6:どんぐり

 とても静かだ。さっきまでいた屋上とは違って風もなく、ひんやりとした空気が身にしみる。


 ――さすがに部屋着は冷えるな……


 靴下だけで靴をはいていないのだから、なおさら寒い。くしゃみが出そうになって慌てて口と鼻を手でふさぐ。かろうじて大きな音を立てずに済んだ。

 ほっと胸を撫で下ろして足の位置を変えると激痛が走る。声にならない悲鳴を上げ涙目になりながら足の下に転がっていたものを摘まみ上げる。それは可愛らしい帽子をつけたどんぐりだった。

 よく見ると、どんぐりは不自然な形で地面に落ちている。まるで僕を導くように。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る