第弍拾七話 忍びのもの変転

 ザザ……ザザ……。


 穂が揺れた。

 潜伏者も察知されたことに気づいたようだ。

 作太郎ははしった。

 気配を放つ茂みに向かって木刀を振り下ろす。

 その刹那、木刀の物打ちの部分が消失した。

 下から跳ねあげられた刃に斬り飛ばされたのだ。


 ズザッ……!


 茂みから忍者刀を逆手に構えた黒装束のものが出現した。

 忍びだ。

 代官の手のものか?

 一尺二寸の短刀と化した木刀をみて忍びがわらった。


「向かってくれば斬り捨ててよいといわれておる」


 忍びは単なる偵察者であろう。暗殺目的で張っていたわけではないようだ。


「やかましい!」


 作太郎が再び疾った。

 一馬直伝の縮地ノ術を遣う。

 入り身で懐に入った。

 短くなった木刀の先で忍びの鳩尾みぞおちをえぐる。


「ぐえっ!」


 忍びが呻いて後方に飛んだ。

 浅い。

 これが本身の刃だったら致命傷を追わせていたところだ。


「貴様、命はないぞ!」


 忍びが腹を押さえて唸った。この場を逃れるには一馬を殺すしかないとはらを固めたようだ。

 偵察者がいつしか暗殺者に変じていた。




   第弐拾八話につづく

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