4:紙飛行機

 ほぼ真後ろに何者かがいる。握りしめたままの鍵をもう一度使ってみようか。唾を飲み込もうとしたが、口の中はカラカラに乾いていた。


 なるほど、コイツに突き落とされたから地面が真っ赤なのだな。


 不意に理解して、僕は真後ろのナニカが動くのを待つ。まだ動かない。

 ひときわ強い風が地面側から吹き上がり、僕はそのタイミングで横に大きく転がった。

 背後にいた者の姿を確認する。かぼちゃ頭のナニカがそこにいた。


「ちっ!」


 ナニカはこちらを向く。狙っているのが明白で、僕は瞬時に立ち上がる。逃げなければ。

 走り出すとナニカが追ってきた。

 逃げ場所なんてこの屋上にはない。僕がナニカを突き落とすか突き落とされるかしないと延々と鬼ごっこをすることになる。

 やばいやばいやばい。

 迫ってくる気配。わずかに振り向くと、紙飛行機がナニカと僕の間を抜けていくのが目に入った。


 ほかに誰もいないはずなのに、どうして紙飛行機が?

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