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「アンタどこから入ってきたんだい? 扉は開かなかったはずだ。壁でも通り抜けたのか?」
中年男が
私が身振り手振りを交えながら自分がやって来た経緯を伝えると、中年男は初めの方こそ信じられない様子で目を見開きこちらを見ていたが、食料が独りでに入ってきた事を聞いてから少し安堵した表情を浮かべた。
「ぼくだけが見たわけじゃなかったんだな。良かった」そう言ってから中年男は今居る部屋も扉の向こうに鍵が落ちていて届きそうにないと言い、加えて私が元々居た部屋の扉からは小窓から小さな子供が遊んでいるのが見えて不気味だったと語った。
言われて再生した元居た部屋への扉を振り返ると、小窓は下部ではなく首の辺りにあった。
「そう言えば鍵は……」首のあたりの小窓から見ても元居た部屋に鍵は落ちていない。振り返って新しい部屋の床をまじまじと見て回ったが、扉から見えていた鍵らしきものは落ちていなかった。
「鍵なら向こうに落ちてるよ。取れるわけないでしょ、あんなに遠くにあったらサ」
中年男がまだ見ぬ部屋への扉を顎で指した。扉は元来た部屋へのと同じような鋼鉄で出来ていてこちらは最初の扉と同様に下部に引き上げ式の小窓があった。
地べたに這いつくばって手をのばす、最初の扉とほぼ同じ距離に鍵が落ちていてどうあがいても届かない距離だった。
身体を右に捻って起こしながら、やっぱり手は届きませんね。鋼鉄は突き破れそうにありませんよね……と言い終わろうとした時、腹のあたりにずしりと重みを感じた。次に来たのは喉元に伸びた両手だった。見ると先程まで部屋の片隅で座っていた筈の中年男が私の腹の上に馬乗りになって首を締めているのだった。
中年男は大きく見開いた目を血走らせながら口端で
ふっと首に掛かる圧力が緩んだと感じた、次に胸の辺りにごとりと何かが落ちてきた。掠れた目で捉えられたのは中年男の生首が私の胸にぶつかって床に転がっていく様。
薄れゆく意識の中で最後に見えたのは首があった向こうに黒い人影。そいつは黒いローブを
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