部活動とクラスメート

入学式が終わり、新入生は全員自分の教室に戻った。今から部活動紹介のビデオを見るらしい。


どんな部活があるのだろう。僕が中学生の時に入っていたバドミントン部はあるだろうか。

もし、バドミントン部があったとしても、入ることはないだろう。高校の部活は中学の時ほど簡単じゃない。少し強いと言うだけで、試合にでることができる訳じゃないと思う。

興味のある部活があれば入ってみようと思った。


「サッカー部です。普段はグラウンドで活動しています。経験者、初心者問わず歓迎しています。また、プレイヤーだけでなく、マネージャーも募集しています。サッカーの知識のない人でも、世話をするのが好きな人、サッカーを見るのが好きな人なら誰でも大歓迎です。興味のある人は、放課後グラウンドに来てください」


1番手のサッカー部はすらすらとカンペを読んでいるような口調で話していた。

しかし、マネージャー募集のところでは、心なしか少し声が上ずっていた。

誰でも、応援してくれる人が近くに居れば輝くことができる。

サッカー部は経験者しか入らないような部活だ。サッカーの経験がない僕にはハードルが高すぎる。


その後は、バスケットボール部、バレーボール部、野球部と続き運動部の紹介が終わった。

次に始まったのは文化部の紹介だ。


1番始めに吹奏楽部、次に書道部、華道部、茶道部、軽音部と続いた。

最後に紹介されたのは……文芸部だった。


「文芸部です。文芸部は本館3階の予備教室で活動をしています。小説が書きたい人、漫画を書きたい人、語彙を増やしたい人などを募集しています。月に1回部内発表会を開催したり、文芸コンクールに応募したりします。一緒に文学と芸術を楽しみましょう」


紹介ビデオに映って居たのは3年生の部長らしい、黒いメガネに黒髪で左右で三つあみをしている人。髪の毛を赤色や緑色、青色などに染めている人が多い中で、黒色の髪をしている彼女に親近感が湧いた。小説も漫画も読む専門だった僕だけれど、初めて自分の手で物語を作ってみたいと思った。

放課後に文芸部に寄ってみよう。何かに出会えるかもしれない。


 

………………………………………………

部活動紹介がすべて終了すると、次は自己紹介が始まった。


愛雲早希あいぐもさきです。中学校の頃は演劇部に入っていました。好きな教科は国語です。体育はできません。この学校の自由なところに惹かれて入りました!1年間良い思い出をたっくさん作りたいので、よろしくお願いします!」


さっき僕に話しかけてきた色盲の子は元気よく自分のことをアピールできている。


彼女はどんな部活に入るのだろうか。色のない、音だけの吹奏楽部か、軽音部に入るのではないだろうか。


演劇部は色とりどりの服や、ライトを扱うはずだ。どのように色を見分けているのだろう。

高校に入って初めて僕に話しかけてきた彼女はとても不思議な人だと思う。

自分に無いものを持っている彼女に僕は興味を持った。


…………………………………………………

その後もスムーズに事が進み、気付けば放課後になっていた。

僕は帰りのチャイムがなるとすぐに席を立ち、教室を出て文芸部の待つ予備教室へむかった。


ガラガラと古く錆びている重い扉を開けると、今日のビデオに写っていた人と、他に3人ほどがそれぞれ自分の世界に入っていた。

割と大きな音を立てて開けたのにも関わらず、誰も僕に気がつかない。

凄い集中力の高さだ。

僕は開けた扉を今度は音を立てないようにパタンと閉めた。


普段なら讃えるようなスキルだが、今の僕には

少し困るものだ。新入生が入ってきたのに気がつかないということは、入る可能性のある人材を逃してしまうのではないだろうか。


どうしようか迷っていると、ガラガラっと僕が開けた時よりも、強い勢いで扉が開いた。


「入部希望です!!見学しにきましたー!」


振り返って扉のところを見てみると、そこにいたのは同じクラスの愛雲早希だった。

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