第3話 業界の洗礼
一度の不採用じゃあきらめられない! ということで、改めていろんな風俗店のホームページを見ていたら、ひとつ他と全然違うド派手なお店を見つけました。
プレイ中は女性がアイマスクをするのが普通。無料でコスチュームが選べるし、おもちゃも無料で使い放題。宣伝のノリがまるでパチンコ店のようで、あきらかに他のお店と一線を画していたので、「これはなんて面白そうなお店なんだ!!」と。興奮気味にすぐさま電話をかけ、面接を取り付けました。とにかく私はMなので、男性が女性を好き勝手攻めることができるというコンセプトを魅力に感じたんですね。
今度の面接はお店ではなく、お店そばの事務所(という名のマンションの一室)。マネージャーと称するまだ若そうな男性が面接官でした。今回も志望動機を訊かれて説明すると、「変わってるね〜」の一言。比較的ハードなお店なので、全くの業界未経験でやって来る女性はめずらしく、他で経験したあとに稼げそうだなと思って移って来る女性が大半らしいです。
一通り話したあと、どの程度のことができるか知りたいからフェラして欲しい、と言われました。
私は風俗店の面接でそういうことが起こり得るのは想定していたのですが、これが一般的と言う訳では決してありません。このお店では面接官によってやり方が違って、たまたまこの男性がそういうやり方を採用しただけだったらしく、こんな実技のようなものは一切無いお店が普通かと思います。私はその後の風俗嬢人生でいろんなお店での面接を経験しましたが、こんなことをさせられたのはこの時だけです。入店後の講習なども、実技は無く口頭のみで安心ですよ、というのを売りにして女性を集めるお店が多いくらいです。
私は「ここでフェラを躊躇するくらいならお客様にもできないぞ」と思いましたし、正直「この人にフェラしていいんだ!」というわくわく感がありました。これまで彼氏にしかしたことがなかったので「通用するのか?」という不安もありつつ、「彼氏と比べてこの方意外と小さいな」などと思いながら(失礼)、一生懸命やってみましたが、緊張で口の中がカラカラになっていてあまりうまくできませんでした。
それでも、「嫌々やってる感じとか、作業してる感じが全然無い。こういうのはお客様にも伝わるから喜ばれるよ!」と褒められました。実際嫌々やってなかったのでこちらとしては当たり前なんですけど、そういうのが強みになるんだ、と思ってホッとしました。
しかし問題はここからです。風俗店に行ったことないひとであれば素股というプレイはやったことも聞いたことも無いというのが普通かと思います。当時の私も全く聞いたことが無く。教えてあげると言われ、指示された通りに下を脱いでベッドに横になりました。
改めてご説明しますと、素股というのは疑似挿入のようなプレイです。正常位の場合、女性の性器に男性が自分の竿を当て、その上から女性が掌で覆って軽く圧迫し、男性が体を動かして擦ることで挿入と同じような快感が得られる、というやり方が一般的です。でも実はこれは間違ったやり方で、性器同士を合わせず、少しずらして女性の太ももの辺りで擦ると、性感染症の心配も無く安全にプレイすることができます。
そういったことを教えていただけたら何も問題は無かったんですけれども、その方はあろうことか素股をする振りをして挿れて来ました。「え、これ入ってますよね!? やめてください! お店では挿れないんですよね!?」と言いましたが「そう、実際にはやっちゃだめですよ」などと言いながらやめてくれず。結局達するまで解放してくれませんでした(さすがに外出しだった)。
「あんまりにもMだったから我慢できずにやっちゃった!」と笑って言われたのが印象深いです……。この業界に入ると決めた時に、怖い目に遭う可能性などもいろいろ考えたんですよ。でもお店の人からこんな軽い感じでやられてしまうとは……と思いましたし、彼氏にとても申し訳なかったです。
ただ、これは私の良くないところの一つなんですけど、こんなひどいことをされたとしても、人のことを憎んだり嫌ったりというのができない性分なんですね。優しいというのも違って、とにかく揉めるのが苦手なんです。なので事を終えたあとはまた普通に話してましたし、その後の日々の業務でも顔を合わせたら普通に挨拶してました。
ともあれ、そのあとはプロフィールを一緒に考えたり、ホームページに載せるための仮の写真を撮ったり、報酬の説明を受けたりしました。つまり無事に採用です(いや無事にではないか……)。
ちなみにそのマネージャーの彼はこういうことを繰り返していたらしいです。大分あとになって別のスタッフさんに話す機会があり、「何人かの女性から話を聞いている。昭和の悪習みたいなあるまじきことで、本当に申し訳なかった」と、代わりに謝られました。
最終的に彼は何人かのスタッフと女性を引き抜いて独立し、風俗店を立ち上げたものの経営がうまくいかず泣きついてきて、社内で「裏切り者」と呼ばれている、という話を聞きました。どこまでほんとか分かりませんし、今どうしているかは知りませんが、こういう人は変わってなさそうな気がします。
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