03
「だから言っただろ。一撃で仕留めろと。」
「あー、分かったから黙ってくれサルド。このバルドゥーヤ様が悪かったよ。」
「おいお前、女のくせに中々やるじゃん。その身体は見掛け倒しって訳じゃねぇみてぇだな。キレてねーけど殺すわ。殺す予定だったけど跡形もなく殺すわ。」
その触腕を使いながら身体を起すバルドゥーヤ。殺意を放つとそれに乗ってリリーさんへ触腕を放つ。しかし敵の攻撃は横に逸れ、放たれたその腕を赤い装具を着けた流々川さんの拳が受け止めていた。
「勘違いすんなー。お前の相手は俺だよタコ助。」
「言われなくてもお前も殺すつもりだったよデカブツ。」
夜を空気を激しく震わす撃ち合いの隣でもう一つの戦闘が始まっていた。バルドゥーヤを吹き飛ばした両の手に浮かぶ風の刃がイニサルドを容赦無く襲う。
土煙が晴れた先にあるはずの影が二つ、三つと割れ、最後には五人となってそこに立っていた。左手には長い鉤爪が装着されている。
この戦場へ響く乾いた一つの音。
「なるほどねー。今現れたフリして“D:C”はもう使ってたってことか。」
じわりと血が広がっていく左腕をだらんと垂らしてそう呟くリリーさん。肩から手へ向かって白い隊服がその色へと染められていく。肩を撃ち抜いた音の持ち主を見ると少女が一人、狙撃銃を構えてコンテナの後ろに隠れていた。その照準は間違いなくリリーさんに向けられている。
外の異変に気づいたのか倉庫にいたであろう少女達が外へ出てきた。目の前で行われている命の奪い合いに皆一様に逃げ出す。
「ごめんねー。一人借りるよ。」
その手から放られた手のひら程の大きさの円盤。それは少女の背に当たると吸い込まれるように消えた。
『
先程まで逃げようとして戦場に背を向けていた少女は踵を返しその手をリリーさんへ向けて呟く。
「リリー・クラスウト捕捉。治療完了まで20秒…。」
「取りあえずはこれで良しと。ヒナちゃん!あの子の対象をルルと一応ボクシーちゃんにも広げといて!」
『貴女がD:Cを放った時点で始めてたわ。』
そのやり取りからあの少女が一時的に私達の仲間になったことを察する。
「分身能力かぁー。その手に付けた自慢の鉤爪が届かないのを悟って対極の位置からの遠距離狙撃。やりづらいなー。」
「
イニサルドは冷笑を浮かべそれぞれの方向へ五つに増やした影を散らす。
「インテリヤクザっぽいのに随分攻撃的な物言いじゃん。やれるもんならやってみな…よっ!」
放たれた風の刃がその影を追って、冷えた夜中の空気を切り裂いた。
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