二日目

「おい真司」


「…」


「おいー真司。聞こえてるでしょ?」


「…」


「セックス」


「何言ってるんだこら」


「ほお、いかがわしいキーワードには早速食いつくんだな。変態さんめ」


「セックスって口に出していうやつに言われたくねーよ」


 まあ、確かに今日はいつもと違って、うつつを抜かしたのは事実だ。


 昨日の夜、三階にある空き教室から女の子の喘ぎ声とエッチな音が聞こえた。さらに、その教室に入ろうとした俺を止めたのは、今俺の席から二つ離れたところで、友達とだべっている水島あかり。


 典型的なギャル子である。スカートは短めで金髪。制服は着崩しているため、一発でギャルであることがわかる。


 昨日の水島あかりは、全身が濡れていて、なおかつ、股間から出た血は太ももを伝って流れていた。

 

 一体あれはなんだったんだろう。もちろん水島あかりに事の顛末てんまつを聞こうとしたんだけど、見事スルーされっぱなしだった。


 おかげで今日は授業どころではなかった。


 ちくしょ!めっちゃ気になる。今日こそ秘密を暴いてやる!


 そう決意した俺はまた夜まで学校に残ることにした。



放課後



「え?もっと仕事がしたい?お前どっかで頭でも打ったんじゃね?」


「い、いや、ほら。高校卒業して大学も卒業したら、所詮ブラック企業で搾り取られる運命でしょ?その予行演習的なやつですよ」


「お前、高校生の癖に夢と希望がかけらもねーだろ。いつもは俺の仕事手伝うのすんげ嫌ってたじゃないかい」


 嫌ってるの知っててわざと自分の仕事押し付けてきやがったのか。こいつダメだわ。

 

 ぜろ頭皮、はじけろ頭髪、パニッシュメント・ディス・ヘア!と、心の中で呪文をとなえる俺であった。マジで禿げろよ博隆先生。


「まあ、ちょうどいいや。最近書類作業が多いから」


 というわけで、校則が厳しい我が校であるにも関わらず、俺は夜まで学校に残って作業を続けた。


 ふむ。そろそろだな。


「先生、俺アナコンダ」


「お前、今晩御飯食ってるのに、んな汚いこというなよ」


「いや、うんちって言ったら余計食欲なくなるでしょ?うんちですよ。


「トイレに行きたいといえ!このバーカが!」


「へいへい」


 ボロクソ言われながら俺は職員室を後にする。


 俺はウサインボルト顔負けの速さで3階の空き教室へと向かう。もちろん音を立ててはなるまい。警備の人に見つかっちまうから。


 空き教室に到着した俺は、密かに精神を研ぎ澄ました。


 すると


「あん!は、激しい!す、すっごい!」


 またかよ!


「うっ、こら!調子に乗んなっああああああっ!」


 なんというエッチな声!それに激しいピストン音。こ、これはそそられますな。


 ん、なんだかこの喘ぎ声……聞き覚えがあるけど。


「まさか、この声の主は水島あかり!?」


 何をやっているのかは、このドアを開ければすぐわかる。


 今日こそ、見てやる!


 と、ものすごい勢いでドアを開けようとしたその瞬間……


「青山くん!!!!!」


「か、神崎さん!?」


 目の前にはこの学校の理事長の娘であるクラスメイト・神崎瀬奈が俺の名前を叫んでいた。


「あの扉を開けちゃだめ!」


「またかい……」


 昨日の水島あかりと同じく、俺がこの空き教室に入ることを極力阻止そししている。


 この扉を開けさえすれば全てが解明される。だが、俺は身動きが取れなかった。なぜかというと神崎瀬奈の姿がすんげエロいから。


 全身がベトベトしていて、髪も乱れている。何より衝撃的なのは、昨日と同じく股間から血が出て太ももを伝って流れてるところ。足と足の間になんかの液体が系を引いているし、昨日の水島あかりよりエロくないですか?巨乳だから余計いろんなところが強調されるんですけど?本当に、本当に、ありがとうございます。


 俺はこの光景を素早く脳内にオカズ2245号として保存し、口を開く。


「神崎さんどうしたんだ?身体中がベトベトしていて、髪も乱れているし、透明な液体が糸を引いている。それに、すんげイカくさい」


「ちょ!言わないでよ!恥ずかしい……」


 神崎瀬奈は身を捩りながら、顔をうつむかせている。一体この子らは何をやっていたのだろう。


 と、思いを巡らしながら空き教室を見てみると、なんと!


「なんの音も聞こえない!?」


 シーンと静まり変える教室に違和感を感じた俺の手は震え出した。動揺している俺を察知した神崎瀬奈は口を開く。


「お願いだから帰っほしい……ここは危険だから」


 危険か……そういえば、昨日の水島あかりも同じことを言ったんだな。でも、このまま大人しく帰るのはやっぱりできない。


「なんで危険なのか教えてくれたら帰る」


 俺は緊張した面持ちでそう問うたけど、神崎瀬奈の表情を見るに、譲る気はないらしい。


「教えることはできないの。もし、帰らなかったら、お父さんに言いつけちゃうよ」


「い、いやそれは卑怯ひきょうだぞ!」


「帰ってちょうだい」


「は、はい……」


 俺は職員室に戻らざるを得なかった。だって、神崎瀬奈の目が本気と書いてマジだったから。


 ちくしょ!あの優しい神崎瀬奈が権力を振りかざして隠蔽いんぺいしようだなんて……

 

 清純派巨乳美少女として俺のオカズNo.1に君臨している彼女だが、今日からお前は単なる腹黒クソビッチだ。


 落ち込んだまま俺は未来のハゲタカのいる所に戻った。


「おい真司、遅すぎるじゃねーか。学校はお前がウンチするために存在しているわけではないぞ。はよ仕事手伝え」


「へいへい」


 必ずあの空き教室の秘密を暴いてやる。

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