第6話 祖母の侵攻と病気

「ねぇ、萌花少しいいかしら?」

 「どうされたのですか、結奈陛下」

 「別に今は敬称呼びしなくてもいいわよ」

 そう言うと萌花は、いつもの感じで私の言いたい事を切り出して来た。

 「どうせ、例の噂についてきにしているのでしょう?まぁ、内府から言われたのならなおさら無視は出来ないわね」

 「なんで分かるのよ?」

 「そりゃ、幼い頃から一緒にいるからある程度の事は分かるわよ」

 そう萌花は、何当たり前かのように返して来た。確かに萌花とは、もう十年近くの付き合いになるのだから当たり前なのかもしれない。そう考えていると萌花は、続けて例の噂について切り出して来た。

 「確かに例の噂の事は、当てはまる箇所は多いし実際に朱奈も気にはかけているわ」

 「そ、そうなのね」

 そう萌花に少し残念な気持ちで返してしまった。例の噂とは、私が発達障碍では無いかと言う噂である。この時代は、まだ発達障碍を始めとした精神疾患の理解は余り世間には認知されていないのである。その為障碍を持っている人は、差別を受けて生活を受けているのである。私も前世で少し調べたことがあるが、昔の日本でも優生保護法ゆうせいほごほうとかで子供を産めなくされたとかで社会問題になったとかあったなと今になって思い出した。

