第参拾七話 激闘ノ壱
日下の放った一撃は作太郎の脾腹から肩に抜けるはずだった。
だが、そこに作太郎はいない。
いつのまにか反転して左から斬り返してきた。
ザザッ!
日下が飛び退ってかわす。
間髪入れず作太郎が
死角の右にこだわってはいない。
あらゆる角度から斬撃を浴びせてくる。
(こ…こやつ!)
押された。なんとか凌いではいるものの嵐のような斬撃に受けるのが精一杯だ。このおれが守勢にまわらされている?!
そうこうするうちに足がもつれた。
(まずいっ!)
体勢を崩したまま跳躍した。空中に逃れた日下を作太郎の刃が追ってくる。
鉄火が散った。作太郎の刀刃を打ち合わせ、そこ支点にして日下がとんぼをきった。
ズザザザザ……!!
再び距離をとって対峙する。
「ハア……ハア……」
息があがっていた。日下自身、ここまで追い込まれるとは思わなかった。
「阿片を吸っているな」
作太郎が日下を見据えていった。勝利を確信した表情を浮かべている。
――阿片ごときでおれは死なぬ。
さわを相手に見栄をきった日下であったが、阿片の毒は知らぬ間に体を犯していた。
第参拾八話につづく
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