第8話 学園を襲撃するよ!


 投げ魔力は続く……!


『イイネ。魔力+30』

『どうやって魔法で遅刻をごまかすのか気になる! 魔力:+40』


 反対意見のコメントも来たよ!


『ちょっと! 勝手に投げ魔力してるの誰?』

『だめじゃないの?』『先生に相談しないと』


 ルールに厳しい先輩がいるみたい。

 お願い、見逃して! 学園に潜入するには、もっとたくさんの魔力がいるんだよ!


『採点は生徒の自治に任されている! 教師の介入を招いちゃだめ!』


 私の気持ちに呼応するみたいなコメントが現れた。


『私、その考え方は一理あると提言します。何故ならば、入試は精霊と交流するシミュレーションだからです。

 精霊は心が動く配信を好みます。それゆえ、我々採点者も精霊の気持ちに立って加点しなければなりません。

 精霊に学校のルールなど関係ありません。我々も心のままに採点する。それは実戦的な試みだと私は提言します』


『長過ぎですわ!』『コメントはシンプルに!』


 いいこと言ってくれてる先輩がいたけど、ツッコミを受けてるよ。


『でも面白そうだ』『ナシ寄りのアリだな』『反則の挽回の機会はあげてもいいと思う』


『私の心は動いた。魔力:+50』

『もっとこの子たちを見てみたい。魔力:+30』

『支援。魔力:+40』『イイネ。魔力:+50』『善き哉。魔力:+50』


『だめだって!』


『我々は共に戦う後輩を探している。この子の意志は強い。魔力:+100』

『支援。魔力:+50』『支援。魔力:+70』『支援。魔力:+80』『支援。魔力:+90』


 次々にコメントが浮かび、瞳の中を流れていく。


 チチーッ……。


 精霊石が共鳴音を鳴らした。

 私たち3人の精霊石が鳴り、光り、雷光のように明滅する。


 そして、私たちのステータスが一斉に書き換わった。


『ハルカ・モコモコーナ

 魔力:320

 生命力:90』


『ラビィ・フワトロニカ

 魔力:200

 生命力:100』


『ナナ・ニャーナ

 魔力:240

 生命力:70』


「うわぁ~~!」「おお~~!」「んにゃあ~~!」


 私たちは感嘆の声を上げたよ。


「先輩、ありがとうだ!」「ありがとう!」「ありがとにゃ!」


 お礼を言い、時計塔を振り返ると、その針は10時55分。  

 もうほとんど時間がない。


「なんかアタシの魔力少ないな?」「嘘ついたからにゃ」

 なんてラビィとナナが言っていたけど、おしゃべりしてる暇はない。


 私たちは手短に打ち合わせを済ませると――。




 魔法学園への突撃を開始した。




火球投擲呪文ファイアビット!」「火球投擲呪文ファイアビット!」「火球投擲呪文ファイアビット!」


 受験勉強で暗記してきた呪文を、いきなり実戦使用。 

 3人で路地の隙間から学園に向かって呪文を唱えた。


 狙いを付けるために真っ直ぐに伸ばした人差し指の先から、熱い炎が吹き出して渦を巻き、火球となって宙を走る。


 ゴッ! ゴッ! ゴウッ!


 火球は青空に3本の筋を描き、学園の中庭に着弾する。


 ドン! ドン! ドンッッ!!


 派手な音が鳴り響き、火球が飛び散って樹木に着火。きれいに刈り込まれた広葉樹や、幾何学的な生け垣が煙に包まれてるよ。庭師さん、なんかごめんだぁー。


『こんなことするの!?』『えええぇぇぇ!』『これは予想外!』

 先輩たちが驚きのコメントを投げてくるよ。


「なんだっ!?」「燃えてるッ!」「何何何!?」「きゃー!」「火事だ――!」

 受験生たちもざわめいてる。


 路地の隙間から顔を覗かせると、塀の角のところにいた警備員の姿が消えていた。異常事態発生で、正門の方に向かったに違いない。


 今だっ!

 私たちは路地から飛び出した。


煙幕投擲呪文スモーク・ベルチ!」

 私は呪文を詠唱し、指先から黒煙の弾丸を発射した。


 ドバッッ……!!


 黒煙の塊が煉瓦塀と鉄柵に命中して、煙幕となって周囲に広がる。

 私たちはその煙幕の中に突入して、鉄柵をよじ登ったよ。


『煙幕は基本だ!』『なるほどね!』『これはいい作戦だ』


 先輩たちが評価のコメントを投げてくれる。




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