Out oF HitonoiD.・Injection:test version
一黙噛鯣
Setting specifications
External Remote combat soldier Tactical System.
【E.R.C.S.T.S】と略されるシステムは台椀朧蝋月の國の主力戦時戦略兵機である。
元々はある亡命家科学研修者が発明し【E.R.H.B.M.T】と名付けた医療技術の
発展形であり正当進化させた物である。たとえそれが強引であり倫理感を
一切無視したものであっても。
混乱を避けるために【C.S.T.S】と【H.B.M.T】区別して称するのが研究者の間
での決まりごとでもある。
最も両者において基幹部分構想は同じ若しくは制御方法はほとんど同じであっても
実際の稼働には大きな仕様の相違が或る
。其の為高度な制御技術と知識が必要と成る。
「贄さん・・・。眼を開けて」武茂智偉ムモ・ヂーウエイは手に持つ糸針器を
握締め口にする。
「はい・・・。」贄と呼ばれた病院服に身を包む女性被験素体は眼を開ける。
最も旨く言ったのは右目だけで左の瞼はピクピクと動き途中で止まる。
「旨くいかないかな?一度閉じて・・・どんな感じ?」智偉は出来るだけ丁寧に
優しげに問いかける。
「非常に不愉快です。」言われた通りに両瞼を閉じるが頬も強ばる。
「そっかぁ~~~。困ったなぁ~~~」
鵺が答えた言葉の意味が単純に気分が悪いのか。外部から強制的に自分の体を
制御される違和感から来るのか智偉にはわからない。
若しくは鵺の担当医療技師が智偉で或る事に不満が或るのかも知れない。
恐らくその全部だろう。
「今日は個々までにしておこう。楽にしていいよ。鵺さん」
「はい。有難う御座います」冷たい声が変える。
プツンと背筋に刺された粘着性の糸針液が溶けて消え体に血の気が戻り乙女と
して相当の胸が膨らみ肺に空気が入ってくると鵺は安堵の表情を浮かべる。
操体状態であるとどうしても違和感が残る。
それが解除されれば楽には成るが今度は体のほとんどは自分で動かせなくなる。
自分の後ろに機人の無機質な気配が近寄ってくると強めに車輪椅子が
押され動き出す。
すれ違いざま機体卓の上に手を付いてガクリと肩を堕とす智偉に声をかけるか
どうか悩むものの機人は決められた速度で車輪椅子を淡々と押していく。
鵺贄。短いし印を踏む名前を贄は嫌いでではない。
ずっとそう呼ばれてきた自分の名で有る。
事故に合うまでは健全な女学生だった。それが今ではこの状態である。
欲も悪くも命だけは取り留めた。運欲も最新の医療技術を受ける事も出来ている。
但し。それは完璧ではありえない。事故で体のほとんどを損傷した結果
生体義肢へと換装を必要とした贄の体は何処までが親から貰った体なのか
何処からが生体義肢なのか自分ではわからない。
解っているのは【H.B.M.T】に繋がれて無ければ体をほとんど自分では
動かせないという事だ。
自分自身で動かせるのは首から上だけそこから下は感覚さえも殆どない。
逆に【H.B.M.T】に繋がれるとある程度の動作はできるように成る。
但し。それは自分の意志でではない。外部からの口頭指示により生体義肢が
動作する。
自分の意志ではないが命令された事を忠実になぞり生体義肢が行動を起こす。
手を失ってから初めて自分でコップを持ち甘いジュースを飲めた時には本当に
感動した。
勿論。生体義肢を操るパイロットの技術に大きく作用される。
【H.B.M.T】は生体・及び生体義肢に特殊な神経伝達液を使う技術である。
パイロットが所持する糸針器と言う細い道具の先端から発射される粘液性の
ある液体を義肢装着者の背筋に接続し生体義肢を制御・動作させる技術で有る。
糸針器と背筋を繋ぐ粘着性の薬液が糸の様に細く煌めき美しいが義肢装着者に
取っては一種の命綱でもあり。それが切れば自分に意志では体を動かせない。
糸が繋がれば体は動かせるがそれはパイロットの指示であり自分の意志ではない。
操り人形と同じであり【H.B.M.T】のその技術は諸刃の剣その物である。
自分で体を満足に動かせなかれば出来ることは少ない。
