16:水の

 後ろは真っ暗だ。街灯がついていないトンネルのようで、街並みも見えない。


 ――これは一体……


 転がったどんぐりは闇の中に吸い込まれて消えた。乾いた音が暗いその先に行くなり途絶えてしまうのを聞くと、追いかけるのはやめておいた方がよさそうだと判断する。


 ――なるほど、坂をくだるのは悪手だな。


 僕はどんぐりを拾わずにふたたび坂の上に身体を向ける。

 そのタイミングで、背後から水の音が聞こえた。ぽちゃんという、ちょうどどんぐりが池に落ちたような音。

 どういうことなのか確認するために、僕はポケットから一粒のどんぐりを取り出して、そっと地面に落とす。

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