第9話 学園襲撃の続き!


 鉄柵を登ると、焚き火の煙に巻かれたみたいに周りが見えない。

 だから勘で魔法を撃ちまくる。


煙幕投擲呪文スモーク・ベルチ! 煙幕投擲呪文スモーク・ベルチ! 煙幕投擲呪文スモーク・ベルチ!」


 私は魔力が二人より多かったから、煙幕担当を引き受けたよ。

 鉄柵の上から、校庭の受験生たちがいると思われる方向に向かって、煙幕弾を発射しまくった。


「「「きゃ―――――!」」」「襲撃されてるッ!」「逃げろー!」「みなさん落ち着いて!」「盗賊団ですわッ!」「敵襲―――ッ!」


 大勢の悲鳴が聞こえる。ごめんだごめんだ! でも煙幕だから許して!


 心の中で謝りながら、鉄柵を乗り越えて校庭に着地!


火球投擲呪文ファイアビット! 火球投擲呪文ファイアビット! 火球投擲呪文ファイアビット!」

 ナナは庭木が燃えている方向に追撃を加えてる。警備員の目を引きつける作戦だ。


 ドン! ドン! ドンッ!


 庭木はよりいっそう派手に燃えだして、煙幕の中でも赤い炎が分かるよ。


氷塊投擲呪文チルビット! 氷塊投擲呪文チルビット! 氷塊投擲呪文チルビット!」

 ラビィの呪文詠唱が聞こえた。


 氷塊の輝きが、煙の薄いところを飛んでいく。


 パ――ン! ガチャン! ドパンッ!!


 校舎の外壁に当たって砕け、派手な音が鳴る。


「「「キャアアアアアア!」」」「敵襲! 敵襲――――ッ!」「伏せろ――――ッ!」


 大きな音で、受験生たちはかなりの混乱をしているよ。


 さすがにラビィも直で受験生を攻撃するのは止めたみたい。目的は潜入だからこれで十分だよね。


「きゃあああああ!」

 煙幕の切れ目に、お団子ヘアの子が逃げて行くのが見えた。


 あの子、私とナナに眠り薬を飲ませた子だよ!


 バシャアアアアン!


 盛大に水音が聞こえた。噴水の水盤に落ちたっぽい。

 ちょっとだけ罰を受けた感じかな?


 ようし、そろそろ……。


煙幕投擲呪文スモーク・ベルチ! 煙幕投擲呪文スモーク・ベルチ! 煙幕投擲呪文スモーク・ベルチ!」

 私は受験生たちの方角に向かって煙幕追加。


 ドッ! ドッ! ドバァッッ!!


 煙幕はいっそう濃くなって、もはや校庭は闇みたいなもの。私たちもお互いの姿は見えない。

 あとはこのまま受験生の中に紛れ込んでしまえば終了だよ!


「みんな、行くだよ――!」

 私の声に応じて、「了解!」「にゃっ!」とラビィとナナの声が聞こえたよ。


 ダダダダダダダッ!


 私たちは走り出した。受験生たちが沢山いる方向へ。


 


 しかし――。




 ここは国立魔法学園。

 世界最強のレア職業・魔道士を目指して、王国全土から強者が集まる場所。


 まず、先生はただ者ではなかった。


 ゴウッ……!


 思わず目をつぶるほどの大風がやって来て、校庭をひとなで。

 あれほど立ちこめていた煙幕が、きれいさっぱりなくなってしまったよ!


 魔法だ!

 旋風の魔法で煙幕が吹き払われた!


 そして、受験生たちもただ者ではなかった。


「あっ…………」

 私たちの前には、100人以上の受験生が待っていた。


 獣人ライカンの末裔もいるし、私みたいなエルフの血筋もいる。先進的な制服やら民族衣装やら、着ている服も様々だ。王国各地の風土を映すモザイクみたいに受験生が並んでいる。


 さっき聞こえた悲鳴から想像する姿とは違って――。

 ほとんどの受験生が臨戦態勢だった。

 木剣や短刀やクロスボウを手に、既に戦う準備に入っていたよ。


 目つきはみんな怖かった。そりゃそうか、こっちは学園襲撃犯だもんね!


 校庭には私たちの間を遮るものも、隠れるものも何もない。


 やば! やば! やばやばヤバ!


「あいつがくせ者ですわ―――ッ!」「かかれ――――――ッッッ!」「殺せ―――ッッ!!!」「皆殺しだ――――ッッ!!」


 こ ろ せ !? み な ご ろ し ? ?


「「「「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」」」」」」」


 魔法学園は女子しか受験しないはずなんだけど、野獣みたいな吠え声でみんな迫ってくるよ! 


 私はもう、泣いていました。はらはらと。


『やっぱこうなるか』『笑』『笑』『逃げろ逃げろ(笑)』


 先輩! 笑ってる場合じゃないですよ!


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