 「障碍者ねぇ……」

 「結奈、まさか障害者を助けようとか言わないわよね?」

 「そうだけど何か?」

 「結奈自分がなにを言っているのか分かってんの?」

 「分かっているわよ、どうせ障碍者から何も分かってないとか言われるとかでしょ?」

 「分かっているなら、なんでそんな事言うのよ?」

 「萌花も少しは分かっているんじゃないの?私が発達障碍の可能性があると言う事……」

 そう言うと萌花は、黙り込んでしまった。その反応を見て私は、心の中萌花に失望してしまったのだ。

 「すみません、結奈陛下」

 「別にあなたが気にする事じゃないわよ萌花、明日朱奈を呼び出しなさい」

 「わかりました、結奈陛下」

 「私は自室に戻るわ、決済書類は終わらせたから各部署によろしくね」

 「お疲れ様です」

 そう言って執務室のある宮殿から自室のある御殿に萌花を宮殿において戻った。


 「はぁ、少し言い過ぎたかな」

 「まぁ、あれは言い過ぎじゃないですか主様ぬしさま

 そうベットにある枕を抱え見ながら呟くとどこに潜んでいたのか、さめさめがやって来た。

 「い、いつから聞いていたのよ」

 「最初から聞いていましたよ?」

 「どうやって聞いてたのよ?」

 「えっと主様の腰にある箱あるじゃないですか、その中でしろまると他の人と一緒に」

 そうさめさめが言うと私は恥ずかしさの余りに茹でたタコのように真っ赤に頬を赤らめた。

 「さめさめ、しろまるの他に誰がいるのよ?」

 そう恥ずかしさを隠しながらさめさめに聞いた。

 「桂皮シナモンですよ」

 「嘘だよね、あの子起きてたの?」

 「起きているわよ、虎姫」

 そう言うと札を入れている木の箱から少女が現れたのだ。

 「ようやく霊力溜まったんだね、桂皮」

 「本当よ、やっぱり先代に比べれて非力なんだね」

 「うるさいわよ、回復特化の霊神がよく言うわ」

 「あん、なんか言った戦闘狂」

 「あのさ、さめさめ少し落ち着きなよ」

 「す、すみません」

 そう大人しくさせて、私は桂皮にある事を確認する必要があったのだ。

 「ねぇ、桂皮って若宮王家の守護神だよね」

 「そうだけど、もしかしてあなた様が結菜王女殿下の娘様なんですか?」

 そう桂皮が私に質問をすると私は、首を小さく縦に振った。

 「申し訳ございません王女殿下、今までの御無礼のほどお許しいただきませんでしょうか」

 そう桂皮が片膝をつきながら頭を下げたのだ。

 「どうしたの桂皮?急に態度変えて」

 「当たり前でしょ、王家の娘様なんだから」

 そう言うとさめさめは、首を傾げていた。

 まぁさめさめからすれば私が王族と言うのは、信じられないと言うのはあるだろう。ただ元王族であっても召喚獣を含めて三匹を扱うのは、私以外では若宮王家初代国王である若宮凛花わかみやりんか女王以外居ないので異例と言って問題無いのである。そして桂皮は、若宮凛花の三人の召喚獣の一角であり王位継承権を有する者が必ず持たされる召喚獣である。

 「あのさ、つばくら花椒かしょうがどこにいるか分かったりしない?」

 「白鷺家の二人がそれぞれ名前を付けて守護獣として扱っております」

 「そうなのね、少し厄介になったかも知れないわね」

 「主様、どうして厄介なの?」

 そう言いながらしろまるが出て来たのだ。しかもさめさめや桂皮と同じ人の姿である。

 「しろまる貴様なんで、出てくるのよ」

 「別にいいじゃない、厄介者なんか蹴散らせばいいんだから」

 「そう簡単に倒せないの、あの二人は特にね」

 そう普通の召喚獣ならともかくあの二人は王家をあらゆる厄災から守って来たと言う実績のある召喚獣であり、その分戦力としては他の召喚獣とは比にならないレベルで強いのである。

 そんな中私の自室に向かって誰かが走って来る音が聞こえて来た。

 「皆、戻って置いて」

 そう言って三人を元の札のに納めると同時だった。

 「夜中に申し訳ございません陛下、至急広間にお越しください」

 「何事ですの、このような夜中に」

 「近江に白鷺軍が侵攻した知らせが先ほど王城に届き萌花様を始めその他の主要陣は、既に広間にお集まりになっております」

 「そ、そう分かったわ支度が済み次第向かうよう伝えなさい」

 「御意」

 そう言うと伝令は、走って去って行った。

 「なんか嫌な予感がするのだけど気のせいで済めばいいのだけど……」

 そう思いながら私は御殿から広間のある宮殿に向かった。


 私は虎姫隊の兵士と共に広間に向かう最中背後から聞きなれた声で呼び止められた。

 「おや結奈じゃないか、どうしたのだねこんな夜中に」

 「お爺様どうしたんですか」

 「お前は、樟蔭と戦う気なのか?」

 「それがこの国を背負う者としての務めである以上領土領民を守るのが責務ですから」

 「そうか、まるでそなたの父のような国主であるが今は老いぼれの身じゃ広間についていくだけでも良いか?」

 その頼みは将王と言われた時代と比べてどこにでもいる老人のような感じであった。しかし、この時の私は知らなかったのだ将王として周辺諸国から恐れられている事についてこの後知ることになるなんて……


 私が広間に到着すると私が想定しているよりも最悪の状況になっているようだった。

 「すまない到着が遅れて現状はどうなっているのだ内府」

 「ご覧の通りでございます、大津おおつ城が陥落寸前であり膳所ぜぜ城並びに宇佐山うさやま城も包囲されており残る大津前線基地は瀬田城せたじょうのみとなっています」

 「樟蔭殿はどこに配置している場所わ」

 「樟蔭率いる部隊は、現在宇佐山を包囲中であり大津並びに膳所は山科衆並びに伏見衆が包囲している模様です」

 そう言うと私は、お爺にこんな命令をした。

 「お爺様、坂本を包囲してくれませんか?」

 「待ってよ、坂本と言えば比叡山の膝元よ万が一にも寺に戦火が渡ってしまったら比叡山は黙ってないわよ?」

 「別に気にしないでいわよ、反乱が起きたら鎮圧すればいいだけなんだから」

 そう言うと議場は沈黙と言うよりも膠着してしまった。

 「内府さっきの会話を聞く限りこれ以外の問題は無いと思うのだけど他に問題はあるの?」

 「いえ、後はどこにどの部隊を付けるかだけです」

 そう怯えながら答えた。

 「じゃ、坂本及び宇佐山城攻略部隊は総大将真中萌花として湊保津及び若宮琴音と各配下衆、本隊は私と朱音とその配下のみで留守居役は、内府でお願いします。異議のある人はいる?」