眼を開けて病室の中を見渡し緊急対応待機の機人としりとりをするか。
大抵の場合。否。むしろ一度も勝った事はないが。
眼を閉じて眠り夢の中で体が動く世界を夢想するか。
どちらにしても刺激はない日々がずっと続く。
鵺が浅く寝息を立てる専用病室。
瞼がピクピクと軽く痙攣するのは夢を見ている証拠だろう。
緊急時に患者の身を守るのが看護機人の役目だ。
機械的でツルリとした顔に光る青い眼から光が消える。完全に機能停止状態隣る。
シュッと音がして病室のドアが開く。すぐに人影が滑り込みドアが閉まる。
漢は壁のドアコントローラーのボタンを押しルームロックを掛ける。
これで病室の中の監視システムが停止し一切の記録が残らない。
漢はこの施設のシステムを良く知ってるのだろう。
室内灯の僅かな光を頼りに寝台に近寄り浅く眠る鵺の体ににじりよる。
静かに漢の手が鵺の胸元の毛布を捲る。
呼吸が少し早いのはやはり夢見が悪いだのだろうか。
薄く黒いゴムの手袋を嵌めた漢の手が伸び病院着の隙間に滑り込む。
十分にその感触を楽しんだ癖につまらなくなったのか指で少女の鎖骨をなぞり
形良い首にそってうごかし顎にそれがたどり着くとくいっと力を込め横へ押しやる。
押され傾いた顔と反対に見える背筋。正確には脊髄神経が或る所。
其の場所にポケットから取り出した六芒星のを模した形の円盤を押し付ける。
(上手くいくかな?いってくれると良いが)漢が心の中で願うまでもなく
六芒星器は青く点滅し正常だと示す。
示された結果に一つ顎を落とし漢は専用の糸針器を取り出し六芒星器に向けて
糸針を飛ばす。
ひゅっと音を立て糸針が煌めき六芒星器にツンと刺さる。
「くはっ」鋭い痛みが背筋に疾走ると鵺がはっと眼を開ける。
「声を控えたま。暴れたり。僕を拒絶しないように。良いかね?」
何処かで聞いた声で或るが記憶が薄い。しかも漢の声に機械音が交じる。
ボイスチェンジを掛けてるのだろう。
「申し訳ないが互いの為に視力制限をさせて貰う。顔を見られるのは困るんだ。
最も君にも其の方が良いだろう。
全部見えなくなるわけではないが視界がぼやける程度で・・・良いかね?」
何をされるかわからない恐怖があるが背筋に伝わるのは明らかに
【H.B.M.T】に繋がれている感覚だ。
パイロットの指示に体が反応する。
「はい。分かりました・・・」
勿論。これさえも自分の意志ではない。
それでも受け入れるしかないのはいたしかたないだろう。
「話しやすいようにしよう。君には効く権利があるしな。
同時に果たす義務もある。起き上ってベットの縁に座ってくれ。鵺」
「はい・・・」短く答え起き上がりするりと脚を揃えて言われた通りに漢と
向き合う。
驚くべき事にあまりにもその動作が軽やかで素早く女らしさも見て取れる。
鵺は言葉喋れずともその動きに感嘆する。
「驚いたかい?今ままと違うだろう?触感感覚も少し開放しよう。
刺激が強いかもしれないが」
言葉通りの強い刺激が体を襲う。ゾクリと背筋に悪寒が疾走り肌に冷たさが
感じられる。
「ふむ。いきなり過ぎたかな?・・・これでどうかな?」
「有難う御座います。良くなりました」すっと体が軽くなり寒さが消える。
意外と室温が寒いのかも知れない。
しかし。こんなにも自分の生体義肢が敏感であり尚且性能の良いものだとは
思わなかった。
今の今日まであの若い義肢が自分の体を操ってもこんなに旨く言ったことはない。
食事くらいは出来るがその動作も感覚も今この時と違いすぎる。
視界がぼやけていても眼の前に立つ漢の気配も伝わり癖のあるコロンの香りも
鼻腔を擽る。
「H.B.M.Tを独自改変したシステムなんだ。H.B.M.TとC.S.T.Sを融合させた感じで
その中間とH.B.M.T.ncと僕は呼んでいる。
鵺カスタム。少々、安易かも知れないけど」
鵺は驚く。自分の体がそれで動いているとしても深い知識はないと言える。
H.B.M.T一つとってもシステムに合せて生体義肢を調整するのであって
生体義肢装着者のそれにわせてシステム自体を調整・変更するなんて
一個人で出来る事などありえない。
(この人。私の義肢に合せてシステムを改変したと言うの?もしそうなら何の為に?
