第五話 思わぬ再会

 翌日。

 一馬は善徳寺の墓所へいった。

『お浜之墓』と墓標がひっそりと墓地の隅に立てられてあった。

 花をそなえ、手を合わせる。

 一馬には気になることがあった。


 作太郎である。

 父がいつからお浜と懇意になっていたかは知らない。

 もしかしたら……

 作太郎は父とお浜の間の子である可能性もある。

 だとするのならば作太郎と己は兄弟だ。

 昨日は弟に命を狙われたことになる。

 初めて会ったときは五才くらいのがんぜない童子であった。

 あれから十二年の歳月が流れたのだからいまは十七か十八ぐらいか。


(お浜さん……おれは……おれはどうしたらいいのだ)


 嫌な予感がする。

 大業が控えている、と大滝修蔵はいった。

 なにかよからぬ企てに巻き込まれているのではないか?


 いくら問うても泉下のお浜はこたえてくれない。

 今更ではあったが冥福を祈って一馬は踵を返した。

 と、そのとき――


 手桶をげた女性がこちらにやってきた。

 仕立てのいい着物を着ている。どこぞの大店の女将のようだ。

 だが、その顔には見覚えがあった。

 まさか……!?


 向こうも気づいたようだ。一馬をみとめて目をみはっている。


「か……一馬さん……!」


 女性が口を開いた。

 一馬がこくりとうなずく。


「さわ……さん」


 その女性は山菜採りのさわであった。




   第六話につづく

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