 そう言うと広間の人間は首を縦に振った。

 「各隊準備出来次第出陣をせよ」

 そう言って私は、広間を去った。

 

 広間から宮殿に向かっている最中に遠くから声がした。

 「待ってください、陛下先帝がお話したいことがあるそうで」

 そう言って追いかけて来たのは、朱音だった。

 「流石じゃの結奈、良い差配であるがそなたの部隊は足りぬのかそれだけで?」

 「ご心配なさらず共、恐らく咲輝が京都から出て来るのでそうなれば戦場は自動的に京都に移ると思いますよ」

 「そ、そうかあんまり無理はするなよ」

 「お爺様も持病悪化させないように」

 「ふっ、孫に心配されるとは老けたかの」

 「じゃ、琴音後頼みます」

 そう言って私は、宮殿に向かった。


 宮殿に戻ると既に出陣の支度の為か、宮殿内に私の直轄の部隊である虎姫隊員たちが慌ただしくさまよっていた。

 「おかえりなさいませ、御大将」

 「ただいま支度の方はどうなっている?」

 「は、あと二十分ほど用意に時間を頂きたいのですが余裕はありますか?」

 「補給って後何があるの?」

 「あと食料の方が二日分の積載が残っております」

 「そ、なら朱音に持って来させて我々は、先に瀬田城に向かいます」

 「よ、よろしいのですか?」

 「別に構いません、既に猫姫隊の方に補給の要請はしてあるので」

 「なるほど、その時に彦根城に要請して置いたのですね」

 「そう言う事、多分彦根城にも出陣の要請が出ているから前線には居ると思うわよ」

 そう言って話している間に私は、鎧を着換え終えた。

 「御大将、補給物資積載完了しました」

 「ありがとう、朱音隊はいつ出陣するって?」

 「先ほど確認したんですけど、明日の朝に出陣するとの言っています」

 「あっそう、お爺様はもう出るのでしょう?」

 そう言うと兵士は、首を縦に振った。

 「なら、私達も出ても問題は無いわね?」

 「御大将が言うなら出陣しましょうか」

 そうやって御殿から大手門まで五百と前回よりも少し増えた人間を率いて向かった。

 

 「やっぱり来たか、我娘よ」

 「やっぱりお爺様早すぎだよ」

 そう大手門前で呆れているとお爺様が皆に向かってこんな事を言った。

 「皆これより我国の新帝しんていである結奈の覇道の初陣である、分かっているが各隊の役割は違うしかしこの国に侵攻して来たやつは帰ってもらわなければならない。そんな大切な出陣じゃからこそ新帝から出陣の前の挨拶を頂きたい」

 そう言ってお爺様が私に話を振った。流石お爺様だ、士気と統率が上手いなこんな朝早くから叩き起こされて士気が低かったのにまるでやる気に満ち溢れた新人兵みたいにやる気の眼差しでこっちを見ている。これが将王の器なのかと思うほどの統率と指揮の仕方である。

 「これより我領土に無断で入る無法者どもに鉄槌を下しに湖国こうこくに向かって出陣をする。必ず無法者どもにここの主が誰かを教えてあげなさい、全軍出陣せよ」

 それと同時に大手門が開門がされた。まるで私の挨拶を待っているかのようにだった。

 「結奈よ、武運を祈る」

 「お爺様こそ」

 そう言って私達は、大手門から出陣をして互いの攻略地に軍を進めた。まるで忍びの如く無灯火での行軍であり城内では私達の突然の出陣に城内が混乱したのは言う間でも無い事であった。

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