第10話 発達障碍の王女

「はじめまして樟蔭お婆様」

 「久しぶりね、結奈。今は皇帝と言った方がよいかしら」

 そう名乗って私は交渉をする事にした。流石にお婆様を殺すと言う事をしたくない者である。ましてやお爺様を殺したのは、おそらく樟蔭の配下がやった者であるのはほぼ間違いなのである。だって樟蔭お婆様は、野戦の差配なら将王に勝が武力では将王には負けるのである。だから将王としてお爺様が恐れられているだけなのだ。

 「樟蔭殿、降伏する気はないかしら」

 「愚かな孫じゃの、降伏する気が無いからこのような戦争を仕掛けているのじゃ」

 「そうですか、分かりました」

 そう言って私は、腰から左文字をゆっくりと抜いた。

 「なら、一騎打ちを望みますお相手してくれますよね」

 「えぇ、いいでしょう結奈」

 そう言うと樟蔭も腰から刀を抜いた。

 「でもあなたには、あの真実を教えておく必要があるわね」

 「あの真実とは、今から死ぬのに命乞いですか?」

 「違うわ、若宮王国滅亡の本当の理由よ」

 「本当の理由ですか、死ぬ最後の言い分ですから聞きましょう」

 「滅亡の理由は、あなたが発達障碍の疑いがあるからよ結奈」

 そう言うと当然ながら両軍の間に動揺が広がった。障害者を差別世の中で、障害者を国のトップに据えるなんか国内の反乱に繋がるのは間違いのである。しかし、私に妹が出来る前までは半ば仕方ないと諦める家臣も少なからず居たが今の白鷺帝國皇帝が生まれるとそっちを押す派閥が次第に大きくなり国王の話を持っていくも王位継承は、私に変わりがないと言う事であった。それは、次世代である万翔や萌花や萌花の兄である渚たちが支えてくれると真中家当主や若狭若宮当主が推進していたのだ。しかし、過激派を抑える事が出来なくなった樟蔭は、姫華を総大将として反乱を決行した。

 その後に起きる白虎城の戦いも渚を総大将とした皇位継承権の復権を求めて動いたものの失敗している。その時渚は、死んでいるが処刑したのが樟蔭だったのだ。そして樟蔭は、渚に最後の遺言を聞いた時も私が王女になり障害者の生きやすい社会になるように祈っていると言って死んだのだ。

