三日目

「おい、真司」


「うん?」


「おお、今日は1回目でちゃんと反応してくれた」


「別に普通だろ?」


「いや、真司って最近ボーっとしてること多いなって思ってね。エロ動画の見過ぎか?むっつりすけべさん」


「いや、クラス女子のバストサイズを全部把握しているお前に言われたくねーよ」


 と、まあ、本当にどうでもいいよもやま話に花を咲かせていると、神崎瀬奈が、女子たちと話している所が見えた。色めき立つ彼女らはいかにもリアルに充実しているように思える。


「ね、真司。やっぱり神崎さんの胸でけーよね?」


「まあ、そうだな」


「あれは確実にFカップだ。もし間違えたら俺のエロコレクションの一部を譲ってやろう」


「んなのいらんつーの」


 実はちょっとばかし興味あるが、今はそれどころじゃない。


 おのれ神崎瀬奈。その笑顔の向こうには、自分の父の権力を笠に着て相手を意のままに操ろうとする腹黒さが隠されていることだろう。


 今日という今日は誰になんと言われようとも、空き教室の秘密にスポットライトを当ててやろうではないか。


 そう固く決心した俺は、今日も今日とて夜まで残ってハゲタカの仕事を手伝っている。


「先生、任された書類の整理、終わりました」


「ああ、サンキュな。ちょっと休んでもいいよ。書類またいっぱいやるから」


「…」


 こいつ完全に俺が助ける事前提で仕事しやがるな。にしても先生って意外と仕事多いな。いや、これはただ単にこのハゲタカの要領が悪いからだろうな。


 俺はすっと立ち上がり、職員室を出る。


 よし!今日こそ!


 あっという間に三階の空き教室に着いた俺は、また耳をそばだてた。


「あ、あん!はあ!こ、こら!は、激しい!」


「こ、こんなの初めて…あ!あん!」


 やっぱりいたか。しかも今度は二人のエッチな声が同時に聞こえる。間違いなく水島あかりと神崎瀬奈のものなのだろう。


 今日は何があってもこのドアを開けて見せる!目力を込めた俺は、目の前にある戸を思いっきり開けた。


 するとそこには、俺の予想通り、二人の美少女が乱れた格好でエッチな表情をしている。


 そして…


「こ、このでっかい魚はなんなの!?」


 か弱い二人の美少女は巨大な魚一匹と乱闘をしていた。


「はん!こ、こら!大人しくしなさい!」


 活きのいい巨大な魚は二人から逃れようと一生懸命暴れている。ピストン音の正体はお前だったのか……


「あかり、ちょっと抑えつけて。返り血を浴びないようにね」


「う、うん!」


 神崎瀬奈はでかい包丁で魚の首を思いっきり突き刺す。すると、ものすごい血が出てきた。


「離れて!」


「う、うん!」


 俺は美少女が巨大な魚を解体するという物々しい光景を見て、腰が抜けてしまった。


「はあ、また魚の血がついちゃったよ。なんでいつも股間に飛び散るの?気持ち悪いんだけど」

 

 水島あかりは顔を顰めてそう言いながら、俺に近づいてきた。そして、俺の横にあるスイッチを押した。すると、あっという間に明るくなり、周りには寿司屋を彷彿とさせる設備が備わっていた。


 突然、魚を捌き切った神崎瀬奈が俺に話しかけてきた。


「藤本くんって寿司食べれるよね?」


「え?す、寿司?」


 水島あかりと神崎瀬奈は俺のために寿司を握ってくれた。


「お、美味しい……」


「ここで見たことは絶対他人に言うなよ」


 ギャル子・水島あかりが俺を睨みながら警告する。


「あ、ああ。でも、なんで君たちはここで大きいな魚を素手で抑えたり寿司作ったりするの?」


 俺の問いに、神崎瀬奈は妖艶な表情を浮かべ口を開く。


「それは秘密」


 やっぱり言ってくれないのか……


 にしても、相変わらずイカ臭いね。この二人。


「でも、魚の匂いって、色々そそられるよね?ふふ」


 神崎瀬奈は俺に蠱惑的な視線を送った。


「え?」


「あかりも手伝ってちょうだい」

 

「わ、わかった……」


 急に水島あかりは顔を赤くしてうつむきつつも俺に近寄ってくる。


「お、おいちょっと!?」


 その瞬間、友達との会話が走馬灯のように脳裏をよぎった。


『その光景を目にした男はみんな例外なくテクノブレイクで死ぬとかなんとか……』


「青山くん」


「青山」


 二人の美少女はなんの躊躇ためらいもなく、彼を押し倒した。






 この出来事以来、青山真司の姿を目撃したものは一人もいなかった。


 






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夜の空き教室からいやらしい音と声が聞こえるんだが…… なるとし @narutoshi

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