第9話 膳所への強襲と裏手
私は、本陣で虎姫隊の侵攻進路を考えていると伝令がやって来た。
「申し上げます、朱音様をお連れいたしました」
「そう、通して」
そう言うと朱音と副隊長が本陣を構える屋敷の地面に膝を付けて頭を下げた。
「狐ノ宮朱音、陛下の命に従い虎姫隊率いて参戦致します」
「ご苦労、表をあげよ」
「はっ」
「そなたら下がってよいぞ」
「わかりました、では出陣の支度をさせていただきます」
「うん、お願い」
そう言って私の護衛兵を下がらせて私は、朱音に話かけた。
「朱音達こっちに上がって来てくれる?」
そう言って私は、朱音と副隊長を本陣の地図が置かれている所に挙げた。
「予想以上に進んでないのね」
「うん、膳所城を本陣と言うのは確定しているけど詳細な場所までは掴めてないわ」
「で、今の状況で前線をどこまで押し返しているの?」
「今は晴嵐と唐橋地域の奪還には成功したけど……」
そう朱音が聞いてきて私は、地図上の駒で示した。取替えした前線と言っても唐橋と晴嵐地域の奪還しか完了出来ていない事を告げた。
「ところで
「実は、瓦ヶ浜辺りまでは侵攻したのだけどお婆様の部隊に襲撃されて撤退しているの」
「そうなんだ」
「そこでなんだけどさ、今夜私率いる虎姫隊と瀬田隊で強襲作戦を決行しようと思うんだけど?」
そう言うと朱音はため息を吐いた。
「でしょうね、虎姫隊隊内で噂になっていたわよ」
「まぁ、話は早くて助かるわ」
「副隊長、現状報告をお願いするわ」
そう朱音が副隊長に話を振ると副大将は部隊の報告を行った。やはりと言うべきだろうか昨日草津辺りで敵の一個中隊と激突しておりそれを撃破した物の三人が負傷すると言う損害があると言う報告であった。
「分かったわ、何個大隊で出せれる?」
「二個大隊ぐらいでしたら即時投入可能です」
「そう、なら残りの二個大隊は瀬田城に駐留して置いて」
「了解しました」
そう指示を出すと朱音が不思議そうな顔で見て来た。
「あのう、私は何をすればいいの?」
「うーん、私の護衛ぐらいかな」
「なら、虎姫隊だけでいいのでは?」
「ならそれをあなたの姉である内府に言ってみなさい?」
そう言うとどこか納得したのかそれ以上追求をしてこなかった。
「じゃ各自準備をお願い」
そう言って私達は、作戦の準備に取り掛かた。
そして運命の夜私は瀬田城の城門に立って出撃の挨拶をした。夜と言っても月が沈みかけるので早朝と言うべきだろう。
「皆、これより我らは膳所と大津の奪還を行なう、厳しい戦いになるだろう」
そう言うと隊員の顔が少し暗くなった。それもそうだろう今から命を懸けた殺し合いがはじまるのだ。
「しかし侵略者にこの土地を取られてよいのか、我の
「そうだ、殺ってやるぞー」
「ぶっ潰すぞー」
いつもと言うか殺気に満ちた兵士の中異彩を放つ勢力が居た。それは虎姫隊の発足当初に察したオーラとは違い、まるで血に飢えた獣そのものであった。
「では、全軍出陣せよ」
そう言って私率いる虎姫本隊と別動隊の瀬田隊が瀬田城を出撃した。
私が瀬田城を出撃して唐橋を渡り栗津を通らずに、湖岸沿いを進行していると膳所城から火の手が上がっていた。
「始まったわね」
そう言うと先触れが私の所にやって来た。
「申し上げます、瀬田部隊膳所城の強襲に成功でございます」
「そう、分かったわ」
そう聞くと私は、全軍に告いだ。
「さぁ、あんた達本隊が新人に負けていられないわよね」
そう言うと指揮官たちが声色を変えて私にこんな事を言って来た。
「御大将、膳所城に突撃していいですか、てか殺らせてください」
「じゃ、虎姫隊の底力みせやりな」
そう言うと一斉に湖岸沿い進んでいる本隊とは違った別動隊が一斉に大津と膳所に向かって式神砲を少し改良した銃を放ってしまったのだ。
