第拾八話 処分
朝起きると作太郎の姿はなかった。
「あいつ……」
思わず舌打ちが漏れる。大滝修蔵や仲間の様子が気になって町へ降りていったのだろう。
「……しょうがない」
まだ右足は完全ではないはずだ。見捨ててはおけない。
一馬も山を降りることにした。不自由な左足を引きずりながら……。
旧城下町の通りを一馬は歩く。
目抜き通りも路地裏もひっそりと戸を閉め、町はまるで廃墟のようだ。おそらく凄惨な浪士狩りが行われたのだろう。
やみくもに捜し回っても意味がない。一馬は通りがかった行商人を呼び止め、大滝道場の場所を尋ねた。
「訪ねてどうなさるんで?」
行商人が聞き返してきた。明らかに訝しげな表情だ。関わりになることを怖れている。
大滝道場が代官襲撃の拠点であったことはもはや周知の事実のようだ。
「借金の取り立てだ」
一馬はウソをいった。小袖に袴姿の借金取りなど見たことがないとばかり、行商人はますます疑わしそうに目をすがめると――
「それは無駄にございますな」
「どういう意味だ? 家財道具でも残っていれば差し押さえることができるぞ」
「それは代官所が根こそぎ持っていき処分しました。今日はひとの処分が行われる日ですよ」
「ひとの処分?」
「
それだけいうと、行商人は小走りに駆け去った。
まるで逃げるように……。
第拾九話につづく
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