魔法菓子店ピロートの出来事

3.かぼちゃ

　写真中心のSNSで、じわりじわりと人気が出てきた魔法菓子がある。

　カボチャを使った和風モンブランが、まるでランタンのように光る――その名もずばり「ランタン・モンブラン」だ。

　中身のシャンティイは抹茶風味、中に仕込まれた粒あんはアクセント。モンブランクリームは、かぼちゃ本来の自然な甘さを隠し味のみりんで引き立て、下のダマンド生地とタルトは、米粉を使い、しっとり且つクリームを邪魔しない口当たり。秋の夜長にほっとできる味わいもさながら、その魔法効果も注目の的だった。

　材料に使われる『ちょうちんカボチャ』の魔法効果で、まるでランタンの灯のようにぼんやり光るのだ。それだけでも幻想的で不思議だが、もう一つ、嘘か真かわからない噂もSNSを駆け巡っていた。

　――ランタン・モンブランの灯を眺めていると、時折、亡くなった親しい人の顔が浮かぶのだと。

　魔法効果は光るだけ、と職人は言うが、この噂は否定しない。

「魔力は時折、僕たち職人の力を越えてしまうこともあるみたいなのです。だからこそ、惹かれるのかもしれません、魔法菓子に」

　ぼんやりと淡いオレンジの光を放つ「ランタン・モンブラン」を持ったピロートのシェフパティシエは、まるで魔法使いのように魅惑の笑みを浮かべるものだから、それもまた噂を助長させている一因でもあった。