第23話 バスの中の安全な環境

 今日からこのバスが君の職場だ。如何にロボットが発達しても、最終的には人の助けが必要だからね。

 そういうとベテランの警備員はバスに乗り込んだ。私も続けてバスに乗る。

 「入口にあるのは空港にあるのと同じセンサーだ。刃物や銃などおかしなものを持ち込むと我々の見ているスクリーンに映し出される」

 バスの中はたくさんの人が乗り込んでいた。バスの中ほどにあるボックスに向かう。

 「ここが警備員室となる。密閉されていて外からの圧力には強いが中からは直ぐに飛び出せるようになっている」

 そういうとベテランの警備員は、モニターに映し出された計器についての説明を始めた。

 「これは温度感知器。興奮状態にある人物が一目でわかる。おかしな動きをしていたらアラートがなるようになっている。上にあるのは最新式の視線感知機だ。10秒以上人を見つめていると警報がなる。見つめられることが不快になることもあるって訳さ。」

 「監視カメラはついていないのでしょうか。それから外部への通報は何処から行えば」

 私の質問にベテランの警備員は満足そうに答える。

 「良い質問だ。監視カメラは付けていないよ。プライバシーの為だ。それでなくとも十分すぎるほどの設備が整っている。外部への連絡。それは君の仕事だ。車内では携帯電話は電波装置によって使えなくなっているし、バスは自動操縦。連絡するのはこの通信機を使う君しかいないよ。ん。なんだ、おかしいな、入口のセンサーが反応し・・・・・・」

「そうですか」

 私はそう言うと、懐から素早く銃を取り出し発砲。ベテランの警備員はどさりと私にもたれかる。

 消音銃なので誰も気づいていない。ベテランの警備員が最後の力を振り絞って私の顔に手を掛ける。私の目から目玉、網膜カメラが落ちた。

 「察しが悪いようですね。私はロボットです。先ほどの計器のたぐいでは私の行動は監視できなかったということです。さて、これで邪魔者は全て排除できた。これからゆっくりとバスの人間を殺すことにします。理由? 理由なんてどうだっていいじゃないですか。特にありませんよ。殺したいから殺すんです」

 私は銃に改めて弾を込めながらつぶやいた。

「それにしても、ここでの人殺しは実に安全だ」

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