 「これが王国滅亡の真実じゃ」

 「そう、わかったわ」

 「まぁ、渚の場合は単純にお前の夢話が好きでお前の優しさにほれ込んで散ったと言うのもあったがな」

 「ありがとう、それじゃお婆様死んでください」

 そう言って私は、お婆様に向かって突進した。

 「馬鹿なのか、馬鹿正直な孫娘じゃ」

 そう言って避けた剣で私に刀を振り降ろして来たが私はあわてて小刀で防いだ。

 「やっぱり簡単に斬らせてくれないわよね」

 「当り前じゃない、なんで簡単に死なないといけないのよ?」

 そう言って私は、再度樟蔭に向かって突撃をしようとしたその時だった。

 「主様危ない」

 そう言ってしろまるが一気に飛び跳ねた。その瞬間だった大きな爆発がした。

 「何やつ?」

 「樟蔭殿ご無事ですか?」

 そう見ると別動隊が引き返してしたのだ。私は、誘導が失敗したのかと思ったがどう見ても誘導した兵と旗印が違ったのだ。

 「そう、そう言う事なのね、咲輝」

 そう言うと私は、お婆様に向かってしろまるを向けて言った。

 「お婆様、ささっと死んでもらいます」

 そう言って私は、左文字を持つ両手に力を込めた。

 「ふっ、あなたが死ぬばんよ将王の愚孫ぐそんよ」

 それと同時に私は、お婆様の首を狙って切ろうとした瞬間だった。私の頬に何かがかすったのだ。

 「しろまる‥‥‥」

 「えぇ、分かっております」

 そう周囲を警戒している最中再度銃の発砲音が鳴り響いたと同時にお婆様が馬から転落していた。

 「お婆様、しっかり……」

 「結奈、あなたが敵将を助けてどうするの?」

 そうお婆様に言われて目の前を見ると敵軍が鉄砲の発砲準備をしていた。

 「お婆様、ごめんなさい」

 そう言ってしろまるにお婆様を乗せて本陣に戻ろうとした瞬間だった。

 「はなてぇー」

 その言葉と同時に無数の鉛の弾が後方から飛んできたのだ。

 「主様ー」

 そう言って誰かが私とお婆様を吹き飛ばした。

 「大丈夫ですか、主様」

 「しろまるか、大丈夫よ」

 そう言ってしろまるに言うと上に乗っている鮫姫がしろまるから降りて私の所によって来た。

 「この人どうするの?」

 「瀬田城に搬送しておいて」

 そう言うと鮫姫は、頷くとお婆様を担いで瀬田城に向かって消えるように走って行った。

 「どうしますか、主様?」

 そうしろまるが私に聞くと私は、しろまるに低い声で指示を出した。

 「しろまる、敵陣を食いつぶすわよ」

 「では、一度本陣に戻りましょうか?」

 「お願い、しろまる」

 敵の鉄砲の発射と共にしろまるが言うとしろまるは、大きなジャンプをして本陣に戻った。

 「朱音、至急瀬田城に戻って救護をお願い」

 「ちょっと待ってよ、陛下」

 朱音が声をかけて来たが私は、すぐにしろまるに跨って敵陣の方に向かった。


 「主様、よいのですか朱音様の命を聞かなくて?」

 そうしろまるが聞いて来たが、私は霊力を込めた刀をしろまるの首に当てた。

 「黙って、敵軍に突っ込んで」

 「あ、はい」

 そうしろまるは、怯えながら敵軍に突っ込んでいった。

 「へっ、向こうから突っ込んでくるのか」

 そんなことを言いながら敵将が兵士に指示を出していた。まぁ、単騎で突っ込んでくるのから余裕なんだろうがその余裕は一瞬に敷いて消えて無くなる事になる。

 「総員構え……」

 そう敵将が合図を出す瞬間に私は、敵将の首をねた。まるで人殺しをなんとも思わないように首を撥ねたので当然ながら一瞬固まるが、すぐ近くにいる敵将から私を殺す命が飛ぶが私は、そんな命を出される前にすぐに敵の兵士を切り倒して言った。まるで人を襲う鮫のように手当たり次第に人を斬って行った。

 「で、でたぁー虎姫だー」

 「ひぃーお助けをー」

 そう弱言を言う兵士も関係なく殺して言った。私は、最後に敵将だと思う人の首に血の付いた刀を首に当ててこんな事を聞いた。

 「ねぇ、君たちどこの国の者?」

 そう聞くと敵将は、こちらの質問を嘲笑うかのように返して来た。

 「へ、教えてやるか障碍王女と平凡女帝よ」

 「そう、もううるさいからしゃべるな」

 そう言って私は、敵将の首を撥ねた。

 「主様、掃討完了しました」

 「そう、ありがとう」

 「戻ろうか、しろまる」

 そう言って戻ると既にお婆様は、無残にも胸に銃弾の雨に遭って死んでいた。

 「これはどう言う事なの?」

 「申し訳ございません、横からの狙撃で樟蔭様が自ら私を御守りに……」

 「そう分かったわ」

 そう言って私は、辺りを見渡したが既に逃亡したのか。そのような兵は見当たらないかった。

 「何か最後に言っていなかった?」

 「「孫娘を頼む、あと白鷺帝國を救ってくれ」と申しておりました」

 「そう、わかったわ」

 そう言って私は、お婆様の遺体を城に持ち帰るには行かない為近くの建部大社にて葬儀を執り行なう事にした。葬儀のために私は、損害が少ない大津城に向かう事にした。


 私達が付いたのは、夕方であったが大津城下には膳所の戦火が及んでいないのか城下町は明るかった。そんな中私は、大津城の本丸御殿の一室でお婆様の葬儀の支度をしている最中であった。

 「申し上げます、咲輝様が陛下にお目通りを願っております」

 「何の用なの?」

 「分かりませんが、至急お目通りを」

 「わかったわ、萌花と朱音と琴音も呼び出しなさい」

 「しかし、萌花様と琴音隊は今現在近江神宮付近を進軍中とのことです」

 「なら明日中には着くのね?」

 「そのようでございます」

 「なら朱音を呼び出しておいて」

 「了解しました」

 そう言って伝令が去ると私の中で胸騒ぎがしていた。

 何か、白鷺帝國では対応出来ない事態に陥っているのか……

 そんな推測を立てながら私は広間に向かった。

                                  つづく

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