第拾四話 阿片

 庵に到着するころには、作太郎は一馬の背中で寝息をたてていた。

 突きつけられた刃はだらんと垂れ下がり、いまは鞘の中に収まって一馬の腰帯にもどっている。


「着いたぞ」


 一馬は背中の作太郎を揺り動かし、庵の床板にそっと横たえた。

 右太腿の傷口を調べ、真新しい包帯に変えてやる。


「礼はいわない」


 目が覚めた作太郎がまたにらみつけてきた。


「いいから黙って寝ていろ」


 囲炉裏で湯を沸かし、さわからもらった薬を煎じて飲ませる。

 先ほどまで土気色だった作太郎の頬に心なしか赤みがさしてきた。


「……あんたは」


 作太郎が口を開いた。なにかをいおうとして押し黙る。


「なんだ? いいたいことがあったらいえ」


 一馬が促すと作太郎は思いきったように語を継いだ。


「あんたは……あの女が阿片アヘンを売っていることを知っているのか?」


「ッ?!」


 一馬は弾かれたように作太郎に振り向いた。


「それは……真実まことなのか?」




   第拾五話につづく

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