第7話 侵攻の準備

 「御大将まもなく敦賀城に着きます」

 「そう、ありがとう」

 そう言いながら私は何か忘れているかのよう感じで敦賀城の城下に入った。

 「陛下お久しぶりです」

 「あらお久しぶり元気にやっているか?」

 「元気に過ごさせて頂いたおります」

 「して琴音の弟である風翔かざとよ、なぜ君がいるの?」

 「姉上の命で一昨日から敦賀で待機命令が出ていて、これ先触れの人が結奈様にって」

 そう言って私は、風翔から貰った書状を広げて読むと案の定と言うべきか朱音の姉で留守役の朱奈と萌花からの怒り爆発のふみであった。

 「どうされたのですか、御大将?」

 「内府と萌花がめっさ怒っている文が届いて二日間そこに駐留させっておけだってさ」

 「どうするのですか?強行突破するのですか?」

 「いや、無理そうだよ」

 そう言うと私を囲むように風翔の配下の人達が出て来た。

 「では、こちらにお越しください」

 「わかったわ」

  そう言って私率いる虎姫隊は、かつて私が萌花と共に宿泊した敦賀城の一角に陣を構築して琴音率いる本隊の到着を待った。


 私達が到着して三日たったある日の昼に伝令が私の部屋にやって来た。

 「御大将、彦根に向かわせていたさめさめ様及び本隊並びに別働隊ご到着でございます」

 「そうわかったわ、琴音と萌花と朱音を本陣に呼んでおいて」

 「御意」

 そう言って私が、本陣に行こうとすると再度伝令がやって来た。

 「御大将、先ほど偵察隊が戻って来て大津城並びに膳所城陥落とのことです」

 「そ、それは本当なの?」

 「は、誠でございます」

 「そ、そうわかったわ、なら宇佐山城も陥落したとみた方がいいかもね」

 「それは気にされず、先帝率いる別働隊の救援に成功したとのことです」

 「そう、わかったわ、下がっていいわ」

 そう言うと伝令は、どこかに消えるように去っていた。私は、お爺様が率いたのは別働隊で主力は既に宇佐山城に向かっていたのではないかと考えていた。そう考えるとお爺様のあの時の兵数に納得がいくのである。なんせあの時私の部隊より少し多い五百と家臣二人しか連れていなかったのだ。

 「もしかしてお爺、今回の事知っていたのかも」

 そんなことをこぼしながら私は本陣の所に向かった。

 

 私が本陣に着くと風翔と琴音と萌花と朱音の四人が座っていた。

 「そうなたら、下がってよいぞ」

 「御意」

 そう言って人払いをすると萌花が口を開いた。

 「結奈、勝手に出陣をしないでよ?」

 「ごめん、その事については後で聞くからまずさっき来た報告のこと話していいかな」

 そう言うと萌花は、首を縦に振った。

 「大津と膳所が陥落した」

 そう言うと萌花たちは黙り込んでしまった。それもそうだろうなぜなら我々が到着するまで敵は総攻撃を仕掛けないと踏んでいたのだから、仮に総攻撃をするなら宇佐山城を囲んでいる本隊が行うのだろうと考えていた。しかし、実際は膳所・大津の両城を囲むのが本隊であったのだ。そうなれば瀬田城なんかあっという間に陥落と言うのは誰の目にも明らかである。

 「あのさ、それじゃ瀬田城は既に陥落とみた方がいいかもね」

 そう萌花が言うと私は、首を横に振った。

 「今瀬田城には、彦根城と近江八幡城の両城から六千の兵で籠城してもらっている」

 「でも結奈それを合わせても敵の二万には敵わないよ?」

 そう敵は少なく見積もっても二万はいるのは確定である。しかし、それは大津・膳所戦の前の話で今は半分ぐらいとなっているのであるがそれでも半分であり到底持ちこたえる余力なんか無いのである。

 「そこで提案なんだけど、朱音あなたに虎姫隊の指揮を任せるわ」

 そう言うと四人ともきょとんとした。

 「ちょっと待ってください、虎姫隊って結奈様の部隊ですよね」

 「そうだよ?どうしたの」

 「どうしたのじゃないわよ、馬鹿」

 そう言うと萌花が呆れている朱音の代わりに話をしてくれた。

 「自分の護衛兵をどうするのよ?」

 「それなら瀬田城に詰めているわよ?」

 そう言うと朱音は、何かを察したようであった。

 「まさか、瀬田の兵使うつもりですか?」

 「そうだよ?」

 そう言うと全員が呆れると言うよりも疲れ切っていた。

 「もし朱音が執らないと言うなら副隊長に任せるけど?」

 「それの方が嬉しいです」

 「わかったわ」

 「それならこれから最後の確認をするわね」

 そう言って最後の評定を行なった。それで私単騎で瀬田城に迎い前線の支援と共に膳所・大津の奪還の準備を行ない虎姫隊本隊が到着と同時に膳所に向けて侵攻を開始すると言うもので、それを行なうと同時に萌花率いる部隊は、宇佐山の防衛と比叡山からの侵攻阻止と言う役割を説明した。

