第22話 暴力的な男
動物を保護し、植物を育てて暮らしていた。
俺は博愛主義者だ。だから決まった肉しか食べない。
無差別に肉を食べる奴はどうかしていると思う。生物の頂点だからと言ってどんな肉でも食べると言うのはあまりにもおごりが過ぎると言うものだ。
そして俺は、植物を愛している。
だから植物を食べることは無い。植物は愛でるものであり、食べるものではないというのが俺の持論だった。
俺の周りは保護した動物と育てられた植物に満たされていた。彼らは愛情を注げば注ぐだけその愛を返してくるのだ。その愛に埋もれながら俺は満たされた生活を送ってきた。
「今日も来てやがる」
俺はライフルを構え、発砲する。すると、目標に当たり、どさっと倒れる。
狙うのは人間である。彼らの目的は、俺の育てた動物の肉や植物。それを取る為にやってくる。
俺の根城を獰猛な人間が荒らしていくのを許すことはできなかった。
無差別に肉を喰らい植物を喰らう人間。それはもはやこの世の悪である。原罪とでも言うべきか。
俺は銃で更に狙いを定めると発砲。相手は抵抗もなく倒れていく。
人が死ぬたびに神に祈り感謝をした。
肉や植物を喰う奴らをこうやって退治するのは、なんて楽しいのだろう。これだから人を撃つのはやめられない。人を殺すことが俺にとっての唯一の楽しみなのだ。
ところが、今日の相手は全く違っていた、幾人かの人間がこちらに向って発砲してきたのだ。
「しまった」
俺は狙撃をよける事ができず、相手の弾をもろに喰らってしまっていた。
体が重くなり意識が飛びそうになる。銃を改めて構えようとしたところに、もう一撃。それが、俺のみた最後の景色となった。
隊員風の男は、撃たれて動かなくなった大男をつま先で蹴飛ばした。
「狂ってやがる」
隊員風の男はそう呟き、更に大男を蹴飛ばす。その拍子にうつ伏せだった顔があらわになる。
「とんでもない奴だった。それを証拠に男の顔の実に凶悪だ。こいつに仲間がいるのなら、それはきっと同じように暴力的な奴だろうよ」
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