第七話 怨敵、再び

 旧城下町の目抜き通りを歩いていると、騒がしい鈴の音が通りの向こうから響いてきた。


「これ、お代官様のお通りじゃ。土下座をせんか!」


 行商人ふうの身なりの老人が、茫と突っ立っている一馬の袖を引っ張る。

 なんだかわからぬが一馬も老人にならい、その場に身を伏せた。


 じゃらん……じゃらん……じゃらん……。


 巫女装束の女性が巻立型の神楽鈴かぐらすずをふるいながら先頭を練り歩いている。あとにつづくは壮麗な輿を担いだ一行で、まるで天子様の行幸のようだ。


「ッ?!」


 一馬は屋形の上に鎮座する人物を見て、ハッと胸を突かれた。

 間違いない、あの男だ。特徴的な右目の傷。


「あれが……お代官様なのか?」


 小声で隣の老人にきく。


「そうじゃ。日下弦之丞くさか・げんのじょうさまじゃ。これ、頭が高い」


 代官・日下弦之丞――父・徹山を殺し、一馬を佐渡送りにした奸計の首謀者。忘れたことは一度もない。やつこそ、公儀始末人の日下乱蔵であった。




    第八話につづく

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