 評定終了後私は虎姫隊を集めた。

 「皆が知っていると思うが、膳所・大津が陥落した、これより私が前線である瀬田城に向かう」

 そう言と隊員たちは沈黙していた。その中で私は言葉を続けた。

 「よって副隊長に虎姫隊の指揮を任せる、皆の到着を瀬田城にて待つと同時にもし敵が居れば容赦なくれ」

 そう言うと副隊長が私にこんな事を言って来た。

 「御大将、皆分かっていますよ」

 「そうか、なら私は発つ四日以内で瀬田に来るようにな」

 「御意」

 そう隊員達が返事をすると同時に私は、しろまるを召喚して敦賀城を出たのであった。

 

 私は、夜中に虎姫隊の隊員が見送る中瀬田城に向けて出陣をした。瀬田城に着いたのは、夜が明けると同時ぐらいであった為城門を叩いた。

 すると兵士は、城門の櫓から声をかけて来た。

 「誰であるか、名を名乗れ」

 「私は、虎姫隊副隊長の虎臥結菜である開城されよ」

 そう言うと城門の櫓から一人の老人が顔出して私を確認した。その確認が終わると城門が開いた。私は、何だったのかと疑問を抱きながら守備長である城代に顔を合わせに向かった。

 「御城代様、御入場である」

 そう言うと私は、顔を下げた。皇帝である事は隠してやって来ているので顔を下げているのである。すると城代の声だろうか偉そうな口調で、私にこんな事を言って来た。

 「表をあげよ、障碍者部隊の副隊長様」

 その言葉に怒りそうになったが今は抑えるべきと思い何もないような顔で顔を上げた。なんせ虎姫隊の隊長である私の甲冑だと敵の総攻撃の時を早めるだけと思い副隊長から借りてきた甲冑と母の名前を使って侵入した。

 「で、これ以上障碍者は要らんのだがそなたには何が出来るのだ?」

 そう偉そうにふんぞり返る城代に私は、敦賀城のあの時のように答える事にした。

 「では、その障碍者部隊六千を私にくれませんでしょうか?」

 そう言うと城代は、相当扱いが面倒くさかったのだろうかこんな無茶を言って来た。

 「そう言うな、障碍者部隊七千をそちに譲ってやるしついでに瀬田城もそなたにくれてやるから」

 そう言うと城代は、裏手から一目散に城を抜け出した。

 「何なんですか、あの豚だるま」

 「まぁ、落ち着いてどうせ彼は打ち殺されるから」

 そう言うと伝令がやって来た。

 「副隊長様、先ほど城代様が敵方に討ち取られてようで対岸に晒されているのですが降伏されますか?」

 「しないわよ、人を見下すなんか私の国には要らないわ」

 そう言うと伝令は、こんな事を聞いて来た。

 「失礼ですが、あなた様は何者なんですか?」

 「私は虎姫隊隊長虎臥結奈で、この城の指揮を執りに来たの」

 そう言うと伝令は、固まってしまった。そんな伝令に私は、さっきから聞こえる敵の降伏勧告が気になっていた。

 「あのさ、あの降伏勧告なんとか出来ないの?」

 そう言うと伝令は、首を横降った。まぁそうか、この城に来て思ったんだけど貧弱すぎて話にならないのだけど予備も含めて虎姫隊本隊において来たからどうにも出来ないのである。

 「ねぇ、あそこに居るのが先陣隊でしょ?」

 「そうですが、どうされるのですか?」

 「ちょっと外に連れて行ってくれない?」

 「あ、はい」

 そう言って伝令と共に外に出るとそこには、恐らく二千ぐらいの大軍が対岸を埋めていた。

 「んじゃ、あの邪魔な集団消すか」

 「ねぇ、なんかこの塀を見下ろすような台ないの?」

 「そう聞くと伝令は、ありますがこのようなものしかございませんけど」

 そう指差したのは、大量の空き木箱だった。

 「ねぇ、それをくみ上げてくれないかな?」

 「あ、はい」

 そうやって階段状に組み上げた発射台に銃を構えた。

 「あのさ、そこにある旗ある分だけでいいから配っておいてくれない?」

 「あ、分かりました」

 そう言うと伝令は、旗が入った荷車を曳いて城内に去っていった。

 「ようやく準備が整いましたね、主様」

 「そうね、しろまるとさめさめ」

 「じゃ、始めようか私達の戦闘を」

 そう言って発射台の上に立った私は、対岸に居る敵軍に向けてこんな事を投げかけた。

 「今すぐに降伏しなさい、そうすれば命だけは助けてあげよ」

 まぁ、そんな事で降伏する奴がそもそも侵攻なんかするはずないのだけどやって見たかったと言うだけでやったのだ。すると敵軍は、瞬間湯沸かし器のように一斉に渡河を開始した。

 「まぁ、そうなるわよね」

 「しろまるとさめさめ、戦争の時間よ」

 そう言って私は、しろまるにまたがると瀬田城を出て唐橋の入り口に向かった。

                                  つづく

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る