第参拾壱話 師弟対決!

 先に抜いたのは一馬であった。

 腰に差していた鎧通しの鞘を払う。

 作太郎も応じて大刀を抜いた。


「本気でゆくぞ」


 一馬が告げた。

 むろん、致命傷を負わせるつもりはない。二、三日足腰が立たぬ程度にはとどめておくつもりだ。

 でなければ作太郎はその足で代官屋敷に乗り込んでゆくだろう。

 おそらくいまの作太郎は、はじめてひとを斬った高揚感に支配されている。

 ある種の自信が万能感につながり、おのれを無双の剣士だと思い込んでいるのではないか?


 この慢心は口でいって止められるものではない。身をもってわからせてやるしかないのだ。


 ザッ!


 作太郎が動いた。

 大刀の白刃をまっすぐ突いてきた。

 一馬が反転してかわし、入り身で作太郎の懐に入る。

 鎧通しの柄で作太郎の胸の急所を穿うがつ!

 だが――

 かわされた。

 瞬間、作太郎の姿が消えた。

 次の刹那――


「ッ!」


 一馬の背中に衝撃が疾った。




   第参拾弐話につづく

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