第20話 外に敵を作るということ
彼らが地球にやってきたのは1時間前。彼らとは宇宙人のことである。
「我々は侵略をしに来たのではありません。我々の優れた技術を皆様に伝えに来たのです」
国連の席上、宇宙人はそういった。この映像は数時間ののち編集されて全世界に流される。
「欲しい技術はなんでしょうか。金を多く掘る技術ですか。それとも長生きする技術でしょうか。星を渡る技術などもあります。好きなものをいくらでもお伝えしますよ」
宇宙人は極めて友好的だった。議論は紛糾したが、満場一致で一つの案が採択された。
全世界に編集された映像が流されている。先ほどの宇宙人の演説を加工したものだ。
「我々はあなた方を支配。征服するためにここにやってきた」
人々はおびえパニックになりかけたが、同時に地球連邦政府の樹立が宣言。地球人類が一丸となって宇宙人と戦うことを決意する声明が読まれた。
世界の反応は素早かった。まず、国同士の戦争が終結。平和協定が結ばれた。同時に秘密裏に行動されていた軍事行動の全てが中断された。これから宇宙人と戦うのだ。地球の人類同士で争っている場合ではない。
国連に出席していない国の中には宇宙人と結託しようとする動きもあったが、それらは全て地球連邦政府の混成部隊によって鎮圧された。なにより、民衆がついてこない。小さな国家の覇権より問題は地球規模へと移行しているのだった。
ほどなく、すべての国が武装を解除して地球連邦政府へと合流するだろう。核兵器ですら一つの場所に集まりつつある。
宇宙船の中。会議から戻ってきた宇宙人は、地球での話を上官へ報告していた。
「彼らの要求は不可思議なものでした。無人の宇宙船を定期的に地球に送ってほしい。ほかには何もいらないとのこと。我々と敵対したい訳でもないようでしたし、おかしな話もあったものです」
上官はその報告を受けて逡巡したのちに答えた。
「なるほど。それでは1カ月おき位に地球に向けて無人機を送ることにしよう。適度に森とか山を攻撃して驚かしたりする必要もあるかもしれないな」
「それはどういうことでしょうか」
「同じ星の住人同士で戦うことにうんざりしていたんだろうさ。外に敵が欲しかったんだよ」
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