第7話 時間はあるが金が無い
その男は金が無かった。
金は無いが時間はある。何か仕事を探せばいいのだが、男はねっからのぐうたらだった。
「楽して金が稼げないものか」
そんな事を考えていると、一つの看板が目に入った。看板には一言。
「時間扱ってます」
とだけ書かれていた。
男は看板をたどりに路地の奥へと入っていく。そこには店の主人が一人。
「いらっしゃい。ここでは時間を扱ってるよ。それで、今日は何がいりようかな」
「いや。金は持ってない」
「ならば、貴方の時間を私が買うと言うのどうかな」
どうやらこの店は買取も行ってるらしい。
時間なら余るほどある。男は時間を売る事にした。
「どのくらい売るんだい」
「そうだな。ありったけ売ろうと思う」
そういうと、店の主人は険しい表情になる。
「ありったけか。それはあまりお勧めしないよ。後悔しても元には戻れないんだよ」
「いや。良い。時間なら山ほどあるんだ」
「そうか。では買い取らせていただこう」
そういうと、辺りが真っ暗になる。男はその闇に飲まれ落ちていった。
男は目が覚めるとベットに居る事に気付いた。
「いったいここはどこだ」
「なんてことだ。目が覚めるなんて」
周りの人たちが驚いて男をみている。男は病室のベッドの上で寝ていたのだ。
「貴方は事故にあい30年ほど寝ていたんですよ」
医者らしき人物が男に言う。信じられない事が起こったもんだ。と男は思った。
同時に男は時間を売った事を思い出していた。
そうだ。金はどこだ。男が辺りを探すと、大きなバッグが机の上に有った。
中にはぎっちり札束がつまってるに違いない。男はそう思いバッグを開けた。
しかし、中は空っぽ何も入って無かった。
「ああ。そのバッグですか。貴方の治療費そこから払わせて貰いましたよ」
医者がとんでもない事を言った。男は絶望し窓を見つめた。
窓に映りこんでいたのは、すっかり老人となった男のシルエット──。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます