04
「これは…ルリアンズのお二人…。お疲れさまです。」
「
聞き慣れない単語が飛び交う会話を四人の側で聞いていると、リリーと呼ばれた女性が再度声を向けてくる。
「この子“レコーディング”まだですよね?私達これから入るので良ければ一緒にどうですか?」
その声を聞き勢いよく顔を左右に振り青褪めていく流々川さん。
二人を交互に見た後に会長が口を開く。
「そうだね。いずれ教えようと思っていたことだ。それに君達二人なら安心だしね。」
流々川さんは肩を落としてその大きな体を縮めていた。
「そうと決まれば先を急ぎましょー!」
その明るい声と手に私は背を押され、流々川さんは手を引かれてフロントの奥へと進んでいった。
そんな私を呼び止める会長の声。
「箱嵜くん。最後に一つだけ。正暦保全者の役目は歴史を護ることだ変えることじゃない。記録の中、目の前で最愛の人が死んだとしてもそれを救って先の未来を変えてはいけない。その強さを持ち合わせているからここに来れたことは理解しているさ。
だけど万が一、間違いを犯したときは君を
それでは、と付け加え私達に背を向けて去っていった。
心にへばりついた澱みを払うようにリリーさんが口を開く。
「ところで君の名前は?」
「私は箱嵜。
「はこざき…じゃあボクシーちゃんね!
私は
「ほら、ここがセンターホール。私達の職場よ。」
『ターニング・ポイント1855.06.22、レコーダーコード7563541。レコーディング開始。』
『レコーダー一名ロスト!近縁性質者の応援お願いします!』
『レコーディング完了。リコーティング作業に入ります。』
『エングレイバーの壊変行動確認。ターニング・ポイントは──』
無数の声が重なり合う空間。
通されたそこはまるで水族館のようだった。
向こうの壁一面にはめ込まれた真四角の水槽。その中に一匹の魚がゆらりと泳いでいる。その殆どは埋まっていたが、ところどころ空の水槽があったり、水が青く変色している水槽もあった。
──っ!
視線の先、中の魚が泡となって消える。
水槽と対するこちら側には水槽側からひな壇状にデスクと椅子が無数に並び何処かと通信している。その椅子はオペレーターのような人がその殆どを埋めている。
「二人共、こちらへ。」
凛とした声がこちらを呼ぶ。二人とともに声の元へ向かうと8歳くらいの女の子がいた。相対するその人はその年齢に似つかわしく無い風格を漂わせている。
気を取り戻した流々川さんがその人に話しかける。
「
「ターニング・ポイントは2004.12.13、場所はロシア。エピソード名は“悪魔の1ダース”。34分後にレコーディング開始よ。それで…その子は何かしら?」
鷹島屋さんがこちらを冷たく一瞥する。
「彼は…」
「リリーが説明するね!この子は新人正暦保全者の箱嵜貉くんで愛称はボクシー!私達と一緒にレコーディング入ることになったの。ヒナちゃんが心配しなくてもとっくの昔に会長には許可済みだよー!」
腕で大きく丸を描くリリーさん。
呆れたような顔を浮かべ、手で先を行くように払われる。
この空間の側壁に沿うように置かれた卵型の装置。恐らく私がここまで乗ってきた
『コード確認。レコードボックス捕捉。ヘッドシェル発進します。』
卵は何処かへ向かって動き出した。
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