194.道しるべ
「……おう、来たか」
「ああ、爺さん達はもう発っているけど追わなくていいのか?」
「構わん。どうせダーハルが俺達を把握しているとは思えん。話をした後にゆっくり追う。……仲間はそれだけか?」
「ああ、うん……」
街はずれの一角に空以外からは視認しにくい場所があり、そこでギルディーラと顔を合わせて挨拶を交わす。彼は俺の後ろに居るメンツに顔ぶれを見て目を細めてそんなことを言うと、
「もー、お父さんが追手だって? オーフの方にもいってるの?」
「誰がお父さんだ!」
「で、俺達ぁなにをすればいいんだ?」
ロレーナとディカルトが声を上げた。
ディカルトはそのつもりだったが、オーフにも聞かせておかないとと思い話をしたら彼女を押し付……同行を申し出られたのだ。
俺とディカルトだけじゃ危ないということと、ジャンクリィ側も事態を把握しておきたいというのが理由だけど、戦争に巻き込みたくない兄心のような気もする。
とりあえずこの三人が先代国王捜索隊となることを告げると、ギルディーラが壁に背を預けて口を開く。
「すまないな、こんなくだらないことに巻き込んで。話はすでにしてあるが、先王の捜索をお願いしたい」
「とはいうけど、目星はついているのか?」
「実は噂程度の話くらいしかなくてな。このサンディラス王都から夜中にフラフラと歩いている姿が目撃されている。ただ国王が……と考えて声はかけなかったらしい」
「じゃあ町中に?」
「それが探したものの姿形は無いな。俺が町を徘徊しているのは捜索をしているというのもある」
結局のところダーハルが地下牢に入れているのかもしれないし、どこかに出て行ったのかもしれない。町の外に出て、ややもすれば魔物にやられているかもしれないらしい。
まさに砂漠で宝石を探すレベルの捜索になるらしい。
それに抗議しようかと思ったが、もうひとつ頼みごとがあると言う。
「……最悪、開戦してしまった場合は捜索をストップしていい。アルフェン達はダーハルを討ってくれると助かる」
「……マジで言ってんのか? そりゃオレ達は痛まねえが」
ディカルトが真面目な顔で口を開くと、ギルディーラが頷く。
「いいのだ。自分達で出来ることをせずに他国に求める。悪いことではないが、協力体制を示してくれた国を攻めるなど国のためにならんからな。それは先々代のやっていたことと同じだ」
「そういえば独裁者みたいな人だったらしいもんね」
「俺も会ったことはないがとんでもない人物だったらしい」
まあ、もう居ないがなと付け加えて俺に地図を差し出してくる。
広げると赤い点がいくつかついていて、そこが町だとのことだ。そこを探してくれと言いたいらしい。
「すまないが任せる。ギルドの受付にホイットとという男が居るから報告はそいつを通じてくれ」
「わかった」
「気を付けてね?」
ロレーナが背中に声をかけると、片手を振りながら立ち去って行った。
「……それじゃ俺達も出発するか」
「オッケー。まあ、アルフェン坊ちゃんが居ればケガは心配しなくていいから魔物は任せときな」
「変なところで頼もしいな……」
「んじゃ、シュッパーツ!」
「変な言葉使うなよ!?」
そんな感じでラクダに乗って町を出て、別の町へと進行する。
……俺にはその後のプランが出来ているので、偶然を装ってそこへ行くのが恐らく近道。
じゃあそのプランとはなにか?
俺はギルディーラが訪問してきた後に『ブック・オブ・アカシック』を開いて確認をした――
◆ ◇ ◆
‟結局ここに……因果は変えられないか。リンカは連れてきていないだろうな”
「開口一番それかよ。危ないから連れてこなかったよ、ごねられたけど」
‟それでいい。ここまで来たなら仕方ない、教えてやろう。
先代の王は岩に囲まれているジェンリャン渓谷の洞窟へ向かっているはずだ。そこで水神と盟約について話をしているはず”
「水神……ってダーハルが言っていたな。そこに存在するのか?」
‟そう言っている。一人で向かうことになるだろうが、なんとかなるハズだ”
「一人って勝手に決めるなよ……ディカルトってやつがついてくるよ」
‟ディカルト……。なぜ……? いや、なら楽にこなせるだろう。が、ギルディーラやアルベールは期待できん。行くなと忠告したのに来たのだ、終わらせろ”
「なんか最近尊大じゃないか? まあいいけど……ジェンリャン渓谷ね」
‟ここから砂漠の中心に近いオアシス、オファリャの町付近にある場所だ。情報を集めておけ”
◆ ◇ ◆
――という具合に、ムカつく書かれ方をしたものの、先代の王様の行方を教えてくれた。こういう時には役立つのに黒い剣士については分からないってのもおかしな話だよなホント……
「アルフェン君どうしたの? 水飲む?」
「俺は魔法で出せるしロレーナ持っていていいよ。ディカルト、どれくらいで到着しそう?」
「あー、距離的に夕方くらいかねえ。夜になる前には到着したいところだな」
「ラクダによるところが大きいからなあ……こいつなんかのんびりした顔をしているし」
「魔物、怖くないのかしらね」
「多分、慣れてるんだろうぜ。そういう悪路を移動してそうだ。……さて、お出ましのようだ、とっとと片付けるとしますかね!!」
砂に浮いていた背びれを見て舌なめずりをするディカルト。戦闘狂はこういう時にだけ頼りになるな。
「ヒレが美味しいから取っとこうね!」
「意地きたねえ!?」
……ま、なんとかなるか? にしても、水神ってのが気になるな……本は教えてくれなかったけど、魔物の類だろうか――
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