第15話 作戦の前夜
「御大将、出陣の支度が整いました」
「えぇ、分かったわ」
そう言って私は、迎えに来た副隊長と共に自室を出て向かったのは葬儀をやった三ノ丸であった。
「これより、虎姫隊は二条城に向けて進軍をする」
「本気ですか、御大将?」
「えぇ、本気よ」
そう質問をして来た副隊長に言うと私は、部隊に向かって言った。
「皆も知っているとも思うが、我らは白鷺帝國との停戦協定を締結している。しかし、白鷺帝國は無断で我らの土地を侵略してきた。今度は、その仕返しに我らが侵略の恐ろしさを教えてやるのだ」
そう言ったのだ。もちろんだが、略奪なんかする気はないのだ。しかし、手紙の事と言い姫華の事も知られるわけには行かないのだ。
そう言って私率いる虎姫隊は、膳所城を出陣をした。
昨日の夜……
私が自室で寝る準備をしていると外から小石を襖に向かって投げられたのだ。
「誰よ、こんな夜中に」
そう思いながら私は、襖を開けた。その瞬間少女が私の所に飛び込んで、私を押し倒したのだ。
「あんた、結奈と言う少女知らない?」
「私が結奈だけど、どうしたの?てか、その、退いてくれない?恥ずかしいからさ」
そう私が言うと少女は、私の上から退いて襖を閉めた。私も、押し倒されて、乱れた着物の襟を直して少女と向き合った。
「で、誰なのよ?目的は?」
そう不機嫌に言うと少女は、一枚の手紙を私に差し出した。
「私は、二条殿配下の
そう言うと凪は、再び襖をあけて消えるように去って行った。凪が去った後私は、手紙に目を通した。
「……なるほどな。しろまる」
「どうしましたか、我主。我とても眠いのですが」
「なら、一瞬で目を覚ます方法あるけどどう?」
そう言って私は、枕元にある脇差に手をかけた。するとしろまるは、怯えながら私に質問をしてきた。
「じょ、冗談ですよ主。その質問いいですか?」
「なに、眠いなら起こしてあげるわよ?」
「そ、それは大丈夫です。ご、ご用件を聞きたく」
「あーそれね」
そうしろまるに返した。私は、少し考えた。手紙の内容をそのまま伝えれば萌花達に止められるのは間違いなのだ。なぜなら、凪が持って来た手紙は咲輝ではなく、白鷺帝國皇帝からであった。すなわち、私の妹からの手紙である。その内容は、私と一騎打ちを行なえと言う物であった。それ決着を付けようでは無いかと言うものであった。しかも、道中は絶対に攻撃を行なわないと言う信じれないものであった。しかし、手紙の字は姫華の字で書かれている事から密書であり、「停戦協定を締結しているから攻撃を仕掛けるな」と言う事で私に若宮城まで来させる気なのだろう。
その事を踏まえてしろまるに指示を出さなければならないのだ。
「今日の日が昇ると同時に副隊長を起こして、出陣の支度をさせて準備が終わり次第三の丸に集まるように伝えて、後鮫姫に例の部隊を
「御意、我主」
そう言ってしろまるは、虎姫隊が駐屯している場所に向かったのであった。
そうして時は戻り膳所を出発した私率いる虎姫隊は、関蝉丸下神社に駐屯しているとある部隊に合流すべく私は向かった。
「誰だ、虎臥結奈よ。鮫姫に伝えてくれる?」
「御意」
そう言って伝令は、奥の方に向かって行った。
「お待ちさせて申し訳ございません御大将」
「ごめんね、琴音。朝早くに呼び出して」
「本当ですよ、ましてや彦根隊の指揮を任せるなんて正気ですか?」
「すまんな、しかし瀬田城に居た部隊の補完隊として彦根隊を出撃する以外方法なかったんだから許せよな」
「分かってます。ただ私の率いている部隊の大半が壊滅しているのも知っていますよね?」
そう琴音が言って来た。確かに萌花から話では、坂本城攻略を萌花から一任されていたが、籠城に耐えかねた城兵との乱闘の際に部隊の大半を失いながらも敗走したんだよな。その後、萌花が宇佐山奪還を先帝に任せて坂本城の攻略を行なった。その後宇佐山城の攻略戦の時に先帝が死んだと言うのが萌花から提出された報告書の内容であった。しかも私が寝る前に出された報告書なので要約の部分しか見てないので詳細な状態は知らないのである。
「でもあなたの判断ミスによって先帝を失ったのは事実よね」
そう私は、言い換えした。すると琴音は黙ってしまった。私は、琴音の反応を見てあの報告書の内容が事実であると言う事を察してしまった。
「し、しかしあのミスでこのような部隊の指揮を執らさせるのはいかがなものかと」
そう苦し紛れに言い訳をして来た。まぁ、若狭若宮家の当主が出来損ないの部隊と言われている部隊と彼女は知っていたのだ。確かに、出来損ないではある。
「それは、戦闘行動においてだけであり彦根隊は元々戦闘隊では無いわよ」
「では、そんな部隊を私が指揮しないといけないのですか?」
そう琴音な言って来た。
「確かにあなたが今まで率いていた五百や六百と言う戦闘集団では無いわね。でも支援隊の指揮を執って見るのも一つじゃないの?かつて貴方の先祖が我が家を天下太平に導いたかのように」
そう言うと琴音は黙ってしまった。そう琴音の家は、王族で唯一軍事のトップを務める名家ではあった。確かにその事には、事実である。しかし、若宮王家がただの若宮家であった時の話で、若狭若宮の初代は軍の兵站を務めていた話がある。その事は琴音も知っている。ただ伝承にしかない話で、実際には琴音の先祖がやったと言う記録は無いのである。
「……わ、分かりました結奈陛下」
「うん、我慢させてごめんね」
「いえ、先帝を守れなかった私に責がありますので」
そう言う琴音の姿は、まるで誇りも名誉も全て失ったかつての私の姿を見ているようだった。
「ほら、萌花達が起きる前に作戦を実行するわよ琴音」
「御意」
そう言って私は、自分の部隊の所に戻ろうとするとその時であった。
「陛下、先陣を私にお任せくれませんか」
「え、別にいいわよ」
そう言って私は、琴音率いる彦根隊を先陣に総勢二千の部隊を率いて出陣をする事になった。
「では、陛下兵士達にお一言お願いいたします」
そう琴音が言った。まぁ、流れて的にそうだろうと思った。そして私は、社の前の石段に上った。
「これより我らは、京の咲輝を捕縛後に敵大将、白鷺姫華を討ち取りに目指す。停戦協定を無視する輩は全て切り捨てろいいな」
そう言った。実際に虎臥城も裏切りによって落城させられたのだ。別に問題は無いのである。ただやられた場合、倍にして返すだけである。例え妹であろうと容赦はしない。
その決意を持って私達は、軍事境界線である逢坂峠を越えて京都に侵攻を開始した。
その頃京都の二条屋敷
「咲輝様、湊帝國に動きました」
「そう、姉上はなんて」
「反撃をするなとの事です」
「そう、わかったわ。下がっていいわ」
「御意」
そう言って一人の伝令が部屋から去った。
「ついに始まるのか、若宮王家の伝説が……」
そう呟きながら咲輝は、静かにまだ明けない暗闇に沈む京の空を見上げていた。
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