夜の空き教室からいやらしい音と声が聞こえるんだが……

なるとし

一日目

「な、真司」


「うん?」


「夜になると、いつも3階にある空き教室でエッチな声と音が聞こえるって噂知ってるん?」


「んなもん興味ねーつーの」


「そんなこと言わずによ。とにかくめっちゃエロくてその光景を目にした男はみんな例外なくテクノブレイクで死ぬとかなんとか……」


「いや、見ただけで死ぬとか、都市伝説なんかより信憑性に欠けるぞ」


 俺は冷静な表情でそう言ったが、第三足はどうやら違うらしい。鎮まれ!my son!


 よし!今日学校終わったら、3階の空き教室をチェックしてみよう。


「まあ、でも、うちの学校って校則めっちゃ厳しいから、生徒が夜、学校に残ることは不可能なんだけどな」


「まあ、そうだな」


 そう。我が校は校則が厳しい。だが、俺は夜なのに今、学校に残っているのだ。


「真司、この資料も片付けてくれ」


「は、はい」


 おのれ博隆、担任のくせに生徒に自分の仕事押し付けんなよ。タダで働かせるなんて、ブラック企業だって給料は払ってくれるぞ?


 いつもこんな感じでこき使われてきたのだが、今日はそんなに悪い気はしない。なぜなら、3階の空き教室から聞こえるエッチな音と声が本当かどうか確認できるから。


「よっこらしょっと!おい真司!これもな」


 あのやろう……可及的速やかに博隆がハゲタカになることを切に願う。


「先生、ちょっとトイレ行ってきますね」


「あ、ああ。いいぞ。でもどっかほっつき歩くんじゃねーぞ」


「巨大なアナコンダを出す予定なんでちょっと遅れるかもです」


「アナコンダか……そんなもん昼休みん時に出しときなよ」


「いや、だって恥ずかしいし」


「先生に向かってアナコンダがああだこうだ言ってるのに昼休みん時にうんちするのは恥ずかしいのか。まあいい。手はちゃんと洗ってこいや。臭いから」


「生徒を汚物扱いするなんて酷い先生だ」


 と、ぶつくさ言いながら、職員室を出る俺。


「ふふ、うまくいったようだな。これでもくらえ」


 と、ドヤ顔で職員室に向けて中指を突き立ててから、いそいそと3階の空き教室へと向かった。


 俺は慣れているから大丈夫だけど、普通の生徒がこんな暗闇に包まれた教室なんか見たらきっと恐怖を感じるであろう。


 俺は今日友達が教えてくれた空き教室の前に来ている。


 噂って所詮噂に過ぎないから間に受けない方がいいと思いながらも、耳をそばだてる俺。


 すると

 

 グチュ、グチュぐちゅ


「は、こ、こら!はあん!ちょ、ちょっと!はあっ!」


「な、なに!?」


 空き教室の中から女の子の喘ぎ声が聞こえてきた。まさか、友達が言ってくれた噂話が本当だったとは……


「い、やっ!こ、この!程度ってものが……は、あ、あん!」


 すっごく気になるんですけど!しかもめっちゃエッチなピストン音までも聞こえてくるし。


 ちょっと怖い気持ちもあったが、俺は無意識のうちに足を動かしていた。

 

 このドアさえ開ければ、隠されてきた秘密が明らかになるんだ。


 俺はドアに手をそっと添える。


「ちょっと青山くん」


「え?」


 俺は手の動きを止め、俺の名前を苗字で呼んだ女の子に向き直る。


「水島さん!?」


 そこに立っているのは、びしょ濡れの姿のクラスメイト・水島あかりだった。濡れているおかげで下着もスケスケ。おお、感謝感謝。


 んなことはどうでもいい。なんで水島あかりがここにいんの?


「なんでここ……」


「青山くん、早く帰りなさい。ここは危険よ」


「いや、危険って……」


 そう言われて空き教室の方に視線を送った俺は、驚いてしまった。


 エッチエッチな音と声が全く聞こえない。


「早く帰りなさい」


 俺を必死に帰そうとする水島あかりのすらっとした足を見て、俺は鳥肌が立ってしまった。


「水島さん、その股間から流れている血は何!?しかもイカ臭い」


「ん!だ、だから言ったでしょ?早く帰りなさいって!いうこと聞かないと酷い目に遭うわよ」


「う、わ、わかった」

 

 俺は鬼気迫る表情の水島あかりに気圧され仕方なくハゲタカのいる職員室へ戻って作業を続けた。



追記


3日目で終わると思います。

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