第12話 結婚

 私の前に悪魔が現れた。美しい女性の悪魔だった。

 願い事を三つだけ叶えてくれると言う。叶え終わると私の前から姿を消し、死を迎える直前に魂を奪っていくという。

 私は願い事を2つだけ叶える事にした。今となっては何を叶えたかを覚えていないが些細な願いだったと思う。

 3つ目の願いを叶えなかった為、悪魔はそれから私に付きまとうようになった。食事をする時も寝る時も悪魔と一緒だ。

 今朝も朝早くから起こされ、なにか願い事はないかと尋ねられた。私はそれに対して、何万回も言っている願い事は無いという返事をしたのだった。

 しょぼんと落ち込む悪魔をみて私は愛らしいと思った。私は悪魔に名前を付け愛称で呼んでいる。

 本当のところを言うと3つ目の願いは既に達成されている。しかし、それがどんな願いかはとうの悪魔は知る由もないし、私から言う事は有り得ない。

 今日も私は二人分の朝食を作り、一つを悪魔に差し出した。彼女はそれをもぐもぐと食べている。

 私は朝食を口に運びながら思うのだ。ああ、こんなに幸せでいいのだろうかと。

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