第6話 現代における白雪姫の話

 ある国に白雪姫と呼ばれる非常に容姿の優れた姫がいた。

 しかし、彼女の継母である王妃は自分がこの国で一番美しいと思っていた。

 ここは、継母の寝室。継母はいつものように携帯端末に問いかける。

 「Hey Siri この国で一番美しいのは誰か」

 「それは王妃様です」

 王妃はその問いかけに満足していた。

 白雪姫が七歳になった有る日。いつものように王妃は携帯端末に問いかけると、

 「それは白雪姫です」

 と答えが返ってきた。その答えに激怒した王妃は、アレクサに、

 「アレクサ!白雪姫を懲らしめる方法を教えて!」

 と訪ねた。アレクサは長い読み込み時間ののちに、

 「質問の意味がわかりません」

 と答えた。ますます激怒した王妃は白雪姫のLINEをブロックして城から追い出した。怒りの収まらない王妃はGoogle検索でヒットした猟師を呼び出してこう言った。

 「白雪姫のSNSを荒らしたうえで殺してしまえ」

 猟師は命令に従ったのだが、白雪姫の心やさしいSNSの書き込みに心を奪われ、白雪姫を森の奥に置き去りにするだけにとどめた。

 森に残された白雪姫は、七人の小人に出会い、小人の家で生活を共にするようになる。

 白雪姫は七人の小人と映える写真を撮ってはインスタグラムにアップロードするエモイ暮らしをしていた。

 ある日のこと、また王妃はこの国で一番美しいのは誰かと携帯端末に問いかける。すると、

 「それは森のインフルエンサー白雪姫です」

 と答えが返ってきた。白雪姫が生きている事を知った王妃は、白雪姫の位置情報を頼りに小人の家にやってきた。

 「最新機種はどうですかー?」

 白雪姫は最新機種がタダで手に入れたと喜び、ショップ店員に化けた王妃の携帯端末を契約する。

 王妃の渡した新しい携帯端末には面白いソーシャルゲームが大量に入っていた。

 毎晩ガチャを回してはプリペイドカードを消費していく日々。白雪姫は3日もしないうちに、すっかりゲーム中毒になっていた。

 ゲーム中毒の彼女はとうとう昼夜逆転の生活リズムとなり、昼間になると、こんこんと眠り続けてしまう始末。

 小人たちはそれを悲しみ、みるも無残な寝ぞうの白雪姫をガラスの棺へと寝かしつけた。

 その時、セグウェイに乗った異国の王子が通りかかった。王子はマップ機能を頼りに旅をしていたのだが、使っていたタブレットが電池切れになってしまい、充電をできる所を探していたのだ。

 白雪姫をみるなり恋をした王子は、小人から姫のLINEアカウントを教えてもらい、眠っている白雪姫のアカウントにスタ爆をした。あまりの通知音に、

 「もう!うるさいなぁ。あんまりうるさいとブロックするよ!」

 といって目を覚ました。目を覚ました彼女は自分を起こしたのが異国の王子だと知る。

 彼はマッチングアプリで知り合った他のどの男性よりも格好がよかった。白雪姫は王子にひとめぼれをした。

 二人はやがて夫婦となり、幸せに暮らすことになった。

 一方そのころ、王妃は裏アカウントと今までの悪事が世間にバレて、SNSが大炎上。アカウントの火消しで白雪姫どころではなくなってしまったとさ。

 めでたしめでたし。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る