「御大将、大丈夫なんですか?」
「大丈夫じゃないわよ」
そう言いながらも奇襲作戦を成功させた以上下がる事は許されないのである。
「皆の衆膳所城に向かって突撃せよ」
そう指示を下すと兵士たちは、刀と槍を持ちながら膳所に向かって流れ込んだ。すると瀬田城より信じられない知らせが上がってきたのだ。
「敵大将、瀬田城に攻勢を仕掛ける模様です」
「本当なの?」
「はっ、先ほど瀬田城の櫓より敵の鷺の紋の軍勢二百がこちらに接敵中とのことです」
私は、少し悩んでいた。確かに今の瀬田城は簡単に落とせないように城詰はしているけどそれでも背後を突かれれるのは凄く痛いのである。
そんな事を悩んでいるのを見てか副隊長が、私に話かけて来た。
「御大将、敵大将を討ち取ってください」
「しかし、そなたらだけでは敵軍の撃滅は不可能だぞ?」
「別に御大将が敵の大将を討ち取って戻ってこれば大丈夫ですよ」
「分かった、部隊の指揮を任せる」
「了解しました」
そう言って私は、急いで瀬田城に向かった。
私は、しろまるに乗りながらある事を懸念していた。それは、野戦でお婆様と戦う事になると言う事である。お婆様は、野戦では将王である私のお爺様より上であるので敵対をしたくないレベルなのである。
「主様、瀬田城に旗がありません」
そうしろまるに言われてみるとそこには確かに旗が無かったのだ。
「まさか、出撃したのか」
そう思い私は急いで地図を見てお婆様の目撃地と距離を見て私はある所に目を付けた。
「まさか、砲撃隊の裏を突こうとしているのか」
そう思い急いで砲撃隊の陣地の所に向かうと既に瀬田の守備隊を率いる朱音・瀬田隊対樟蔭率いる部隊が対陣していた。
「朱音、今の状況はどうなっているの?」
そう陣幕をくぐると朱音が難しそうな顔しながら睨めっこしていた。
「どうされたのですか、膳所の攻略戦は?」
「副隊長に任せた、で現状はどうなっているの?」
「現状敵は、総兵力千五百に対して私達は、総兵力千六百です」
「そう分かったわ」
「なら、私が敵陣に向かうわ」
そう言うと朱音が私を引き留めた。
「お待ちください、敵は先帝を討ち取った樟蔭様です」
「それがどうしたの?」
「皇帝陛下自ら出るの必要は無いのではないでしょうか?」
「将王は、樟蔭との一騎打ちで負けたそれだけよ」
「そうですが」
そう言って私は、本陣を後にしようとすると朱音が呼び止めた。
「では、せめて私もお供させてください」
「分かったわ、付いてきなさい」
そう言って私は、しろまるを呼び出していつも通り跨ると朱音がこんな事を言って来た。
「大丈夫なんですか、一騎打ちでしろまるなんか使って?」
「大丈夫よ、どうせお婆様も知っているだろうしね」
そう言って私は、先陣の所に向かって歩みを進めた。
その頃敵の本陣では……
「申し上げます、敵総大将が先陣の前で構えております」
「そう、あの子が私と一騎打ちを望むのね」
「樟蔭様、敵はあの虎姫ですおやめください」
そう家臣が言うと樟蔭は、何もないかのような返答した。
「だからどうしたのですか、孫娘に負けるような私ではないのですから」
「しかし、万が一何かあれば私達が女帝に怒られるのです」
そう恐れる家臣に樟蔭は、ある手紙を家臣に渡した。
「なら、これを渡しなさい。そうすればあの子は何も言えないはず」
「しかし……」
「文句を言わない」
「御意」
そう言って家臣は去って行った。
あの事実を隠すために反乱を起こしてまで皇位を捨てさせたのにあの子には事実を突き付ける必要があるようだね
そう呟きながら樟蔭は、出陣の支度を済ませて行った。
つづく
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