチャンスであることは承知している。
「……国の一大事、か。イークンベルに増援を呼ぶことは可能だと思うが、いかんせん時間がかかりすぎる」
「なに、問題ないぜ! オレ達は強いからすぐに終わるって!」
『少数の方がいいという予言もあるのでな』
父さんの言葉にディカルトとギルディーラが口を開く。
だが、両親は納得がいかない様子だ。
「どっちにしてもライクベルンはいま迂闊に近づける場所じゃないから、父さん達はこのままここで待っていてよ、終わらせてエリベールのところへ帰らないといけないし」
「……いや、俺も行くぞ。息子の危機に黙って待つなどできるものか」
「父さん!? い、いや、大丈夫だって。『ブック・オブ・アカシック』にも負けることはないと書かれていたし」
「ふん、ならなおの事行くべきさね。負けないならあたし達が参戦しても問題ないってことだろ?」
母さんも不敵な笑みを作ってそんなことを言いだす。
「いや、そしたらルーナ達は誰が面倒を見るんだよ」
「はむはむはむはむはむ……」
「ルーナ、落ち着いて食べよう?」
ルークに窘められている膝の上のルーナを見ながら俺が返すと、
「この子達ももう学院に通っているし、あたし達が教えた直伝の剣技と魔法があるから平気だと思うよ。あんたが居なくなってから物凄く修行したんだから」
「ええー……?」
「相手は黒い剣士……子供を連れて行くわけには……」
さすがの爺さんも動揺を隠せない様子で口を開く。
だが、一家はついてくると聞かず、ライクベルン奪還に協力してもらうことになった。
「でも『負けない』けど『誰かが死なない』とは限らないんだよ?」
「あたし達も黒い剣士が出た時の為に訓練をしていたから、あんたが居た頃より強くなっているはずだよ」
「魔人族を呼んで模擬戦などもやっていたからイークンベル王国の戦力はかなり底上げされているしな」
「マジか」
『ほう、面白いことをする。魔人族は積極的な種族ではないのだがな』
「そこはアルフェンがツィアル国との件で人族と邂逅したからですな」
『……お前、昔からそうなのか?』
そういう目で俺を見るのはやめてくれ。
不可抗力だから仕方ないとギルディーラに説明しつつ、今後の予定にシフトする。
ジャンクリィ王国へ来たのは両親たちを止めることと、もう一つ理由があるからだ。
「オーフとロレーナにも協力してもらおうと思う。だからギルドを通じて探してもらおうかなって」
「あの二人も本に名前があったから必要な人材なのだろう。異論はない」
「ならすぐにでも動こう。俺達は装備のチェックからだな」
父さんがそう言った瞬間――
「話は聞かせてもらったわ! ライクベルンは奪還する!」
「うわあ!? ……ロレーナじゃないか!?」
扉を開けて満面の笑みを見せているのはロレーナだった。その後ろには――
「よう、お邪魔しますよっと。もちろん、参加させてもらいます」
「オーフもか……。いったいいつから居たんだよ」
「いやあ、ギルドに入るのを見かけたのよねー。ちょうどライクベルンへ行くつもりだったからね」
「来いって言ってたろ? ……黒い剣士がまさかって感じだがな」
最初から居たなら入ってくれば良かったのにと思いつつ、時短できたことは素直に助かると二人に握手をする。
今度こそ作戦を練るためと宿の大部屋を借りてそこで地図を広げようと移動した。
そしてその夜――
<……アル様>
……リグレット、ようやく出てきたか――
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます