第14話 決意と葬儀

 結奈は、私の頭を撫でながら私に向かってこんな事を言って来た。

 「ごめんね、あなたを苦しめさせて」

 そう結奈が言った。それは、私にとって聞きたくもなかった言葉だった。なぜ結奈が謝る必要があるのか分からないのである。そもそも私の精神がおかしいのが悪いのであって、結奈は何も悪くないのである。なのに結奈は、私に謝って来た。正直に言ってそこが分からないのである。

 「ねぇ、なんで結奈が謝るの?」

 「だって、あなたを怒らせてしまったもの」

 そう結奈の返事を聞いて、結奈に八つ当たりをした自分が恥ずかしくなった。そんな中私は、結奈に最初に質問をした事について答えられてない事に気が付いた。


 「ねぇ、結奈あの違和感について話してくれない?あの手紙と関係があるなら差別に関係あるのでしょう?」

 「やっぱり手紙の話をしたら「あの違和感」についても話をしないとダメだよね」

 「そりゃ、あの時に話をそらしたのは結奈じゃない?」

 「まぁ、そうだね。なら関係性について言うのであれば、認識と言う所において関係しているわ」

 そう結奈が答えたのだ。正直に言って意外答えである。てっきりこの社会に絶望した私が、転生したら楽になるのではないかと思いによって、リタイアしたんじゃないかと考えていた。そんな事を考えていると結奈が私にこんな事を言って来た。


 「前世のくそ教師が言った言葉覚えている?」

 「確か、「お前、自分の障碍の事を認めてないのだろう」と言うこと?」

 「その事よ」

 そう結奈が私に返事をして来た。確かに、この部分だけを切り抜けばそうだろう。しかし私は、あの時はどうしても自分が障碍者だと認めるわけには行かなかったのだ。なぜなら、認めてしまえば努力を諦めてしまうのでは無いかと同時に今までの自分の生き方を否定する事になるのでは無いかと思っていたのからだ。私が、前世の通っていた学校も自分を見下していた民を見返すために無理な努力をして掴み取った居場所なのだ。その見下している民の大半は、私を「障害者」として馬鹿にしてきた者ばかりだったのだ。その馬鹿にしている民に私は、「健常者」として認めさせるために無理な努力をしていたのだ。そんな考えをしているのだろうか、障碍を認めてしまうと努力を諦めてしまうのでは無いかと考えるのも無理の無い話である。


 そんな事を考えていると結奈は、少なくなってきたおつまみをつまみながらこんな事を私に言って来た。

 「私は、別に無理に認める必要は無いと思んだよね」

 「そうなの?」

 そう私は、結奈に聞いたのだ。なぜなら、前世の私は、周りと違うと言うだけでいじめを同級生や先輩・後輩、教師と様々な人からいじめを受けていた。そんないじめを長期に渡って受けていると周りと変わらないような「普通の人」になりたいと思うのも無理もない話である。そんな事を結奈に言っても仕方がないと思っていたころ結奈が私にこんな話をして来た。

 「今の私もあの頃の違和感の原因だけど、少しは分かるようになったんだよね」

 「そうなの?」

 「うん、簡単に言うと障碍による物じゃないかなと言う所かな?」

 「本気で言ってんの?」

 そう私は、結奈に不機嫌そうに言った。

 「こんな事冗談でも言えないわよ」

 「じゃ、何を根拠に言ってんのよ?」

 「何って、あなたが一番わかっているはずよ」

 そう結奈が私に言って来た。私は、首を傾げた。なぜなら、私はこの障碍とあの違和感と言っている心と身体の不一致が謎のタイミングで起きると言う原因については知る由もなかったのだ。確かに、あの面談前までこの違和感について調べていた。しかし、彼女の言う事に関しては一切そんな事を書かれていないのだ。そう必死に私が思い出そうとすると結奈が私に言って来た。

 「手紙にそれを書いていたじゃない」

 「手紙に?」

 そう言って改めて見ても正直に言って彼女の言っている事が出来なかった。だって手紙には、教師によって無理矢理証明させられた障碍を利用されそうになったので自殺をしたと言う内容にしか見えなかったのだ。

 そんな結奈にこんな事を言って来た。

 「あなたって、本当に人の感情読み取るのが苦手よね」

 「どういう事?」

 そう私が結奈に聞き返した。

 「変身、あの時の私は認めて欲しかったんだよ。努力をしている私を」

 そう言う結奈は、どこか寂しいそうに言った。私は、そんな結奈を見て、能力主義である前世の私の世界は私にとって生きづらい社会であったと言う事を伝えたいのでは無いかと思ってしまった。恐らく彼女、結奈はそんな能力と学歴がものを言う社会で生活をしているのかと思うと逃げ出した私は、「弱い人間」なのだろう。

 「私は、結奈と違って弱いなぁ。精神が弱かったのかな」

 「違うよ、あの選択は違うけどあの時はあの方法でしかあなたの感情を伝える方法が無かったんだよ。あなたはそこまで我慢してきたんだから」

 そんな結奈に私は、結奈に今まで抑えていた感情を吐き出すように弱音を吐いてしまった。

 「でも、自殺してしまったんだよ?私は悪い子なんだよ。しかも、現世でも皆を不幸にさせてばっかりで私なんか居ない方がいいんだよ。そしたら皆きっと幸せになるんだよ、そしたらこんな残酷な前世もこんな思いも辛らい現世も体験しないで済んだのにやっぱり私は、この世界にとって不必要な子なんだ」

 「そんな事ないよ、現在のあなたの事は知らないけど前世のあなたは、優しいし他人思いでいい人だったんだよ。まぁ、自分を大事にしてない所は今も治ってない感じだけどね。そんなけ、今辛いと思えるのであればきっといつか明るい未来が待っているからさ、もう少し自分を大事にしてみたらいいんじゃない。あなたが思っている以上に周りは、優秀なんだからもう少し周りを頼って見たら気持ちも楽になるもんよ」

