風俗嬢を始めてみたら天職ではと思った話

第5話 他の女性とお金の話

　実は面接の時、「イチカさんと違って他の女の子はみんなお金目的だから、話すと幻滅するかもしれない」と言われました。実際のところはどうかと言うと、幻滅まではいきませんでしたが、考え方や話が合わないな、と思った経験はたくさんあります。

　そもそもスタートから違うと言いますか、大半の風俗嬢の方は何かお金が必要なのっぴきならない理由があって“仕方無く”この業界に入って来ておられるので、それがいいとか悪いとかの話ではなく、興味が募って飛び込んだ私とズレが生じるのは当たり前のことかなと思います。

　私は当時から「天職だと思うからなるべく長く働きたい」と思っていましたが、最初に目標金額を設定してそれだけ稼げたら辞める、という方もおられますし、若い頃にこの業界に入って贅沢を覚えたから元の生活に戻れなくなった、という方にお会いしたこともあります。

　具体的にどれくらい稼げるのかと言いますと、例えば私が最初にいたそのお店では60分コースを一本こなすと女性の取り分は7,000円、というのが基本でした。時間に比例して額も増えます。お客様が支払う額の五割から六割ほどが相場のようですが、店舗によっても地域によっても差があるようです。本指名（同じお客様からの二回目以降の指名）だと、本指名料2,000円がプラスされました。

　最終的には、「イチカさんは頑張ってくれているし、期待しているから」と言う理由で、この基本の60分7,000円にプラスして、一本ごとに1,500円いただけるようになりました。確か当時は八時間出勤して一日平均三本前後、多くて五本くらいだったと記憶しています。

　朝八時に出勤して閉店の二十四時まで働く女性もいらっしゃいましたし、稼ごうと思えばかなりの額まで到達できそうです。

　個人的には、突然大きな額の報酬を手にするようになったので「金銭感覚が狂うのはこわいな。自分は18円のもやしで喜ぶ生活を続けよう」と早い段階で思いましたし、その思いを強くする出来事がありました。

　共同のロッカールームで他の女性と一緒にしばらく待機することになった時のこと、その方は長くこの業界におられる気さくな方でよく話し掛けてくださっていたのですが、その日突然、「神社とか行く人ですか？」と言われたんです。

　「いえ行かないですね」と答えると、その方は最近宝くじを当てたいと思っている、と。それで宝くじを当てる方法をネットで検索した結果、『神社にお参りすると当たる』と出てきたからこの間お参りしてきた、すでにその効果が表れているとのお話。「なんで分かったんですか？」と尋ねると、今日はロングコースのご指名が入ったし、延長もしてもらえたから、と言うのです。

　それはたまたまでは……というかまず宝くじを当てる方法をネットで検索するのも凄いし、出てきた結果を実行するのも凄い。

　そして「宝くじが当たるなら、億じゃないと意味が無いですよね！　昔年収2,000万稼いでたことあったんですけど、友だちに配ったりしてたらすぐ無くなっちゃって。だから五億当てたいんです」と言われ、五億当たった場合の使い方の内訳を細かく教えられました。

　年収の額も凄いけど、それの無くなり方よ……という、なかなかインパクトの強いお話で、自分はこうはならないようにしよう、と固く心に誓いました。

　ちなみに私は働きだしてすぐの頃、「思ったよりお金稼げるけど何に使うのが有意義だろう？」と考えた結果、脱毛サロンに通いました。少しでもお客様に還元できれば、と思ったんですね。デリケートゾーンを綺麗に無くしてパイパンにするのに何十万とかかりましたが、おかげでお客様に喜ばれることが多いので、良いお金の使い途だったなぁと思っています。