お題:流星群 ― まぶたの裏に
11/17 お題:流星群
光の尾を引いたミサイルが夜空を横切り、爆発の明かりで地平線がチカチカ瞬いた。
帝国軍のミサイルが今日もどこかの村や町に落ちる。ゲリラがいるかもしれない、という理由で。
私はいくつもの光の尾をぼんやりと眺めながら、母が言っていた流星群はこんなかんじなのだろうかと思った。父と母が出会ったのは流星群の観察会だと聞いた。今じゃ考えられない平和だった時代の話。私が母と同じ年齢になったらまた見れるって言ってたっけ。
「バッカじゃない? 見当違いのとこに打ち込んでさ」
「そうだけど、私たちのせいでミサイルに狙われるって思われてるよ」
「悪いのは帝国でしょ!? あいつらを追い出すためなんだからわかってもらえるって」
私たちレジスタンス――自分たちでゲリラなんて言わない――は帝国軍の基地や補給路を狙って攻撃している。
父と母が殺されてレジスタンスに入った頃は、憎い帝国に復讐しようと息巻いていた。でも、どれだけ攻撃が上手くいったところであっという間に元通りになるどころか、前よりも頑丈な防壁を作られる。私たちが鹵獲した補給品よりも多くのモノが新たに補給され、私たちの人数は減っていくのに帝国軍は着々と支配地域を広げた。
私や一部の戦友はだいぶ疲弊していた。消えていった戦友たちに、終わりのない戦いに、町なかで私たちの行いが迷惑だと囁かれることに。
「上手くやってる奴なんて一部でしょ。普通の、あんたや私みたいな普通の庶民は好き放題されて迷惑してるんだから。私たちを支持してるって帝国に知られたら危ないから、そういうフリしてるだけ」
こんなことを言う戦友の目はギラギラして、狂気を孕んでいるように見えた。
飢えを抱え、怯えて隠れる日々で復讐心を燃やし続けるには、狂気に似た何かが必要なのかもしれない。
私みたいに疲れ果てた戦友は目を伏せてため息をつき、翌朝には姿を消していた。
脱走者が出ると情報がもれる危険があるため、私たちは急いで移動した。
追手に追いつかれるんじゃないか。圧倒的な人数でしらみつぶしに探されるかもしれない。恐怖を抱える昼、悪夢で目覚める朝、疲れ果てた夜。
今夜もミサイルの光が夜空を照らす。目を閉じたまぶたの裏に光の軌跡が残った。
流星群を見れるのと私にミサイルが落ちるの、どちらが先だろうか。
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