 そう結奈が私を抱きしめが言って来た。私は、そんな優しい結奈に抱きしめられてなのか、必要としてくれた人がいると思うと安心と共に悲しくなって結奈の胸の中で泣いてしまった。そんな私の姿を見ても、結奈はただ私を優しく抱きしめながら優しく頭を撫でていた。


 そんな事をしていると外から声が聞こえて来た。

 「へ、陛下、結奈陛下、そろそろ起きてください」

 その声を聞こえて来たのだ。その声に結奈が私に声をかけて来た。

 「ほら、そろそろ起きないと行けないようですよ。結奈

陛下」

 「やだ、ここに居たい。私は、結奈と一緒にいたい」

 そう私は、ここが夢の世界であると分かっていながらも無理なお願いをした。

 そんな私を見て結奈は、こんな事を言って来た。

 「なら約束をしよう」

 「約束?」

 そう言って私は、涙を拭いて結奈と向き合った。

 「半年に一度、二十九日の時にこの部屋で会うと言う約束よ」

 「それまでは会えないの?」

 そう言うと結奈は、深いため息を吐いた。

 「ならあの選択を取りそうになったら呼び出しなさい、そしたら説教ついでに会ってあげるわ」

 そう結奈が言った。まぁ、説教は嫌だが結奈と全く会えないよりかはましだ。

 「うん、わかった」

 「ほら、分かったなら行きなさい。結奈」

 「でも、君の苗字聞いてないし、私も結奈だし呼びずらいから名付けていいかな?」

 「いいわよ、それ付けたらきちんと現実に戻ると言うならね」

 私は、しばらく考えていた。そんな中、私の幼馴染で口うるさい真中萌花がふと思い浮かんだ。正直に言って、結奈はどこか萌花に似ているから萌花の苗字から一字貰って付けようとと考えた。

 「なら、まゆはどうかな?」

 「まゆか、いい名前だね」

 「そうでしょう」

 私は、ほんの少しだが気持ちが楽になったような気がした。そんな事を思っていると結奈が私にこんな事を言って来た。

 「そんな事言ってないで、行かないと本当に怒られるよ?」

 そう言って結奈に言われて気が付いたのだが、外から声がさっきよりも怒っている声で私の名前を呼んでいたのだ。そんな声に焦った私は、夢から覚める決意をした。

 「じゃ、まゆまたね」

 「ん、行ってらっしゃい」

 そう言って私は、夢の世界を後にしたのだった。

 「さてと、私も起きてレポートとサークルの書類仕事してしまうか。「周りにもっと頼ってもいいんじゃないか」思いっきりブーメラン刺さってしまったな。そんな事言っても仕方ないか、私も早く起きて大学行く支度して行くか」

 そう言ってまゆは、結奈が去ってしばらくした後に夢の世界を去ったのだ。


 「結奈様、おはようございます」

 「うぅ、おはよー萌花」

 そう私は、布団から身体を起こした。

 「だいぶ、うなされていましたけど大丈夫なの?」

 そう萌花が心配そうに私に聞いて来た。

 「まぁ、あんまり大丈夫じゃないかな」

 そう言ったのだ。あの夢の出来事は、まだ萌花に隠してもいいだろうと思った。

 そんな事を思っていると萌花は、一枚の札を出した。しかも、その札は私は見覚えがあった。

 「結奈、もしかして私が何も知らないと思っているの?」

 そう言いながら萌花は、札を見せながら聞いて来た。

 「もしかして、萌花ってあの時の女神なの?」

 「正解、ていうかどんだけ気づくのが遅いのよ」

 「遅いと言ってもなんの違和感もなかったから、普通の幼馴染なのかなと」

 そう返すと萌花は、深い溜息を吐いた。

 「まぁ、今そんな事を言っても仕方ないし早く支度しなさい、葬儀の準備は出来ているわ」

 そう萌花は、私に言いながら一着の真っ黒の直衣を出して来た。それを見た私は、祖父母の死が現実であったんだと再度認識をした。

 「萌花、この葬儀が終わったら白鷺との停戦協定無視して侵攻しろ」

 「まぁ、詳しい事は葬儀の後に聞くわとりあえず、きっちり送りましょ」

 「あぁ、そうだな」

 そう言って私は、直衣に着替え終ると萌花と共に葬儀の会場である三ノ丸の広場に作った葬儀場に向かった。


 そこには、多くの家臣と兵士が参列していた。私は、喪主である為最前列に座るのであったが、隣の人の顔見て私は驚いた。

 「なんで、咲輝貴様がこんな所にいるの?」

 そうそれは、現在戦闘中の敵の重要人物である咲輝がいたのだ。

 「別にあなたを討ちに来たわけじゃないわよ、沙羅、いや樟蔭お婆様を弔いに来ただけよ、個人的にね」

 そう言って咲輝が答えた。そう答えと同時に朱音が、斎場にお坊さんを連れて入って来た。

 そのお坊さんは、二人の棺の前に座った。そのお坊さん、阿弥陀経を唱え始めた。

 「では、喪主で虎臥結奈皇帝陛下及び白鷺帝國皇帝白鷺姫華様代理人咲輝様からご焼香の方をお願いします」

 そう言って私と咲輝は、二人の棺に焼香をして手を合わせた。

 その後も参列した家臣と咲輝が率いて来た兵士達が焼香をした。そうして、お坊さんのお経が終りありがたいい話が終ったあとで私と咲輝の手によって棺に火をかけた。その後は、採骨してそれぞれの骨を持ち帰ったのだった。

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