08
狭い四角い部屋と
『貉さん、
「今回もサポートありがとうございました。“
私の専任
「“箱嵜先輩”、保全戦闘お疲れさまです!」
「流々川さん…。“その呼び方”勘違いされるのでやめてくださいって前にも伝えましたよね?」
「ボクシーちゃん最近イケイケじゃん!そのデビューを支えた先輩として私も嬉しいよ…。ルルも見習いなよ?」
「リリーさんまた髪色変えたんですね。今回の色も似合っていて素敵です。」
「ボクシーちゃんありがとうー!ルルが褒めてくれないから似合ってないのかと思ってちょっと落ち込んでたのー!」
胸の辺りまで伸びた艶艶しいエメラルドグリーンの髪を揺らしながら近付いてくるその人。見た目がどれだけ変容しようと、底抜けに晴れたその声と人を引き寄せる瑠璃色の瞳は変わらず燦々と輝いている。
あれから保全戦闘を重ねた私のトレイス体の
それから更に数カ月後のこと。
私は会長室にいた。いつも隣にいる蜂浦さんの姿は無い。フロントやセンターホール等で会って話をすることは都度あったが、こうして会長室に呼ばれたのは初めてだった。いつにもない緊張感がこの部屋を支配する。
その支配権を奪うようを会長が口火を切る。
「箱嵜君。今日君を呼んだのは他でもありません。次の保全戦闘のことです。」
「“次”?今招集がかかっている訳では無いのですか?」
「情報源は言えませんが近日中にとある
あの日の記憶が色鮮やかに舞い戻り全身の痕跡索が震えて逆巻く。箱嵜貉ではなく天草四郎時貞の意思がそれを引き起こしていることは疑いようも無かった。
「前にも伝えましたが正暦保全者の役割は記録を護ること。死ぬ
沈黙を耳で噛み締める。それは迷いから生まれた行動ではなく、いつかこうなることを予見して痕跡索の中に埋めていた錆び付いた覚悟を奮い立たせる為。錆の取れた覚悟から放たれる鼓動が末端まで隈なく行き届きこの全身を揺らす。
断る理由など一つもなかった。伝える想いは唯一つ。
「箱嵜貉。その記録を護ってみせます。」
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