見返りがあるならそれは何?何をされるの?そもそも・・・)
動けない体でも頭の中に浮かぶ思考と不安はかき消せない。
「H.B.M.T.ncの画期的な所は言語命令に必ずしも依存しないと言うのが大きい。
もっともそれも擬似的な物でもある。試してみよう。断ってご覧」
漢の指示に沿って体が動く。勢いよく少女らしくなめらかに義肢が動く。
「さて実験を始めよう。今君はH.B.M.T.ncに繋がれている状態だ。
端的に言えばH.B.M.Tと同じ様に操体されていると考えれば良い。
つまり自分では一切体を動かせないそれでも従来の形式では弊害もある。
だがしかしH.B.M.T.ncは似て非なる物でもある
良好な結果を得るために言語調整を緩くしておこう。
さて・・・なにが浮かぶかな・・・?」
其の言葉に鵺は戸惑う。
鵺の背筋からプツンと糸針が抜かれて消える。
もの言わず黑い手袋の指が首筋から六芒星の部品と外すと寝台の上に
転がる鵺を一瞥し静かに病室を出ていく。
「なんか昨夜は大変だったみたいただけど?大丈夫。鵺さん」
「あっ。はい。ちょっと夢見が悪くって・・・義肢の調子が・・・」
狭い研究所であり試験者に何かあったら大変だとでも言うのだろう。噂は早い。
昨夜の事・・・。言うまでもなく正体不明の黒い手袋の男に
【H.B.M.T】繋がれ羞恥に塗れた贄である。
機能不全から復帰した看護機人が寝台の上に横たわる贄の異常姿勢を
認識し警報を鳴らし
慌てた職員が何とか対応する。贄にとっては幸いなことに病室の記録カメラも
故障し詳しい状況は不明のまま
義肢の体内から液漏れが見つかったものの義肢機能には影響がなく鵺
のプライバシーを配慮して本来担当パイロットの智偉ではなく女性職員が
サポートを行い大事にも至らない。
結果智偉にも詳細は伏せられている。
「えっと・・・今日は鵺さんの為に【B.O.H.B.M.T】を要して置いたんだ。
使い勝手は劣るけど行動の幅はぐんと広がる。早速試してみよう。
概要はそのタブレットのシートに眼を通してね」
物腰柔らかく智偉に接する
「はい。態々すみません。有難う」贄も体裁をきにしてちゃんと応える。
コツコツと金属の足音を鳴らし鵺の前に機人が回り込むと贄に見えるように
ダブレットを掲げる
【B.O.H.B.M.T】は【H.B.M.T】の派生型であり
もう少し素人にもわかりやすくと言うかあまりに似すぎていると思うが
自分が一生使うかも知れないと考えれば最初にじっくりと読み込んで
置くべきだろう。
普段、贄が使っているシステムはその義肢を動かすために第三パイロットが
所持する糸針器に接続される。
糸針器を持つパイロットが直接糸針器を操作するか口頭の指示を発すれば
それに従って義肢装着者の体が動く。
【E.R.C.S.T.S】の目指すところは生体義肢を装着者自身の意志で全て動かす事で
あるが現在では無理である。
【B.O.H.B.M.T】パイロットの役割と専用にカスタマイズし糸針器と擬態
のコントール機能を持たせ義肢装着者自身が機人に指示を出し機人が装着者の
義肢を動かす。
このシステムは一見装着者に効果が或るかの様に見えるが機人が
システムを操作する異常その限界値は低い。
一般的で極。簡単な動作しか機人は義肢を制御する事は出来ないでいる。
確かに【B.O.H.B.M.T】は装着者の活動を拡張するが同時にパイロットによる
制御が、或る意味行き詰まりに成っているとも示している。
「あら。鼡彙(そい)君。こんな所で何してるの?色々手伝ってくれる人は
みつかったの?」
研究所の一角。それほど大きく無いスペースではあるが木々が植えられ天井から
自然光が柔らかく落ちてくる。
一種のプライベートエリアと設定されパークと呼ばれるエリアには研究職員達は
脚を踏みれない。
生体義肢被験者達の安らぎの場所と成っている。
併設されている無人カフェではなく少し離れたベンチで贄は顔なじみの少年を
見つけて声を掛ける。
「イケメンの僕の童貞を色々してくてる巨乳のお姉さんは今日も居ないのだ!
