02
私の前に現れた二人に言われるがままその後を追い、少し歩いた先に置かれた卵型の箱に一緒に乗り込んだ。
微かな揺れのあとに音声が響く。
『グルーブ深度地下33層。“ヘッドシェル”発進します。』
その音声を合図に、あの澱みのような黒一色の窓に地上で見た街の姿が映る。街の景色に目をやる私に声がかけられる。
「それでは私の自己紹介から。私は
「会長秘書の
小さく頭を下げるその動きに合わせるように私も頭を下げる。
「自己紹介はいいのですが、先程の“はこざきむじな”というのは一体?」
会長は小さく笑ってから私の問いに答える。
「そうだったね。でもそれより先にこの世界の理から教えたほうが早い。この世界の名は
そしてここからが本題。
私達
しかしそれを壊そうとする敵対勢力がある。それが記録の壊変行為を行う
そんな彼等に対抗するために、我々は
突きつけられた一つの真実。その“とある能力”に心当たりはあった。ある日猪に襲われ腕に大きな怪我をした母上を前に嘆いていると、その涙が落ちる間もなく忽ちその傷は癒え何事もなかったかのような元の綺麗な腕に戻ったことがあった。
私は覚えていなかったが歩き始めたばかりの頃に海の上を歩いていたと両親が言っていた。それらは神の加護か奇跡かと思い込んでいたが今の話で合点がいった。
会長は私の表情を確認して話を続ける。
「そう。現世でその能力を発動できるかどうかが正暦保全者としての資質を図る基準の一つとなっている。
そうして選ばれた人間は死後、
命尽きたのがどの時代であっても、澱みの中を流れている間に価値観や言語、知識などを記録した痕跡索が君の中に入ってそれらを作り変えているから、ここに来たときにはある程度の価値観の共有は出来るようになっているんだ。
そしてその中で身体も作り変えられる。つまり今の君は天草四郎であって天草四郎では無い。意識の根幹こそそこにあるかも知れないけど君は
会長の話が終わり私は窓の外を再び眺めていた。白一色の建物が前から後ろへ次々と流れていく。確かに地下に潜ったはずですが地下都市…。
「これは地下都市でしょうか?とでも言いたげな顔だな。」
聞き覚えのない音がすぐ前から聞こえた。
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