第11話 砂場遊びが好きだったころ

 私は子供のころ砂場遊びが好きだった。

 砂場に行っては、砂でお城を作ったりトンネル堀りをする毎日。

 有る日の夕方、砂場に行くと一人の大人の男性が砂場に立っていた。今日に限って私の友達はこなかった。その日に限って公園は静かで、蝉の声も遠くに聴こえる、そんな時間。

 その男性は、砂場に石を置いたり砂に円を書いたりして遊んでいた。

 私はその遊びに興味を持ち、近寄ろうとしたのだが、

 「ぼうや。これは遊びじゃないんだ」

 そういって男は私を砂場に近寄らせないように立ち塞がった。

 私は興味があったが、その大人の姿があまりにも恐ろしかったので、近寄るのをやめた。

 夕焼けに照らされる男は男はまるで鬼の様に赤かった。

 私はその日、公園で遊ぶのをやめ、家に帰って過ごした。私は不安な気持ちで一杯になっていた。

 公園で有った出来事を家族に話したが、親は二人とも私の話を何か冗談のようなものだと思ったらしく、全く相手にしてくれず、早く寝なさいと私に言った。

 しかし、祖母だけが私の話をきちんと聴いてくれた。そして祖母は今まで見た事のないような厳しい顔をして言った。

 「その場所にはあまり近寄らない方がいい。その男の人の事は忘れなさい」

 祖母はそう言うと、私の手をぎゅっと握ってくれた。その手は力強く少し痛かったが、祖母の体温が私へと伝わるにつれ、さっきまでの不安な気持ちは晴れ、ようやく落ち着き眠りにつく事ができた。

 次の日目が覚めると不安な気持ちはすっかり無くなっていた。しかし、昨日の出来事を思いだすと、ぞっと背中に張り付くような気配を感じた。私は祖母の言葉を思い出した。

「もう、あそこで遊ぶのはやめよう。今度から違う公園で遊ぶことにしよう」

 私は以来、公園には近づかなかった。

 聴く所によると、あの後、その公園で遊んでいた子供が事故にあったという。

 

 私はそんな数十年前の事を思い出す。

 あの後、すぐに祖母も他界し、結局、解からずじまいのままだった。

 あの日と同じように蝉の音は遠く赤い夕日が辺りを照らしている。

 そして、答えは今目の前にあった。

 私は民俗学の研究に没頭していたが、偶然、それを見つけたのだ。

 禁書と呼ばれる書物の中ほどに記載されていた。

 一言で言うと、それは『呪い』の儀式に関する内容。

 それを見つけた時、不安な気持ちが私をむしばんで──。

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