8:金木犀

 地面ばかり見ていた視線をゆっくりと上げると、オレンジ色の小さな花弁が房のようになっているのが目に入る。正確には枝にびっしりくっついているのだけれど、これは見事な金木犀だ。花開いてから風雨に晒されることがなかったのだろう、散ったものもなく香りが強い。

 こんなに暗いのによく見えるのは、この木が仄かに光っているかららしかった。どうも普通の金木犀ではないようだ。


 ――なるほど、どんぐりはここまでの道しるべか。


 足下に連なるように転がっていたどんぐりは、もう視界になかった。無視して先に進んでもいいが、僕はとりあえずこの木を調べることにする。

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