13:うろこ雲

 この場所が一番低い位置であり、前進するのであれば先は上りである。妙なことを言うものだと彼の言葉を反芻しながら僕は歩みを進める。

 薄暗い坂道を上っていく。緩やかな斜面は急激な疲労を伴わずとも、軽く息は上がっていく。一歩進むごとに周囲が明るくなった。

 まるで夜明けのようだ。僕は振り返ることはしないで道なりに進んだ。

 解像度が上がったみたいに明るさとともに情報量が増す。気づけば郊外にある住宅街の中を歩いていた。

 顔を上げればうろこ雲。ひんやりとした空気にも秋の気配が漂う。この時間なら新聞配達の人に会いそうだが、人間の姿はなかった。

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