02
そのような話をしている間に目的地へと着く。
敷地は通りには面しているが、通りの側は高い塀があるのみで入り口らしきものは見受けられない。どうやら出入り口は一本入った一方通行の細い道に面してあるようだ。
これまではつらつとしていたリリーさんもその明るい声と気配を常闇に潜めて歩みを進める。入り口から中を覗くと30mほど奥にある倉庫とその中へ入っていく人影が目に入る。戸の隙間から微かな光が外へ漏れ出していた。
──っ!
流々川さんに勢いよく手を引かれてさっきまで見ていた敷地の中へと引っ張られる。
「お仕事ご苦労さま。会いたかったぜ愛しの
「バルド一撃で仕留めろと言っただろ。」
「おいおいサルド。そんなつまんねぇこと言うなよな。俺は壊変も好きだがそれ以上に
闇夜に増える声。先程までの私達がいた場所は大きく地面が抉られて陥没していた。時折点滅する街灯がその声を照らす。
流々川さんやリリーさんに引けを取らないほどの体格をしたアフリカ系の男性二人組。
私達を攻撃してきた“バルド”と呼ばれた男の背中からは、黒と黄色の蛸の足のような触手が伸びている。それと似たような編み込んだ髪を頭の上で束ねている。
その隣に立つ金髪で坊主の落ち着いた声色で話す“サルド”と呼ばれた男は誰かと話していた。恐らく向こうのオペレーターだろう。
『彼らが今回の
バルドゥーヤの方は攻撃力の高い触手を生やす
「
流々川さんがそういうと、私の身体は見えない何かに運ばれるかのように二人との距離を離していく。
「よーし、ルル!引き締めていこうか!」
「リリー、
『
リリーさんの頭上に小さな雨雲が現れる。
触手を生やした男がこちらを待たずに距離を詰め、リリーさん目掛けてその八本の腕を叩きつける。先程以上に大きく抉られた地面。しかしそこにリリーさんの姿は無かった。その直上数メートルのところに彼女はいた。宙に浮き攻撃してきた男を見下す。
「私タコ苦手なんだよね。ルルー、お願いー。」
「分かってる。」
その男が地面から浮き再度距離を詰めようとする。
──いや、焦っている様子を見ると自分の意志ではない?
腕を広げているリリーさんの両の手に風切り音が集まっていく。それを相手に向けると元いた出入り口まで吹き飛ばされていた。
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