第13話 死ぬまで

 税務署の職員が視察にきた。人件費が安い事を疑われたのだ。

 「貴方の所で不正就労が行われているのでは無いかという情報が入ってきまして」

 数人の男たちが証拠を押収する為の箱を持っている。

 「不正就労ですか。まあうちは特殊な環境ですからね」

 私はそういうと、どうぞと職員を促す。職員たちがどかどかと中に入ってくる。

 「貴方は以前はお坊さんをやってたんですよね」

 職員が私に問いかけてくる。私は部屋を案内しながらその問いに回答する。

 「ええ。そうですね。坊主の仕事が役に立ちました」

 そう言うと私は工場への入り口を開けた。

 工場では多くの人々が働いている。服装は様々で100人前後の人たちがそこには居る。

 「これだけの人を雇うとなると人件費は馬鹿にならないでしょう」

 職員たちは不正を確信的なものとして、あちこち観て回る。

 「いえ、彼ら彼女たちには人件費はかかりませんよ」

 私はそういって働いている人たちの足元を指さした。

 「ひえ、足がない」

 職員たちはは小さな悲鳴を上げる。

 「ここだけの話なんですけどね。ここで働いている人たち。もう既に死んでいるんですよ。いわば幽霊って奴です。だから人件費がかからないんです。まさに死ぬまで働いてくれています」

 私は職員に笑いかけたのだが、彼らは既にこの場所から逃げ出した後だった。

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