贄姉さん」
「くすくす。鼡彙は少し露骨すぎるのよ。T1。座らせてくれるかしら?」
T1と呼ばれた機人の眼が光り糸針との先に繋がる鵺の義肢を操作する。
いつかの黑指の漢が操作した時は遥かにぎこちない動きではあるが贄は御姉さん
らしく背筋を伸ばして鼡彙の隣に座る。
「機人にさ。義肢を操作されるのってきもちわるよね?贄お姉さん。何カップ?」
「云々。声に出して指示出来るのは良いけど。どうしても送れが出るし感覚が
ザワザワするのよね。Dカップよ」
本当はEで或るが恥ずかしいので嘘を付く贄。
「そうなんだよなぁ~~。Dかぁ~~~。お手頃サイズのDだね!
ねぇ~~。【H.B.M.T】のカスタイムタイプって知ってる?」
「カスタム?・・・・そんなの或るの?」多い当たる節もある。
確かに黑指の漢が贄を繋いだのがNCの枝番号を持っていた。
まだ子供の癖にませているのだろう。背伸びしたい年頃でもある。
自分の機人に命令し義肢を操作して片足をベンチの上にあげ悪ぶったふりをして
話す
「最近噂に成ってるらしくてさ。最近変なことも多いじゃん。
其の中でシステムを義肢装着者の状態に合せてシステム自体を改変した
ものらしくてさ。義肢の受体感覚とかすごく敏感になったりしてさ。
なによりオペレータの言葉が全然聞こえなくてね。
まるで自分の心に浮かんで来る気持ちみたいなんだってさ」
「え?それって実際にはオペレータが命令してるけどそれが自分の意志と
思えるって事?」
「云々。多分そんな感じじゃないかな?珈琲が呑みたいって思っても
実はオペレータが呑みなさいって命令してる感じっぽい。
但しその珈琲はすごく美味しい。みたいな?」
「そんなのが或るって言うのはしんじられないわ」
自分自身で確かに経験している物の。にわかには信じられない。
鼡彙の言うことが正しければ鵺自身が心に感じ欲しいと思った事が全て黑
指の漢が糸針器を操作して自分の欲求だと思い込ませた事になる。
これは一種の搾取でもある。
「まっ。噂でしかないんけどさ。そんな高度なシステムあったら騒ぎに
なってるしね。
鵺姉さん。今度僕のオナニー手伝ってね。約束があるから。じゃねぇ~~~」
「あっ。云々。がんばってね」鼡彙の衝撃の発言に気を取られ上の空で返事を
贄は返す。
「贄姉さん。Dカップかぁ~~~。お手頃だよなぁ~~~
もうちょっとおっきいかと思ったけど」
ピタピタと生体義肢の裸足で廊下の冷たさを感じながら腕組みしながら歩く鼡彙が
奥面もなく童貞で或ると言いふらし大人の情事に拘るのは理由がある。
僅か10才で厄災に会い実に手足を初め体の7割近くを生体擬態に換装している。
自分が生身と自覚出来る箇所は少なくそれが下腹であれば当然それが生きている
実感を味わえる物と知っているからである。
「早すぎるんじゃないの?贄さんに【B.O.H.B.M.T】を使って貰うの」
担当する患者は違うものの同じくパイロットを務める恵君が智偉に詰め寄る
「そんな事はないよ。適切な判断だよ」嫌な話題に振れられ顔が曇る
「【B.O.H.B.M.T】へ切り替えるって事はこれ以上、
義肢との浸透度が上げられない。
つまりは生活の範囲を限定し健常には戻れないって言う宣告なのよ?」
「解ってるが。旨く行かないんだ。僕だって必死さ。大体自分で糸針器を
持てないん患者なんだよ?
それを第三者が補助するって言うのが可怪しいだろ?」
言い訳であるとも自分でも知る。
「確かに糸針器を自分自身で持てなくて自分で義肢を操作できない患者の数
は多くはないわ
だからって早々に諦めるのは職務怠慢よ。それに対処法がない理由じゃないでしょう
統括AIに委ねるっていう事も出来るのよ?」白熱する議論の中で恵君が告げる。
「統括AI制御移譲型E.R.H.B.M.T。【Paranoid】
人の意志と心を持たない人工頭脳に義肢の制御を譲渡する。名前が嫌いだ。
大嫌いなんだ。希薄な意識は維持出来ても自らを人形化するなんて僕は認めない。
「仕事を投げ出して鵺さんにB.O.H.B.M.T押しつけた癖に。そんな事言えるの?」
「うぐ・・・」
「私の勝ちね。ランチの支払い宜しく・・・・それから今日は私が上よ」
辛辣な意見交換の最後に恵君が告げる。勿論二人は交際している。
恵君はプロポーズされるのを強く望んでおり智偉は未だ早いと思い悩んでもいる。
Out oF HitonoiD.・Injection:test version 一黙噛鯣 @tenkyou-hinato
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